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魔王軍幹部と混沌と狂った倫理観

「お嬢!帰りましょう!魔王軍に!!」


「嫌っす!私はこの人に人間を卒業させて貰うっす!だから、家畜になる私を黙って見守ってください!!」


「うわああああああああああああああああ!!!!コウを寝取られたあああああああああああああああああ!!!!」


「コウさん!お腹減りました!!今日の昼飯は何ですか!!??」


 現場は荒れに荒れていた。

 俺1人のツッコミじゃ修正できない程度に。

 まさに地獄絵図。

 今までにないくらいお家に帰りたいと思った。

 とりあえず、腕にしがみつく奴隷志願の女の子──レイを引き剥がそうとする。

 

「……離れてくれないか?」


「嫌っす。まだ調教されていませんし。身も心も豚にしてくれるまでこの腕を離しませんよ」


「それなら、あそこにいるバカに頼めよ。俺、そんな性癖を持ってないから」


「大丈夫っす、素質ありますから」


「何の!?」


「うわあああああ!!!!コウが他の女とイチャついてるうううううう!!!!」


「イチャついていない!!ヤベェ変態にヤベェ性癖を押し付けられているだけだから!!」


「だったら、私もやってやるわ!!ルル、おしゃぶりと乳母車を持って来て!!これから一生コウにお世話して貰うから!!!!」


「さり気なくヤベェ性癖を暴露するな!!どう反応したら良いのか分からなくなる!!」


「笑いながら"薄汚い豚が、人の言葉喋ってんじゃねぇよ"と言えば良いっすよ」


「お前は人の言葉を喋ってくれないかな!!??」


「コウさん!お腹減りました!!!」


「今はそれどころじゃないから、少しだけ我慢してくれ!!」


「お嬢!そんな世迷言は止してください……!今、魔王軍はお嬢がいなくてヤバ……」


「うるせぇ、豚!一丁前に人の言葉話してんじゃねぇよ!!」


「会って数分もしない人に何たる物言い!?」


「しまった!つい流れで関係ない奴に当たってしまった!!」


「ほら、素質あるじゃないですか」


「うるせぇ!黙ってろ!」


「ぶひぃ!」


「おぎゃあ!おぎゃあ!!」


「ごーはーん!!!ごーはーん!!!!」


 俺の腕に抱きつきながら豚の物真似をする変態に、幼児退行したバカ令嬢、そして、昼飯を催促する腹ペコ僧侶。

 3人の自由人の所為で、現場はメチャクチャになってしまった。

 ああ、……早くお家に帰りたい。


「ああ、もう……!こうなったら力尽くで……!」


 痺れを切らした魔人──オークキングが俺の腕にしがみつく豚……じゃなかった少女を捕らえようとする。

 反射的に俺は刀の柄に手をかけてしまった。

 武器に手をかけた俺を見た途端、オークキングの目の色が変わる。


「──お前、それがどういう意味を持っているのか、理解してんのか?」


「……ああ、理解しているさ」


「そんなにお嬢を奴隷にしたいのか?」


「あそこで転がっているバカ令嬢がこの子を必要としているんだよ。あいつは意味もなく動く事はあっても、意味なく選択する事はない。多分、"西の果て"に行くには必要なんだよ、この子の力が」


