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汚い声と汚い脅しと汚い"ざまぁ"


「んお゛オ゛ぉ゛っ♡♡♡♡」


 ……勇者の口から汚い声が漏れ出る。

 目の焦点が合っていない状態で彼は床に膝を突くと、舌を垂らしながら伏せてしまった。


「ちょっと!?勇者様、何してんの!?」


「お゛ぉ゛♡♡」


「おいおい、何で急に倒れてんだ……臭っ!!」


「あ゛ぁあぁああぁあぁぁあ゛ぁ゛ぁ゛だしゅげええぇぇえぇぇえぇ゛ぇ゛♡♡♡」


 勇者の仲間である魔法使いと戦士が心配の声を上げる度に、勇者の口から汚い声が漏れ出る。

 勇者達の周囲にいたゴロツキ共は何が起きたのか理解できず、ただ困惑していた。

 ……彼の身体から嗅いだ事のある異臭が漂い始める。

 一瞬で勇者の身に何が起きたのか理解した。

 俺は元凶と思われるリリィ──バカ令嬢の方を見る。

 彼女は得意げな様子で胸を張っていた。


「……お前、一体何をした?」


 彼女は自信満々に肩にかかった自らの金髪を手で払うと、カッコつけながら、こう言った。


「勇者の性感度を+9999にしたわ」


「鬼か、お前は!!??」


 俺の大声に反応した勇者の身体は、陸に上げられた魚みたいに跳ねる。

 ……彼から漂う異臭がより濃ゆいものになってしまった。


「なるほど。性感度+9999になっちゃったら、大声を出すだけで達してしまうのね。勉強になるわ」


「冷静に分析している場合か!?このまま放っておいたら、こいつ、死ぬぞ!!」


「大丈夫よ、人は思っていたより頑丈だか……」


「うびょぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼッ♡♡♡ンびぉ゛ぉ゛お゛ぉ゛ッ♡ちゃぎききききぎィぃいぃぃぃッ♡♡♡♡♡♡♡」


「あ、ダメかもしれない」


 勇者の足元に広がる卑猥な液体でできた水溜りを見て、バカ令嬢は彼の限界を悟る。

 その姿は蟻の巣に水を注ぎ込む小学生と瓜二つだった。

 確かに俺達は勇者に見下されたり有り金奪われそうになったり殺されかけたりデスイーター討伐した証を奪われたりなど、沢山の嫌がらせを受けて来たけど。

 心のどこかで痛い目に遭っちゃえと思っていたけど。

 流石にこれは酷過ぎるのでは?

 同じ男として人間として今の勇者の状況──沢山の人に見られながら絶頂死しかけている──に心底同情してしまう。


「おい、バカ令嬢、今すぐ止めろ。流石にこれはやり過ぎだろ」


「昔、お嬢様が言っていたわ。"ざまぁ"する時は手加減するなって。手加減したらしただけ爽快感が失われるから」


「こんな"世界一汚い"ざまぁ"見せられて爽快感もクソもあるか」


「私的にはあると思うけど……ほら、コウも手を叩いてみて。手を叩く度に、勇者の身体がビクンビクン跳ねるから」


 バカ令嬢が拍手をする度、勇者の口から汚い喘ぎ声が漏れ出る。

 彼女の手が鳴り響く度に、勇者の足元に広がる白い液体は領土を広げていった。

 やばい、このままじゃガチで勇者が死んでしまう。

 彼を助けようと、元凶である元僧侶──ルルの方を見た。


「おい!ルル……!今すぐこいつの……」


 彼女はうっとりするような目で汚い喘ぎ声を出す勇者を見つめていた。


「ルル……さん?」


「うわ……いつも私の事をノロマとか無能とか言って偉そうにしている勇者様が無様な姿を晒している……何か凄く良いかも」


 新しい扉を開きかけていた。

 彼女の艶のある声を聞いた瞬間、俺の背筋に悪寒が走る。

 下手に刺激したら、勇者の二の舞になってしまうかもしれない。

 根拠は皆無。

 けれど、本能がそう訴えていた。

 "これ以上、ルルを刺激するな"と。

 "彼女を刺激したら、俺が次の餌食になる"と。

 それを本能的に悟った瞬間、俺は自身のお口にチャックした。

 ……ごめん、勇者。

 俺、自己保身に走るよ。

 せめて死なないようにここで祈っとく。


「おい!魔法使い!!勇者様の声がどんどんヤバくなっているぞ!!どうすれば良い!?」


「知らないわよ!!私に指図しないで!!!!」


 勇者の淫れっぷりを前にして、混乱している戦士と魔法使い。

 その際、戦士と目が合ってしまったが、俺は即座に目を逸らした。

 

