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触手と便意と暴走(急)

「うぎゃあああああ!!!!助けてくださああああああいいいいいい!!!!食べられたくないですうううううう!!!」


「ちょ、触手さん、やる気あるっすか!?もっと強く締め付けないとドキドキしない………あ、何かヤバい音したっす。何か胃の中のものを空っぽにした時の音がしたっす。ヤッベー、ドキドキしてきたけど、このドキドキは私が求めているものと何か違うなー」


「コウ!漏れそう!色んな所から色んなのが出そう!!」


 バカ令嬢の作戦通り、触手に捕まった彼女達は唯一捕まっていない俺に助け (?)を求める。

 数分前、バカ令嬢はこう言った。

 "逆転の発想よ。みんな捕まれば、触手も発想を逆転して拘束を解除するわ"

 

 バカなのか、こいつは。


 "あ、それは良いっすね"

 "やっぱ、リリィさんは頭良いんですね!"


 バカなんじゃないか、こいつら。


 結果、俺以外のメンバーは拘束された。


 バカだわ、こいつら。


 結局、触手は彼女達の思惑通りに動いてくれなかった。


 バカだったわ、こいつら。


 勝手に自爆して、勝手に窮地に陥った彼女達を見て、深い溜息を吐き出す。

 …………………止めとけば良かった。

 戦犯を探すよりも戦犯じゃない方を探す方が難しかった。

 というか、止めなかった俺も十分戦犯だし。

 何で止めなかったんだろ、俺。

 

「こ、コウ!へ、へるぷ、へるぷ、みー!!」


「うわ『ぐぎゅるるるるるるるるううううう!!!!!』ああ!!!!」


「やっぱ、精神的苦痛を重きに置いて欲しいっすねー。肉体的な痛みだけってのは良くないっす。心身一緒に痛めつけるから快感が生まれる訳であって」


 そろそろ限界っぽそうに見えたので、力尽くで助ける事にした。

 もう少し早い段階でやっとけば良かったと思いながら、俺は1歩前に出ようとする。


「くぎゅ!」


「痛『ぐぎゅるるるるるるるる!!!!』ァ !!」


「はぅ♡」


 俺の動きを感知した途端、触手は彼女(ひとじち)達を締め付けた。

 迂闊に動けない──否、動く事を許されていない事に気付かされる。

 恐らく触手は俺を警戒しているのだろう。

 そして、ギリギリの所まで俺に静止を求め続けるだろう。

 彼女達を捕食する寸前まで。


(なら、彼女達を捕食する寸前に殺せばいい)


 唯一の活路を見出す。

 すると、バカ令嬢が再びバカな事を言い始めた。


「知ってる?この触手、めちゃくちゃ鼻が良いらしいわよ」


 何かも諦めた表情を浮かべながら、彼女は言葉を紡ぐ。


「ここで刺激臭いっぱいの排泄物を捻り出したら、ワンチャン助かると思うわ」


 拘束された彼女達は覚悟を決めた目をする。

 俺はそれを全力で阻害した。


「待て待て待て待て!!」


 もう何もかも悟ったような表情を浮かべる彼女達を全力で止める。


「お前らいいのか!?そんな人としての尊厳を捨てるような事をしてもいいのか!?それをやったら、ただのゴリラだぞ!?威嚇目的で糞を投げるゴリラと大差ないぞ!!??」


「「「覚悟は出来てる」」」


「そうか!落ちる所まで落ちたな!!」


 もうヒロインとしての矜持どころか人としての誇りさえも投げ捨てようとしていた。

 昨今のアニメや漫画でも普通にゲロ吐くヒロインは出てくるが、排泄物を捻り出す系のヒロインは人を選ぶエロゲにしか出てこないと思う。


「大丈夫よ、コウ。排泄物は何も○○○だけじゃない。吐瀉物も含まれるわ」


「どちらにしろ汚い事には変わりない!!」


「だい『ぐきゅるるるるるるる!!!!!!』」


「腹ペコ、先ずはその腹の音を止めろ!何を言っているのか分からんから!!」


「ご主人、私達は約束したじゃないっすか!"我ら天に誓う我ら生まれた日は違えども漏らす時は同じ日同じ時を願わん"って!」


「そんな汚い桃園の誓いを立てた覚えはない!!」


「まあ、死ぬよりかはマシよね」


「その死ぬ事以外は擦り傷みたいな価値観を捨てろ!ていうか、お前ら、死ななきゃ何しても良いって思っているだろ!?」


 彼女達の目が本気の本気だったため、俺は急いで後退すると、デカイ木の足下に落ちていた果実──"マルジャンブルナッグ"を拾う。

 果実を2つに割ると、それを触手目掛けて投げつけた。

 異臭を放つ果実が触手に衝突する。

 嗅覚が優れている話は本当だったのか、触手の口から不快感を示す声が漏れ出た。

 彼女達の拘束が緩む。

 それを好機と見た俺は、次々に落ちていた果実を手で割ると、それを触手の方に投擲した。

 途中、何回か何ヶ月も放置していた汗ばんだ体操服みたいな臭いに耐え切れず、吐きそうになる。

 寸前の所で堪えながら、俺は何十年も身体を洗っていないおっさんの股間みたいな臭いを放つ果実を投げ続けた。

 ……糞を投げるゴリラと大差なかった。

 今の自分の姿を想像しただけで泣きそうになる。

 "投げているのは果実だ。糞以上に臭いけど、糞じゃない"と心の中で叫びながら、俺は果実を投げ続ける。

 俺の決死の行為が報われたのか、触手は彼女達を解放すると、逃亡してくれた。


「ふぅ……ギリギリの闘いだったわ」


 解放されたバカ令嬢は額に滲んだ汗を拭いながら、やり遂げたような表情を浮かべる。

 

