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シリアス(?)な雰囲気とこれからの話と地下通路の存在

 今回は箸休め回です。

「さて、どうしましょうか」


 騎士団に見つかり、騎士団長との死闘を潜り抜けた俺達は、とりあえず港町から少し離れた所にある森に避難していた。

 空を仰ぐ。

 空には無数の星々が瞬いていた。

 今更ながら夜になっている事に気づく。

 日が落ちた事が気づかないくらい、逃げるのに必死だったのだろう。

 鞘──騎士団長戦で粉々に砕け散ったが、いつの間にか復活していた──に収まった刀を地面に置きながら、俺は鉛のように重い身体を休ませようとする。

 地面に座ると同時に眠気を覚えた。

 瞼が閉じそうな所で、近くから腹の鳴る音が聞こえてくる。


「……おなか、へりました」


 音源の方を見ると、死んだような魚の目をしながら夜空を仰ぐルルの姿が目に入った。


「携帯食があるから、それを食べましょうか」


 バカ令嬢は何もない所から乾パンを取り出すと、眉間に皺を寄せたまま、ルルに食糧を提供した。


「ずっと思っていたけど、お前、携帯食糧といい、服といい、どこから取り出している訳?」


 ずっと疑問に思っていた事をつい聞いてしまう。


「収納魔術よ。別空間にストックしたものを取り出しているだけよ」


「へえー、リリィさん、魔術に長けているっすか。あんな小難しいもの、よく身につけられたっすね」


「必要だったからね。まあ、初歩中の初歩の魔術しか使えないんだけど」


「それでも凄いですよ。私なんか魔術習得するの挫折しましたし」


 一瞬で乾パンを平らげたルルは、お替わりを催促する。


「ん?お前、魔法使えるじゃん。もしかして、魔法と魔術って別物なのか?」


 その質問をした所為で、ルルとレイは目を丸くしてしまう。


「なるほど、今分かったっす。このパーティが伝説上の存在である"下界"を目指している理由を。ご主人様は下界の人間なんですね」


「あり?説明してなかったっけ?」


「はい。んで、ご主人様はなんでここに来ちゃったんですか?」


「こいつに呼ばれたからだ」

  

 リリィを指差しながら答える。


「厳密に言えば、こいつじゃなくて、フクロウの獣人だけど。まあ、こいつがお尋ね者になった事が原因で呼び出されたから、こいつの所為なんだけど」


「ん……?お尋ね者になった……?脱走したからお尋ね者になったんじゃないっすか?」


「王子の尻を爆破した挙句、婚約破棄された腹いせで花火を何百万発を打ち上げた結果、王宮から追われる身になったらしいぞ」


 "えっへん"と偉そうに胸を張るリリィ改めバカ令嬢。

 ……本当、こいつが余計な事をしなければ、俺はここに来なくて済んだのに。

 そう思うと溜息が漏れ出てしまう。


「んー?王子に婚約破棄された?なんで?なんで王子は婚約破棄しちゃったんですか?メリットなくないっすか?」


 納得がいかないのか、レイは不思議そうに首を傾げながら、乾パンを齧る。


「そりゃあ、執拗に尻を爆破されたからだろ」


「それでも婚約破棄はないっすよ。だって、王子はバランピーノ家を手懐けるための駒ですし。なんか、引っかかるっすねー。その婚約破棄は真王にとってメリット皆無な訳ですし」


