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第五話

 あの日。


 俺こと、高橋亮介たかはしりょうすけの人生は九〇度変わったのだ。


 理由なんて、おかしくて摩訶不思議。これを俺の友達に言ってしまえば、息を吐くように笑われるような変なものだし、俺自身信じないのだろう。


 でも、高校二年生の夏休みは——

 退屈な日々を重ねる俺にとって、楽しくて、悲しくて、嬉しくて……色濃く映った綺麗な毎日だった。


 そう、俺は————野生の巨乳ロリに出会ったのだ。


―――――――――――――――――――――――——————————————



「あ、あの……」


「——ん、どうかしたぁ?」


 いやはや、心苦しいものだ。

 札幌の国立大学と言えばすぐ出てくるかもしれないが一応、言わないようにしようと思う。


 そして、その大きな講義室、数百人の大学生がいるこの場所で。どうして高校二年生の俺がこんなにも声を震わしているのか——その理由は一時間前まで遡れば説明できるだろうか……。

 


 ☆☆


「今日はどこか行くんですか?」


 夏休みが始まって七日目。

 そろそろ真音さんが居る生活に慣れてきた頃だった。初めて、彼女が外に出る準備を始めていた。普段はあまり見ない露出度が高い服を着ていて——といっても、まだ出会って七日目だが……まあいいだろう。


 とにかく普段はあまり見ないような肩に穴の開いた変な服を着て、かなりチャラめなダメージジーンズを履いていた。


「……ん?」


「いや、だっていつも見ないような服着てるなーって」


 というか、一体いつ服なんて持ってきたんだ?

 買ったのかな……ただ、どちらでも俺には関係ないか。


「あぁ、今日からね大学行かないといけないんだよね……」


「え、そうなんですか? てっきり、真音さんも夏休みなのかなって思ってましたが」


「あーべつに、そうじゃないんだよ? あれだよあれ、なんかその……私さ、まだ大学二年生だから集中講義って言うのがあるんだよね」


「集中講義……?」


 初めて聞く言葉に俺は首を傾げた。


「えっと、なんて言えばいいかな? ……んと、夏期講習的な感じ?」


「夏期講習……あの忌々しいやつですか」


「な、なんでそんな顔……そこまでかなっ」


「え、いやまぁ……休みなのに学校とか拷問なので」


「あははは……すっごい殺気だね。でもあれだよ? 一応、それやれば単位もらえるからこっちからしたら結構嬉しいんだよ?」


「学校行って嬉しいんですか……ビックリです」


「いやぁ……そこまで嫌いな方がびっくりだよ。部活もよく行ってるようだけど……もしかしていきたくない?」


「部活は行きたいですよ? でも授業は、ねぇ……」


「そ、そうか……」


 あまり理解できないような表情で苦笑いをする真音さんだが、きっと勉強が好きな人種なのだろう。俺とは分かり合えないような人間だ。大体、国立大学に行ける時点でそりゃそうというか——自明の理か……。


「それで、あれかな、行きたいなら来る?」


「え?」


「ほら、来年受験でしょ? キャンパス……というか授業見に行くのもありじゃない? オーキャンもありだけど、こっちの方が分かりやすいだろうしさっ」


「俺、高校生ですよ?」


「だいじょぶだいじょぶっ! 私服だし、バレないよ!」


「え、でも——」


「つべこべ言わないで行ってみよう! ね、ほら、着替えてぇ~~!」


「うわっ、ちょ——やめっ⁉」



 ☆☆


 ——と言ったところだ。

 俺の気持ちなんて考えないで連れてくるんだから、親に首根っこ噛まれて連れていかれる猫の気持ちだったぞ。


 それにしても——


「何言ってるか、分からないんですが……」


「そりゃそうだっ! これ、ドイツ語だし?」


「なんで……せめて、僕理系なのでそっちの授業にしてくださいよ!」


「私、文系だもんっ」


「そんな……これじゃあまったく、退屈ですよ……」


 二人で言い合っていると、周りから視線を感じる。


「あ」「え」


 どうやら、教授さんが手を止めてこちらににらみを利かせていた。外国人の方のようだったが、さすが、イケメンで眼力も強い。高校生の俺からしたら怖いったらありゃしない。


「……Guten Morgen?」


 一瞬、頭が硬直する。

 しかし、直後にハッとして俺は答えた。


「……h,Hallo?」


 俺が言って息を飲むと、真音さんが笑い出した。


「な、なんで——」


 どうやら、その笑いは教授へいき、次には講義を受けている100人以上の生徒へ移り……俺のたった一言で講義室は笑いの渦に飲まれていった。




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