「さて、交渉しましょうか」


 近くにあったテーブルに座りながら、バカ令嬢は勇者パーティに話しかける。


「交渉だぁ!?お前らなんかと交渉する事なんて……」


「ふぎッひぃぃぃいいいい♡♡♡♡♡!!!!!」


 戦士が出した大声により、勇者はまたもや達してしまう。

 それを見たバカ令嬢は顎で勇者を指しながら、話を進めた。


「単刀直入に言うわ。勇者を絶頂死させたくなければ、デスイーターの腕と一緒に有り金全て渡しなさい」


「ふざけ……!……んなよ。誰がその交渉に応じるって言うんだ」


 自分の声で勇者が達しないように大声から小声に切り替える。


「そうよ。あの無能ノロマの魔法の効力は3分程度。このまま何もせずに待っていれば、貴女の交渉に応じなくても済むわ」


「んじゃあ、歌うわ」


「「「「「は?」」」」」


 俺と戦士と魔法使いだけでなく、勇者達の周りにいた周囲にいたゴロツキ共もバカ令嬢の発言に首を傾げる。

 彼女は棒状の何か──恐らくマイクだろう──をどこからか取り出すと、こんな事を言い出した。


「今のそいつは大声を出すだけで達してしまうのよ。もし私が大声で熱唱し続けたら、一体彼はどうなるんでしょうね?」


「「「「「鬼か、貴様!!??」」」」」」」


 この場にいた──バカ令嬢とサディストに目覚めつつあるルル以外──人達の声が綺麗に揃う。

 それの所為で勇者は何連続も達してしまった。


「力尽くで止めて貰っても構わないわ。貴方達が暴れ出したら、私の熱唱以上の刺激が勇者に与えられるでしょうから」


 まだ誰も戦おうとしていない──というより、バカ令嬢の発想にドン引きしている──のに、バカ令嬢は牽制の言葉を言い放つ。


「いつでも襲い掛かって来ても構わないわ。ただ最初に私達に襲い掛かって来た人は覚悟しなさい。今の勇者と同じ目に遭わせるから」


 俺達は白濁の海に沈む勇者を見る。

 彼は絶頂し過ぎて、呼吸困難に陥っていた。

 ……とてもじゃないが、こんな風になりたくない。

 下手したら絶頂死……いや、魔法にかけられた時点で社会的に死んでしまう。

 高い金で雇われたとしても、そんなリスクを背負いたくない。

 俺と同じ気持ちを抱いていたのか、勇者に忠誠心を持ち合わせていないゴロツキ達はゆっくり後退ると、この場から立ち去ってしまった。

 残ったのは戦士と魔法使いのみ。

 彼等は勇者に情があるのか、この場に留まり続けた。


「じゃあ、そろそろ歌うけど……本当に交渉に応じないのかしら?」


 バカ令嬢の目は据わっていた。

 ルルの方を見る。

 彼女は鼻息を荒上げながら、バカ令嬢に襲い掛かる獲物を待ち続けていた。


「ど、どうすんだよ!?このイカレ女、ガチでやるぞ!!」


「し、知らないわよ!!勝手に金渡したら、間違いなく私がパーティから追放されるわよ!!そんなの嫌よ!!甘い汁が吸えなくなるから!!」


「俺だって嫌だ!勇者の側にいりゃあ、金も女も不自由しねぇし!!何でわざわざ勇者に怒られるような事しなくちゃいけないんだよ!!アホらしい!お前がやれよ、アバズレ女!!」


「誰がアバズレ女よ!うどの大木!!あんたなんか無駄に大きいだけで何も役に立っていないじゃないの!!」


「お前だって中級魔術しか使えない能無しじゃねぇか!」


「何ですって!?」


 戦士と魔法使いは仲間割れを始める。

 彼等が言い争う度に、勇者は何度も絶頂した。


「拉致が明かないわ」


 バカ令嬢が指を鳴らすと同時に戦士の口から汚い喘ぎ声が漏れ出た。


「ん゛ほ゛ぉ゛♡」


 発情したゴリラみたいな声が出たかと思いきや、彼も白濁の海に沈んでしまった。

 絶頂死の可能性が極めて高い者が2人になってしまう。

 バカ令嬢は安堵の溜息を零した魔法使いを睨みつけると、どこからか取り出した手持ち花火を弄びながら、こう言った。


「貴女は私の手でやってやるわ。さっさと尻を出しなさい。こいつをぶち込んでやるから」


「勘弁してください。金、全部渡すんで」


 魔法使いは、デスイーターの腕と有り金を全てバカ令嬢に手渡すと、勇者と戦士を置いて、逃げ出してしまった。

 残ったのは俺達と勇者・戦士だけ。


「おい、バカ令嬢、デスイーターの腕を取り戻したし、そろそろこいつらにかけた魔法を解けよ。じゃなきゃ、こいつ死……」


 勇者達の方を見ようとする。

 彼等がいた場所には白い水溜りしかなかった。


「そういや、お前達、過去に俺達の報酬金を奪っていったよな?」


「今の弱りに弱ったあんたらなら、全然怖くねぇ。今まで受けて来た仕打ち、たっぷり返してやんよ」


「有り金全て奪われたみたいだし、俺らから奪った金はお前らの身体で返して貰う事にするわ」


「大丈夫だって。ここまで元栓バカになってりゃ、何しても気持ち良いだろうから」


 いつの間にか、勇者と戦士は屈強な男冒険者──今まで俺達の周りにいて傍観していた──の肩に担がれていた。

 筋肉モリモリの男達は勇者を担いだまま、ギルドから出て行くと、夜の町に溶け込んでしまった。

 多分、勇者達は今まで彼等のヘイトを稼いでいたのだろう。

 今回、俺らにやったように他人から報酬金を奪い取って来たのだろう。

 因果応報という言葉が頭に過ぎった。


「ふっ、これで一件落着ね」


「みっしょん、こんぷりーとです」


 バカ令嬢と腹ペコ僧侶は清々しい表情を浮かべると、やり切った感を醸し出しながらハイタッチする。

 その顔には微塵も後悔というものが存在しなかった。

 遠くからパンを捏ねる音と共に勇者と戦士の卑猥な声が聞こえて来る。

 生々しい想像が脳裏に過ったので、俺は彼等の声が聞こえないように両耳を手で塞いだ。


 ここまで読んでくれた方、ブクマしてくれた方、評価ポイントを送ってくださった方に感謝の言葉を申し上げます。

 次の更新は明日の12時頃です。

 明日も更新するので、お付き合いしてくれたら嬉しいです。

 

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[良い点] マジで徹底的なざまぁでスッキリしたわ 手加減する作者も多いけど、こっちの方が好みだね
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