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第一話

 夏休みの初日。

 部活から帰る途中、高橋亮介たかはしりょうすけは野性の巨乳ロリと出会った。


 名は椎奈真音しいなまおんと言うらしい。童顔で小動物の様な身体、肩までかかった茶髪とパチリと開いた灼眼しゃくがんにアヒル口がよく似合っていて、極め付けに、目を疑うような大きな胸がチラリズムを醸し出す。


 目と目が合った瞬間。

 二人だけの日常甘々ラブコメディが始まった。




「ん、ぁ……ぁ」


 ふと目が覚める。

 瞼を開き、その間から入り込む陽に俺の瞳はズキズキと痛む。


 雀の鳴く声や道路を走る車の音が薄っすらと耳に入るが、いつも通りの音たちに不安も霧散して、安心感が覆った。


「だ、大丈夫ですか……?」


「だ、大丈夫だ……」


「朝ごはん、作っておいたんだけど……もう食べる?」


「朝ごはん……か」


 そうか、もうそんな時間か。

 俺は頷いて、ゆっくりと体を起こした。


 ————ん。


 ただ、ここでふと疑問が浮かぶ。


 ☆質問1

 俺は何人暮らし?


 ☆答え

 俺は一人暮らしをしている。


 ☆質問2

 同居人はいる?


 ☆答え

 もちろん、いない。



 では、一体彼女は誰なんだ?

 当然のように、俺に声を掛けた彼女は?


 そうやって出てきた答えに、冷や汗が頭上を垂れた。ブルんと身の毛もよだつ感覚に襲われ、俺は瞬時に立ち上がる。


「だ、だれ——だっ‼‼」


 バサリと舞った布団を投げて、ベットの上にて立ち上がる。片足を後ろに下げて、両腕を前に構えて戦闘態勢に入る。恐怖に足もひるみそうになり、逃走本能が働く。寝込みを襲われてはその恐怖感も増すのだ。


 声からして女性なのは確かだったが、人の部屋に無断で入り込んでくる時点で容赦ようしゃは要らない。刑事事件としても訴えることもできるだろう。


 ——ふぅ、と息を吐いて俺は目を見開いた。


 すると、前方二メートル。エプロンを掛けたロリっ子がいる。


 そう、あの時見た、野性の巨乳ロリがいた。


 加えて、エプロンの端から胸がはみ出し、花柄の下着が「こんにちは!」していた。ロリのくせに大きな胸で視線が焦点むねに収束していく。


 ロリに興奮しない法則?


 そんなもの、この二次元のロリ王たる作者が許さんが、幼女には興奮しない俺とて大きなおっぱいだけには弱い。なんせ思春期だし。


「だ、だれ——だれですか⁉」


 生唾を飲んで、彼女を見つめる。

 すると、あっけらかんとした表情でこちらを眺める姿に少しだけ心がドキッとした。


「え?」


「え、じゃないですよ、なんで家にいるんですか!?」


「え……?」


 しかし、彼女はのほほんとした顔で俺を見る。


「だから、なんでここに……」


 かれこれ、戦闘状態になって数十秒。腰が痛いし、すでにプルプルと震えている。高校二年生の腰にはダメージが大きすぎる。それに、裸エプロンならぬ下着エプロンに目が死んでいく。ああ、駄目だ。乳がでかい。デカすぎる。


 おっぱいが大きすぎる。

 だめだ、目が。眼が。瞳が。


「昨日のお礼……というか……なんというか」


「……お、お礼!? ま、まぁ、ありがたいですが……いやでもっ、それで部屋に入り込んで服も脱いで——じゃなくて、駄目ですよ‼」


「だ、ダメって言ったって……」


「言ったって?」


「昨日、入れてくれたのは————そっちだったんだけど……」


「い、入れた?」


 そこでふと遡る。


 昨日、彼女を見た後。確かに、俺は「鍵が見つかるまで」という約束で家に招き入れた。そこまでは本当だし、俺も面倒で色々とシカトしていた。じゃあ、その後は——と頭の中で計算式が駆け巡った。


 昨日は、昨日は、昨日は————というとつまり? 


 まさか、まさかのまさか?


 そう言うことなのか⁉


 そして、俺は気づいた。


「————泊ったのか?」


「え」


 俺は口を開く。

 俺はその真相を分かりながら、思い出しながらも信じられなくていた。


「————うん」


 そこからはもう、謎の罪悪感に襲われて、朝食の味を楽しむことさえできなかった。




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