「ですが、所詮は雑魚。私達の敵じゃな『ぐきゅるるるるるるる!!!』、あ、お腹減ったんで何か食べ物ください」


 ドヤ顔を崩さないまま、腹ペコは食べ物の催促をする。


「いやー、ドキドキはしたっすけど、アレは私の求めるドキドキじゃなかったっすね。やっぱ、心身共々痛めつけてこその快感と言いますか。やっぱ、畜生じゃ私達の相手になりませんね!!」


 訳の分からない自論を告げながら、変態は大袈裟に胸を張る。

 俺はというと、手についた異臭の所為で吐き気を堪えるのがやっとだった。

 俺の反応がない事を不審に感じたのか、彼女達は慌てて俺の下に駆けつける。

 そして、満面の笑みを浮かべつつ、彼女達は次々に俺にお礼を言い始めた。


「ありがとう、コウ!貴方のお陰で、私の尊厳は保たれ、おぼろろろろろらろ!!!!!」


「ありがとうございます!やっぱ、コウさんは頼りになりま、おぼろろろろろろろ!!!」


「ご主人、大好きっす!私をめちゃくちゃにし、おぼろろろろろろろろ!!!!」


 俺の手についた異臭を嗅いだ瞬間、彼女達は口から汚いナイアガラの滝を出し始めた。

 それがトドメになって、俺も胃の中のものを地面に吐き出し始める。

 嘔吐しながら、俺は思った。


 "ああ、早くお家に帰りたい"と。


 







 蛇足でしかない後日談。


「そういや、バカ令嬢。お前、お花を摘みに行かなくて良かったのか?」


 近くにあった川で匂いを落としながら、俺は水浴びしているバカ令嬢に尋ねる。


「あ、あれ、場を盛り上げるためのウソよ。あんなタイミングで催す訳ないじゃん」


 "えっへん"と言わんばかりに胸を張るバカ令嬢。

 俺は無言で彼女の身体にドロップキックを叩き込んだ。


 いつも読んでくれている方、ここまで読んでくれた方、ブクマしてくれた方、評価ポイントを送ってくださった方、そして、新しくブクマしてくれた方、誤字報告をしてくださった方に厚くお礼を申し上げます。

 皆様のお陰でブクマ200件まで残り31件(7月30日12時現在)になりました。

 つい先月ブクマ100件を突破したばかりなのに、今月だけでブクマ200件が見えてくるラインまでブクマが増えるとは思いもしませんでした。

 一応、今月はブクマ200件を目標に頑張っていましたが、ここまで伸びてくれたのはブクマしてくれた方のお陰です。

 本当にありがとうございます。


 また、いつもいつも感想を書いてくださっている勇人さん、今回も感想を書いてくださって、本当にありがとうございます。


 ちなみに感想で頂いた質問ですが、ルル──腹ペコ僧侶の苦手なものは栄養にならないもの(例:噛んだ後のガム等)消化できないもの(例:岩やガラス等)・人類では食べられないもの(例:毒キノコ等)です。

 食べられそうなものなら、ピンクの宇宙人みたいに何でも食べますが、今回の果実みたいに人の身では食べられないもの・食べたら速攻で死ぬ毒キノコ等を食べた場合、生命の危機を感じて即座に嘔吐します。

 ついでに腹ペコの好きな食べ物をお答えさせて貰いますが、彼女に好きな食べ物は特にありません。強いて挙げるならば、お肉みたいなお腹に溜まるものです。

 浮島では調味料が普及していないのもあって、殆どの食べ物に味がしませんので。

 彼女も含め、浮島の人達にとっての食事は娯楽ではなく、生きていくために必要な苦行の1つです。

 そういう事情もあって、腹ペコに苦手なものが殆どありませんが、好きなものも殆どありません。

 彼女は食事を楽しむために食べているのではなく、腹を満たすために食べています。

 今回、舐めた蜂蜜が美味しかったら、食の愉しさに目覚めていたかもしれませんが、渋みと苦味が強いものであったため、目覚める事ができませんでした。


 長々と答えた上、かなり脱線してしまいましたが、再度勇人さんにお礼の言葉を申し上げます。 

 本当にいつも感想を書いてくださって、ありがとうございます。

 この場を借りて、厚く厚くお礼を申し上げます。

 

 次の更新は8月2日月曜日12時頃に予定しております。

 来月は4〜5万PV達成を祝いも兼ねて、なるべく月・水・金に更新できるように頑張ります。

 次回更新のお話で物語は折り返し地点に到達しますが、最後までお付き合いよろしくお願い致します。







 最後にこの場を借りて、今回更新した「触手と便意と暴走」を1つにまとめた短編を本日12時半頃に投稿させて貰う事を告知させて貰います。

(新規読者層を獲得するために投稿するので、細部が少しだけ違うだけで大体の流れもオチも同じですが……)

 もし「もう1度この短編を読み返したいな」という方がいらっしゃる(?)のなら、こちらで読んでくれると嬉しいです→ (https://ncode.syosetu.com/n6256hc/)


 めちゃくちゃ長い後書きになりましたが、これからも完結目指して頑張りますので、よろしくお願い致します。



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[良い点] 面白い [一言] サキュバスクイーンみたいな♀に性感度upつけたらどうなるんだろう? 性感度upと精力upをつければ死なないのでは?
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