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酒場と荒れ果てた会場と女奴隷

 奴隷オークションは港町の外れにある酒場の地下で行われているらしい。


「なるほど。この町では合法の奴隷は買えないみたいね」


「ご、合法……?」


 一通り町で情報を集めた俺達は、奴隷を買うため、町外れにある酒場に向かい始める。


「はい。国が指定する手続きを踏んで自らの意思で奴隷になる人は合法奴隷。国が指定する手続きを踏まずに奴隷になる人は非合法奴隷……と言った感じで区別されています」


「へ、へえ、そうなのか」


 どっちも変わらないような気がする。

 もしかしたら、合法の方が待遇が良いのか?

 リリィの方を見る。

 彼女は心底嫌そうな顔をしながら歩いていた。


「……そんなに嫌なら無理に奴隷買わなくて良いぞ。俺も人を売買するのに少しだけ躊躇い覚えるし」


「そんな事を言ってられないわ。いつ騎士団の追手が来るか分からない以上、さっさと移動手段兼戦力を確保した方が良いと思うし」


「それもそうだけど……」


「大丈夫よ」


 そう言って、彼女は右耳のピアスを外すと、ピアスを銃の形に変形させた。


「気に入らなかったら潰すから」


「大丈夫の要素、どこいった?」


「あ、リリィさん。私、男の人に精力+9999のバフをかけてタマタマパーンしたいんですけど。殴り込みの時にやっちゃっていいですか?」


「発想がナチュラルに怖い」


「なるほど、過剰な子種生産によってタマタマがパーンするって感じなのね。──うむ、許可する。思う存分やってしまいなさい」


「すんな」

 

 タマタマパーンを考えただけで俺のタマタマはヒュンってなる。

 こいつら、人の心ってものがないのだろうか。


「じゃあ、大人しく男の人の乳腺にバフをかけて母乳を出させる事にします」


「もっと品のあるバフをかけろ」


「リリィさん、品のあるバフに関して何かアイデアありますでしょうか?」


「相手の尿意を+9999にする」


「俺の知っている品じゃない」


「なるほど、便意+9999にするのもありですね」


「お前らは人の尊厳を何だと思ってんだ」


「「いずれ朽ちて壊れるもの」」


「ナチュラルに悪役サイドの発言してんじゃねぇよ」


 同じ答えを同時に口にしたのが嬉しいらしく、バカ令嬢と腹ペコ僧侶は機嫌良くハイタッチする。

 ……本当、あいつのバフがかからない体質で良かった。

 下手したら実験体になってたかもしれないし。


「大丈夫よ、マイダーリン。私達が裁くのは悪だけだから」


「王子の尻を爆破した挙句、王宮を大混乱に陥れた悪役令嬢(バカ)が正義面してんじゃねぇよ」


 お仲間ができて調子に乗っている彼女に釘を刺す。

 ……そろそろ、こいつ痛い目に遭いそうだと思った。


 そんな事を考えながら、俺達は町外れにある酒場の中に入る。

 酒場の中には誰もいなかった。

 床にはワイン瓶の破片とその中身が散乱しており、カウンターの上には食いかけのパンが鎮座していた。

 

 

「誰もいないわね」


「このパンの柔らかさから察するにさっきまで人がいたと思います」


 カウンターの上に置かれたパンを食べながら、腹ペコ僧侶は周囲を見渡す。

 

「じゃあ、ここにいた人達はどこに行ったんだ?」


「さあ?多分、地下じゃないの?」


 部屋の隅に設置されている地下に下る階段を見ながら、バカ令嬢は俺の疑問に応える。


「うーん、どうだろう?俺の感覚が正しければ、地下にいる人なんて殆どいないと思うけど……」


 肌に突き刺さる感覚が地下にいる人達の存在を知らせる。

 感覚が正しければ、今、地下にいるのは1人か2人程度……あれ?