 真王と敵対する魔王の娘であるレイは、眉間に皺を寄せながら、思った事をそのまま吐露する。


「もしかしたら、王子の独断かもしれないですよ。ほら、あの人、勇者と同じく我が儘だって噂されてますし」


「あー、そういや、婚約者を放置して、他の女にちょっかいかけてたって話も聞きましたね。え?もしかして、婚約破棄したのって痴女のもつれっすか?」


「痴情のもつれな。なんだよ、痴女のもつれって」


「簡単に言うと、レズ■■■■っす」


「王子どこいった」


「多分、王子は性転換したんじゃないっすか?」


「勝手にち○こ取るな」


「で、実際の所はどうっすか?お嬢様」


「え、あ、いや、そういう訳じゃないのだけど」


 リリィは居心地悪そうに自分の頬を人差し指で掻きながら否定の言葉を口に出す。


「んじゃあ、何で王子はお嬢様に婚約破棄を言い渡したんですか?」


「あの馬鹿の考えている事なんて知らないわ。多分、気分なんじゃない?」


 干し肉を食べながらバカ令嬢はそっぽを向く。


「って、話脱線してる場合じゃねぇ。なあ、バカ令嬢、これからどうするんだ?船乗る選択肢潰されたけど……」


「騎士団の警備が手薄になるまでこの町に留まるか、それとも船を諦めて徒歩で移動するか。コウ、貴方はどっちを選びたい?」


「徒歩で移動したら、かなり時間がかかるんだろ?なら、一か八か警備が手薄になるまで……」


「その方法だと、徒歩で移動するよりも時間がかかるかもしれないわよ?」


「でも、他に手段はないんだろ?だったら……」


「いや、あるっすよ」


 干し肉を飲み干しながら、レイは第3の選択肢を提示する。


「魔王軍以外に知られていないっすけど、湖の下に地下通路があるんですよ。そこを通れば、船を使わなくても湖を横断できます」


「よし、それで行くわ」


 バカ令嬢は即座にレイの提案に乗る。


「あ、でも、今は危……いや、なんでもないっす」


「おい、今は危険って言いかけなかったか?」


「気の所為っすよ。ただ面白い事になる事だけは言っておきます」


「コウ、いつ騎士団に見つかるか分からない以上、四の五の言ってられないわ。飯を食べたらすぐに行きましょう」


 危機迫った様子で即断するバカ令嬢──リリィの姿に危機感を覚える。

 以前も見た事があるような。

 そうだ、デスイーターに殺された人を見た時だ。

 あの時も彼女の様子はおかしくなっていた。


「お、おい、お前……何か様子おかしいぞ?おふざけがないというか……」


「今、捕まる訳にはいかないのよ。正直、ここで騎士団長と遭遇するなんて想定していなかった。完全に油断してたわ」


「まあ、あれ相手に逃げ切れたのは正直奇跡っすね。コウさんが急成長を遂げなかったら、どうなってた事か」


 バツの悪そうな表情でレイは指で頬を掻く。

 ルルも彼女の意見に同意しているのか、険しい顔をしながら咀嚼していた。

 なるほど、それで彼女達はおふざけしなくなったのか。


「次に奴と対峙する時は今回以上に総力戦になると思うわ。奴も形振り構わなくなる筈。そうなったら、今の私達じゃ対処しようがない」


「つまり、今以上に強くならないといけないって事か……」


 今回、引き分ける事ができたのは夢を視たからだ。

 次も都合良く夢を視れるとは限らない。

 もしかしたら、突破口さえ見い出せないかもしれない。

 今回は何とか挽回できたが、経験値の少なさの所為で窮地に追い込まれそうになった。

 ……経験を積まないといけない。

 より早く、より確実にお家に帰るために。


「という訳で地下通路とやらを使って、次の町に行くわ!この決定に何か異論ある人!!」


「はい」


「コウ、空気を読んで!ここは異論なしからの一致団結えいえいおー!ってする場面でしょうが!」


「その前に聞かなきゃいけない事があるだろ」


「あー!無視した!!」


 気の抜けた事を言うリリィ──バカ令嬢を無視して、俺はレイの方を見る。


「お前、さっき危険って言いかけたけど、その地下通路って今どうなってんの?」


「現在、魔王軍が占拠してるっす」


「「「え?」」」


「いや、ちょっと前に調子に乗って真王がいる王宮攻めたけど、上手くいかなかったらしくて。で、自分らの領地に帰る事も面倒だったのか、今、地下通路に野営地作って、作戦練り直しているんですよ。だから、地下通路を通ろうとしたら、魔王軍とバトる事になる的な」


 ヘラヘラした様子で真実を告げるレイを見て、俺は思わず顳顬を押さえる。

 迂回するにしろ、留まるにしろ、地下通路を進むにしろ、過酷な旅路である事には変わらなかった。


 ここまで読んでくれた方、ブクマしてくれた方、評価ポイントを送ってくださった方に感謝の言葉を申し上げます。

 また、新しくブクマしてくれた方、新しく評価ポイントを送ってくださった方、そして、新しく感想を書いてくださった方に厚くお礼を申し上げます。


 皆様のお陰で本作品の累計PVが3万突破しました。

 これも皆様が読んでくれているお陰です。

 本当にありがとうございます。

 3万PV達成記念キャンペーンは7月中旬にやる予定なので、その時はよろしくお願い致します。

 

 また、来週の月曜日から2万PV達成記念キャンペーン後半をやらせて貰います。

 先週同様、7月5日〜7月9日の間、毎日1話更新する予定です。



 次の更新は7月5日(月)12時頃です。

 これからもお付き合いよろしくお願い致します。

 

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― 新着の感想 ―
[良い点] 新作楽しく読ませていただきました! 普段は暴走がデフォルトなために、真面目なことを言っただけで戦慄されてしまうあたり、リリィさんが哀れ・・・しかし、すぐさまいつものハイテンションになるの…
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