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真の変態とトップオブトップとヤバイ奴

「ふっふっふっふっ、……ふっふっふっ……」


 とうとうレイ──変態改め純情乙女は壊れてしまった。

 

「いいっすよ……いいっすよ……!なーにがファッション変態ですか!なら、こっちはモノホンの変態になっちまいますよ!!もう誰にもファッション変態なんか言わせねぇっす!!」


 そう言って、裸族になろうとする純情改め真の変態を志す彼女の頭をハリセンで叩く。

 本当、プロの奴隷になろうとしたり、真の変態になろうとしたりで忙しい奴だな。

 

「ルル、貴女、意外と打たれ弱いのね


 酒に酔った勢いで赤ちゃんになった筈のバカ令嬢──リリィは、自分が醜態を晒した事実を忘れ、のほほんとした表情で、悶える変態を眺める。


「秘密の一つ二つ知られた所でどうしたって言うんですか。死ぬ事以外は擦り傷ですよ」


 犬と餌の奪い合いをするくらいには恥も外聞もない腹ペコ僧侶──ルルは呆れたように溜息を吐き出す。


「というか、真の変態を目指すのなら、打たれ弱いってのは致命的よ。変態とは常に非難され続ける者。故に変態は人目を忍んで行為に耽るのよ。それでも変態とは雰囲気で分かるもの。ちょっとした言動とか知識自慢で変態は変態である事がバレ、世間から詰られるのよ──貴女にはその覚悟があるのかしら?」


 なんか語り始めた。


「そうですよ。公衆の面前で全裸になった所で変態になれません。というより、そんなの覚悟次第で誰にだってできます。いいですか、ルルさん。変態とは自称するものではありません。他者から認められる事でなる者。それが分からない限り、貴女の変態性はただのファッションでしかありません」


「お前らに変態の何が分かるって言うんだ」


 ドヤ顔で説教垂れる彼女達に思わず突っ込んでしまう。


「ていうか、人間って誰しも変態だろ。というか、変態じゃないと子孫が残せない。変態である事は普通の事だと俺は思う」


「「ちっちっちっ、甘いわ/甘いですね」」


 バカと腹ペコはドヤ顔で俺の主張を食い気味に否定する。


「確かにコウの言う通り、人類はみんな変態よ。それは覆しようのない真理だわ。いつも清楚振っている御令嬢も百八十度度開脚とかブリッジ歩きを得意にしているお嬢様も、裏では○○○○やってたり、○○○を使って遊んでいるわ。でもね、変態の中でも"格"というものがあるのよ」


「何でお前、そんなに変態について詳しいんだよ」


「私の友達の友達は数多の変態に認められたトップオブトップの変態よ。私の友達の下着を盗むわ、盗んだ下着を被るわ食べるわ、私の友達の寝込みを襲うわ、王子の尻に雪玉ぶつけるだけじゃ飽き足らず肛門に聖剣の柄を捩じ込むわ、……もうそれは凄い変態だったのよ」


 げんなりした表情で明後日の方を見るバカ令嬢。

 一瞬、先程出会った変態さんを思い出すが、すぐに脳から追い出す。


「そうです。リリィさんの言う通りです。変態にも格というものが存在します。かつて私が所属していたシスター長は○○○を開発して、聖遺物で○○○○をしていました。そして、それを神の試練と称し、純粋無垢な私の同僚の○○○を──」


 めちゃくちゃ生々しい話だったので、聞かなかった事にする。

 何だよ、○○○の開発って。

 人体って無限の可能性を秘めてんな、おい。

 というか、聖職者がそんな淫らな行為していいのかよ。


「そういう訳よ、レイ。トップオブトップの変態になるってのはね、そんな化物染みた変態達に変態と認められなきゃいけないのよ」


「そうです。ド変態に変態呼ばわりされないと、トップオブトップの変態になれないのです」


 ドヤ気味に腕を組みながら、真の変態になろうとしている純情乙女に見下すような視線を送る。


「いや、こいつが目指そうとしているのは真の変態だろ。トップオブトップの変態とかいう化物を生み出そうとするな」


「ふっふっふっ……真の変態だろうが、トップオブトップの変態だろうが、なんでも良いっす……この恥辱を晴らせると言うのなら……!」


「いや、恥を恥で上塗りしているだけだと思うぞ」


 全力で自分を見失っている変態&プロ奴隷になろうとしている純情乙女に釘を刺す。


「でも、何故かファッション変態って呼ばれる事自体にドキドキする様になったっす。何ですかね?」


「知るか」


 そのドキドキがどういうドキドキなのか分からなかったし、分かろうとも思わなかった。

 バカと腹ペコの方を見る。

 彼女達は"昇って来なさい、私達の領域まで"みたいなドヤ顔をしながら、決めポーズしていた。


「上等っす!すぐに追い越して──」

 

「変態である事に誇りを抱くな」


 全力で道を踏み外しそうになる変態と彼女を煽ったバカと腹ペコの頭にハリセンの一撃を叩き込む。

 その後、俺達は再び塔の探索を開始した。

 強敵が立ち塞がる──事もなく、凶悪なトラップに引っかかる──事もなく、俺達は淡々と最上階目指して突き進む。

 塔に入って数時間後、俺達はようやく最上階に辿り着く事ができた。


「あ、やっと来た」


 酒瓶を手で弄びながら、玉座に座る銀髪の少女が俺達を出迎える。

 ()()を見た瞬間、俺の本能は即座に警報を鳴らした。

 ──ヤバイ。

 あれはデスイーターとか騎士団長とか魔王とか比べ物にならないくらいにヤバイ。

 人間の領域を遥かに越えている。

 あれは敵に回したら、いけないものだ──!


 塔の主と思われる()()を見て萎縮する身体。

 逃げようにも逃げられない事を理性よりも先に身体が理解する。


「さて、ここまでようこそ。一応、歓迎してやるわ」

 

 瓶の中にあった酒を飲み干しながら、少女の形をした何かは俺達の事を歓迎する。

 その瞬間、腹ペコは自分の頭を床に叩きつけた。


「さよなら、現世!!」


 自爆する腹ペコ僧侶。

 突然の彼女の奇行により、言葉を失う俺達。

 腹ペコは水に浮かぶ土左衛門(水死体)の如く、ピクリとも動かなくなった。


「…………何やってんの、そいつ」


 塔の主は呆れ半分困惑半分といった様子で俺達に疑問を投げかける。

 当然、俺達は答える事ができなかった。


 ……そんな訳で隠しボス戦突入です。


 ここまで読んでくれた方、いつも読んでくれている方、ブクマしてくれた方、評価ポイントを送ってくださった方、感想を送ってくださった方、レビューを書いてくださった方、そして、新しくブクマしてくれた方に感謝の言葉を申し上げます。

 

 今月は諸事情により、更新ペースが遅れて申し訳ありません。

 来月からは週3日以上更新できるように頑張りますので、よろしくお願い致します。

 また、来月に本編が終わる予定でしたが、恐らく再来月までかかると思います。

 残り30〜50話くらいで完結(もしかしたら、文字量が増えてそれ以上の話数になるかもですが)すると思うので、最後までお付き合いよろしくお願い致します。

 次の更新は9月1日12時頃に予定しております。

 まだまだ暑い日が続く上、コロナも感染拡大していますが、体調を崩されませんようご自愛ください。

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