「ん?人の気配が1人消えた……?」


「とりあえず、降りてみましょう。ここでグダグダしてても何も進展しないだろうし」


 警戒する事なく、バカ令嬢達は地下に降り始める。


「って、おい!もう少し警戒した方が良いんじゃ……」


「石橋を叩いた所で何も変わらないわ」


「こないだ言ってた事と違う」


 そして、俺達は酒場の地下にある空間──奴隷オークション会場に辿り着く。

 会場は荒れに荒れていた。

 床の上に人が転がっている事に気づく。

 ボディーガードらしき服装をした大男や貴族らしい格好をした中年男性、苦労を知らなさそうな肥満児など──身分が高そうな人達があちこちに転がっていた。

 顔面に青痣ができている事から、恐らく何者かが彼等を殴って、気絶させたのだろう。

 俺達以外に会場内で意識を保っている人達はいなかった。


「も、もしかして、騎士団の人達がここを制圧したんじゃないでしょうか。ほら、ここ非合法で奴隷を売買してますし」


「いえ、騎士団はそこまで働き者じゃないわ。多分、騎士団以外の人がやったんだと思う」


「だったら、こんな大人数、誰が殴り飛ばし……」


 ──ステージの方から人の気配を感じ取る。

 敵意も殺意もなかったが、奇妙な感覚により俺は腰に携帯していた刀をいつでも引き抜けるように身構えてしまった。


「お?私の新しいご主人様候補がまた来ちゃいましたか」


 ステージの裏から貴族らしい服装に身を包んだ男の人──の首根っこを掴んだ赤髪少女が出てくる。

 彼女が持っている貴族風の男は白目を剥いて気絶していた。

 背筋に嫌な汗が垂れ落ちる。

 本能が激しく警告していた。

 "あの女はまともじゃない"と。


「なるほど、なるほど。大丈夫です、貴方達の言いたい事はちゃんと理解しましたから」


 白目を剥いて気絶した男を雑に放り投げながら、ボロ布1枚しか着ていない赤髪少女は大袈裟に胸を張ると、こんな事を言い出した。


「奴隷を欲しているんでしょ?なら、今世紀最初にして最後の究極を超えた究極の女奴隷である私はどうですか?こう見えて、私、立てば女騎士、座ればエルフ、歩く姿はサキュバスを自負しています。こーんな美しい奴隷を買うのは今がチャンスっすよ。さあ、未来のご主人様。旅のお供にいずれプロ奴隷になる私を買っていきませんか?今ならかなりお買い得ですよ?」


 キラキラした目で奴隷としての自分をアピールする赤髪少女。

 俺が勝手に抱いていた奴隷イメージは彼女の手によって根刮ぎ破壊されてしまった。

 ……え?この大陸の奴隷ってこんなに明るいの?


「質問、いいかしら?」


 バカ令嬢──リリィは冷静な様子で目の前の少女を睨みつけるように観察する。

 その姿はいつものチャランポランなものではなかった。

 今の彼女なら、この場を任せる事ができる。

 そう思った俺は彼女にこの場を託した。

 ……別に話すのが面倒臭そうとか思っていないんだからね。


「馬車は操縦できるかしら?」


「できません」


「家事は?」


「できません」


「夜の営みは?」


「経験はないけど、自信だけはあります」


「よし、採用」


「よしの要素、どこにもねぇよ」


 いつも通り、バカ令嬢は何か考えてそうで何も考えていなかった。

 ここまで読んでくれた方、ブクマしてくれた方、評価ポイントを送ってくださった方に感謝の言葉を申し上げます。

 また、新しくブクマしてくれた方や評価ポイントを送ってくださった方に厚くお礼を申し上げます。

 本当にありがとうございます。

 本日で1万PV達成記念キャンペーンは終了です。

 また1週間に1度の更新に戻します。

 ……と告知する予定でしたが、先日、本作の累計PVが2万突破致しました。

 読んでくださった皆様、本当にありがとうございます。

 なので、再来週の月曜日から累計PV2万達成記念キャンペーンをやりたいと思います。

 平日のみですが今回みたいに一定期間、毎日更新していきたいと思います。

 具体的な告知に関しては来週以降にしますので、これからもお付き合いよろしくお願い致します。

 

 次の更新は6月16日水曜日12時頃に更新予定です。


 

 

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― 新着の感想 ―
[気になる点] あーやっぱりな 3人目の仲間、男だったらいいなと思ってたけど、 なろう定番通りのハーレム展開か。少女だけの 幼女が混じってないだけマシかもしれんが [一言] 求職の面接がこんなに難易度…
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