 バカ令嬢──リリィの方を見る。

 彼女は床に寝そべりつつ親指を口に咥えたまま、ドヤ顔を披露していた。


「ごめん、オークキング。撤回させて貰う。多分、あいつ、何も考えていない」


「だろうな。お嬢を返して貰えるか?」


「ああ、良いぞ。ところで魔王軍に馬車を操縦できる人はいるか?"西の果て"まで馬車を動かして貰いたいんだけど」


「いない事はないが、"西の果て"まで連れて行く奴はいないと思うな。"西の果て"付近で良いなら、そこそこいると思うけど」


「だったら、紹介してくれないか?どうしても"西の果て"に行きたいんだ」


「ああ、お嬢を返してくれるなら構わな……」


「「「ちょっと!ちょっと!ちょっと!」」」


 話が纏まりつつあったのに、彼女達の静止を呼びかける声で台無しになってしまう。


「何だよ、折角話が纏まりかけてたのに……」


「何勝手に決めているのよ!?この子は私達のパーティーの一員なのよ!そう簡単に手放せないっての!」


「そうっす!女の子を取引の材料にするとか、どんだけ残忍なんですか!鬼!悪魔!そんな所が大好きっす!もっと私を人間扱いしないでください!」


「もう限界です!コウさん!お昼ご飯、調達しても良いですか!!??」


「あ、私が隠し持っていた干し肉あげるっす」


「わーい!」


「それだけじゃ味しないでしょう。ほら、昨日買った塩もかけた方が良いわよ。美味しさ倍増するから。あ、あと、パンもあったんだった。食べる?」


「はい!ありがとうございます、リリィさん!」


「もう俺、帰って良いかな!!??」


 3人寄れば文殊の知恵。

 けど、バカ・腹ペコ・変態が寄っても、混沌しか生み出さなかった。


「という訳よ!オークキング!この子は貴方達に渡さないわ!!」


「そうだ!そうだ!大人しくいつも通り陵辱系のエロ本片手にマスをかいてろっす!」


「食べ物をくれる人は大体私の友達、イェーイ!」


「なあ、少年!あの子ら、君の仲間なんだろ!?頼む!説得してくれないか!!??」


「できたら、とうの昔にやってるよ!」


 オークキングに自分の無力さを訴えた瞬間、彼の足元に赤い魔法陣が展開されたかと思いきや、彼の身体に赤い光が灯る。

 振り返る。

 腹ペコ僧侶はニコニコと微笑みながらオークキングに魔法をかけようとしていた。


「な、これは付与魔法……!?一体、私にこの魔法をかけて何をしよ……うごごごごご!!!」


 腹ペコに魔法をかけられたオークキングは、突如お腹を押さえると、地面に膝をついた。


「おい!何の魔法をかけたんだ!?」


「便意+9999の魔法です!」


「えげつない魔法パート2!!」


「これで解体する時にクソを出す手間が省けます!やったです、コウさん!美味しく食べれる所が増えますよ!」


「食べんの!?オークキングを食べるつもりなの!?元人間だろう!?」


「ええ、食べれる物は綺麗に食べるのが世の摂理です」


「お前、本当に聖職者だったのか!!??」


「まあまあ、良いじゃないですか。オークキングは殆ど豚だから、多分、美味しいと思いますよ?」


 宥めるように俺に話しかけて来る奴隷志願の変態。


「お前、こいつと知り合いだろう!?食う気満々なの!!??」


「はい、美味しく食べないと、これから死ぬ彼にとても失礼なので」


「倫理観狂っている!?」


「大丈夫よ、コウ。たとえここで私達が彼を喰ったとしても、誰も口外しなかったら、真相は闇に葬られるから」


「逃げろ!オークキング!!このままじゃ、こいつらに食われるぞ!!」


 腹を押さえながら額から脂汗を垂れ流すオークキング。

 彼が限界を迎えようとしているのを俺は肌で感じ取った。

 ここまで読んでくれた方、過去にブクマしてくれた方、評価ポイントを送ってくださった方、そして、新しくブクマしてくれた方・新しく評価ポイントを送ってくださった方に感謝の言葉を申し上げます。

 皆様の応援のお陰でブクマ100件まで残り4件になりました。

 前作『価値あるものに花束を』に続き二作目もブクマ100件を突破できそうになっているのは皆様のお陰です。

 本当にありがとうございます。


 本日から累計PV2万突破記念キャンペーンの前半戦が始まります。

 キャンペーンと言っても、本編を今日か、金曜日まで毎日更新するだけですが、最後までお付き合い頂けると嬉しいです。

 これからも完結目指して投稿し続けるのでよろしくお願い致します。

 次の更新は明日の12時頃を予定しております。

 暫くの間、毎日更新するのでよろしくお願い致します。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] おいおい、クソ女2人は以前、 悪人にしか手をかけないから安心しろとか言ってなかったか? オークキング善人なのに、思いっきり毒牙にかかってるじゃないか ひでーな
[良い点] 初めまして、勇人と言います。 お腹が痛くなるほど笑えて、魅力的なキャラクターが縦横無尽に暴れまわる爽快なストーリーが素晴らしいです!こんな作品が読みたかったと、読めば読むほど個性的なヒロ…
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