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一撃と怪力と赤ちゃん1人分の重さ

 ──黒い亀裂が視界一杯に広がると同時に俺の左肩に強い衝撃が走る。

 直撃したにも関わらず、あまり痛みは感じなかった。

 俺に神速の攻撃を放った敵──勇者の顔を見る。

 彼は余裕のある笑みを浮かべながら、鞘に入った剣を振るっていた。

 ……どうやら、さっきの一撃は鞘によるものらしい。

 あれが斬撃だったら間違いなく致命傷を負っていただろう。

 舐めやがって。

 歯を食い縛りながら、俺は牽制のための一撃を振るう。

 勇者は一瞬で姿を消すと、俺達から大きく距離を取った。


「今の一撃で仕留めるつもりだったんだけどね。流石はデスイーターを撃ち破りし者。だが、僕の敵じゃない」


 勇者は粘り気のある笑みを浮かべながら、剣を地面に突き刺す。

 明らかに俺の事を見下していた。

 少しだけ痛みが走る左肩をチラ見しながら、俺は刀を構え直す。

 そして、いつ攻撃が来ても良いように腰を落とした。


「大人しくデスイーターの死骸を僕らに渡しといた方が良いと思うんだけどな。これ以上になると、僕は手加減できそうにない」


 攻撃の予兆である筈の亀裂。

 それが機能しないくらいに勇者の攻撃は速かった。

 正に神速。

 今の俺の実力では、あの速さを何とかできそうにない。

 

「なるほど、骨が折れていないのを見るに"素早さ"だけを上げたのね」


 バカ令嬢──リリィは俺の左肩を見つめながら、勇者を煽る。

 すると、勇者の背後から彼の仲間が駆けつけた。

 勇者の優勢を見るや否や戦士と魔法使いは得意げな表情を浮かべる。

 僧侶らしき少女は俺達から目を背けた。


「なるほど。だから、直撃したにも関わらず、音が軽い訳だわ。もしかして、勇者様は剣を何とか振るえるくらいの筋力しかないのかしら?」


 リリィは何かに気づいているのか、それとも勝算があるのか、自信満々な態度を取っていた。

 

「そんなに力が見たいのなら見せてやろうか?」


 彼女の煽りにムッとした勇者は腰を少しだけ落とす。

 俺はいつ来ても良いように戦闘態勢を取った。


(当たるかどうか分からないけど、"風斬(ふうぎり)"を撃つしか──!?)


 そんな事を考えている内に、勇者の足元に赤く輝く魔法陣が展開される。

 赤い光を身に纏った勇者を見て、彼に何かしらの変化が起こった事を理解した。

 意識が勇者の背後にいる僧侶に向く。

 あの子の身体からも赤い光が漏れ出ていた。

 即座に把握する、あの子が勇者に何かしていると。

 ──空間に黒く太い亀裂が俺の身体に覆い被さる。

 さっきの攻撃と違い、空間に黒の亀裂が走ると同時に攻撃は繰り出されなかった。

 赤の亀裂が俺に左逆袈裟斬りを繰り出せと命じる。

 赤の亀裂に従うまま、俺は刀を振るった。

 俺と勇者の間に火花が舞い散る。

 俺の斬撃を受けた勇者の剣は真っ二つに折れてしまった。


「んなっ!?」


 俺は地面から飛び上がると、勇者の右側頭部を狙って、回し蹴りを放つ。

 俺の蹴りを受けた勇者は無様に鼻水と涎を噴き出すと、通路の壁に激突してしまった。


「ぐ、あぁ……お、お前ら、何をした……!?」


 さっきの余裕のある様子から一転、勇者は憎悪に満ちた目で俺を睨みつける。

 俺の蹴りが効いたのだろうか、彼は立ちあがろうとしなかった。

 多分、頭に強い衝撃を受けて立ち上がれなくなったのだろう。

 たった一撃で勇者がノックダウンするとは思わなかったので、俺は大いに戸惑ってしまった。


「私は何もしてないわ。コウもいつも通り剣を振るっただけ」


「な、なら、何で僕は膝を突いている……!?さっきまで優勢だったのに!!」


 勇者は悔しそうに床を殴りつける。

 彼が無造作に放った拳は、床に亀裂を走らせた。

 先程よりも彼の腕力が上昇していた事に気づく。

 もしも先程この力で殴打されていたら、間違いなく俺の肩は複雑骨折していただろう。

 さっき勇者の足元に展開された赤い光を放つ魔法陣と赤い光を体外に放出させていた僧侶らしき少女の姿を思い出す。

 頭の回転が鈍い俺でもようやく答えに辿り着いた。

 つまり、勇者はあの僧侶に──


「ええ、そうよ」


 俺の思考を読んだリリィはシリアスな雰囲気を保ちながら俺に告げる。


「私のおっぱい、大体赤ちゃん1人分の重さと同じくらいだわ」


「何言ってんだ、お前」


 全然俺の思考を読めていなかった。

 というか、何の話をしているんだ、こいつは?


「毎日赤ちゃん1人を肩に乗せて生活していると言っても過言じゃないって話よ」


「すみません、今、シリアス展開なんてまだお口閉じて貰っても良いですか?」


 今さっきまで何を考えているのか、バカ令嬢の所為で忘れてしまった。


「お前ら、バカにしてんのか……!?」


 フラフラになりながら立ち上がる勇者。

 俺は即座に刀を振おうとした。

 ──火の海に沈む死体の山が脳裏を過ぎる。

 それにより人を斬るという行為に嫌悪感を抱いてしまった。

 闘わなければ殺される。

 それを頭で理解しているにも関わらず、今まで魔獣を斬り殺して来たにも関わらず、肝心な所で躊躇いを覚えてしまった。

 その所為で隙が生じてしまう。

 そんな隙だらけの俺の顔面目掛けて、勇者は全力の右ストレートを放った。

 ここまで読んでくれた方、過去にブクマしてくれた方、評価ポイントを送ってくださっ方、そして、新しくブクマしてくれた方に厚くお礼を申し上げます。

 皆さんのお陰でブクマが60件超える事ができました。

 本当にありがとうございます。

 達成できるかどうか分かりませんが、今月はブクマ100件達成できるように頑張りたいと思います。


 

 前々から告知していた1万PV達成記念キャンペーンの告知をこの場を借りてやらせて貰います。

 6月4日金曜日から6月11日金曜日までの期間、毎日12時頃に最新話を投稿致します。

 日時と時間の変更はないと思いますが、もし変更が生じた場合は最新話の後書き・活動報告・Twitter(雑談垢:@norito8989・宣伝垢@Yomogi89892)で告知するつもりです。

(まだ来週の木曜日更新のお話と金曜日更新する予定のお話が書きかけですが……)


 

 次の更新は6月4日金曜日12時頃に予定しております。

 これからも完結目指して更新していきますのでお付き合いよろしくお願い致します。

 

 

 

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