交差と遠退く音と青い点
今回のお話は先日2月7日に投稿した『穴の外と混沌と青い点』の後半部分を加筆修正したものです。
なので、2月7日に更新したお話を読んでくれた方には見覚えのあるお話になっていると思いますが、もう一度読んでくれると嬉しいです。
これからもお付き合いよろしくお願い致します。
また、次の更新は先日の告知通り、2月9日水曜日22時頃に予定しております。
平行世界の俺──カミデラ・コウが木刀を振るう。
俺が狙うは血だらけのフクロウの獣人──カミナガレ・コウ。
平行世界の俺はカミデラの木刀を刀で受け止めると、一歩だけ後退した。
「てめえ……!そんな理由でリリィを巻き込んだのか……!」
「ええ、それで勝つ確率が上がるのなら」
カミデラが放つ斬撃をフクロウの獣人はボロボロになった身体で避け続ける。
刀を振る元気がないのか、フクロウは足捌きだけで回避していた。
今時の大学生みたいな風貌をした俺──カミデラがキレている理由を何となく察する。
恐らく俺は本物のリリィをこの場に連れて来たフクロウに対して怒っているのだろう。
カミデラが怒るのは当然だ。
だって、俺は本物のリリィに長生きして貰いたいのだから。
「あの狐を野放しにしたら、何れ貴方が守りたがっているリリードリ・バランピーノも巻き込まれるんですよ?なら、今、ここで彼女の力を借りた方が良い。神器である彼女にしかあの神造兵器を扱えませんから」
「正論っぽい事を言っているけど、こんな状況になったのは、テメェがやらかしたからなんだろ……!?自分の失態を人に押しつけて恥ずかしくないのか、お前は……!!」
大学生の俺とフクロウの獣人の剣戟が更に激しいものになる。
俺達の瞳に黒い狐という脅威は映し出されていなかった。
──目の前の自分を否定する。
その一心で俺と俺は剣を交える。
俺達の闘いは高度かつ上等なものだった。
けど、俺にとって俺達の闘いは不毛かつ無益なもののように見えた。
俺達の闘いを止めようと、俺は足を前に動かそうとする。
その時だった。
地面が横に大きく揺れたのは。
「──っ!?まさか!?」
『なに!?何が起きたの!?』
『まさか気絶したルルちゃんのお腹が鳴っているんじゃ、……』
『失敬な!私のお腹は地鳴りみたいな音しないですぅ!』
敵が動き出した事を認知した俺は、魂の抜けたレイの側に転がっている籠手──リリィとルルとレイの魂が入っている──を左腕に着ける。
『ご主人が私達を着けた……!?実質、これ4ぴ……』
「言わせねえからな」
『いいえ、違うわレイ。私達の魂が入っている籠手とコウの肉体が密着した。これは生殖行為よりも密接かつ卑猥な行為と言っても過言じゃない……!』
「過言だよ」
『コウさん!貴方の太くて立派なものが私達の中を貫いています!』
「だから、どうした」
『でも、こんだけ密着している癖に何も感じないっすよねー。いつもだったら、モキュモキュしてもおかしくないっすのに』
『あら?私は身体がなくてもモキュモキュしているわ。いい?レイ、モキュモキュってのはね、身体が感じるものじゃないのよ。心で感じるものなのよ……!!』
『すみません、モキュモキュって何ですか?』
『モキュモキュはモキュモキュっすよ、ほら、一緒にモキュモキュー!』
『『モキュモキュー!!』』
「うるせええええええええ!!!!」
ニチアサの玩具並に煩い籠手を地面に投げつける。
『あら?コウ?私達と一心同体になってモキュモキュしちゃった?』
『やっぱ、ご主人も男っすね!』
『うぇるかむ、モキュモキュワールド!』
「お前ら、粗大ゴミに出してやろうか!?」
「だから、ふざけている場合じゃないっての!」
自称神様に後頭部を叩かれる。
いや、悪いのは俺じゃないから。
姦しいこいつらの所為だから。
俺が心の中で言い訳をしていると、地面から響く轟音が徐々に小さくなる。
いや、音が小さくなっているのではなくて、音が遠退いている……?
「……っ!?まさか、あいつ、下界に向かう気じゃ……!?」
──下界に向かっている。
その一言で俺は震災の時の記憶──両親と姉が火の海に呑まれる光景を思い出す。
ヤバい。
アレが下界に降りてしまったら、取り返しのつかない事になる──!!
「自称神様っ!レイとルルの身体を頼む!安全な所に避難させといてくれ!」
「ちょ、あんた1人で行くつもり……!?」
「この中でアイツと闘えるのは俺だけだろ!」
余力がない事を見通された自称神様は表情を強張らせる。
俺の読み通りだった。
恐らく自称神様はこの街にいる住民を15分先の未来に飛ばしたり、俺達のサポートをしたりで力を使い果たしたんだろう。
なら、この場で黒い狐と闘えるのは俺しか残っていない。
騎士団長もフクロウも満身創痍。
大学生の俺は空を飛ぶ手段を持っていない。
戦力だったルルとレイも籠手の中に魂を封じられた。
彼女達の魂が籠手に封じれている以上、この場で闘えるのは俺しか残っていない。
『ちょ、コウ!?1人で大丈夫なの!?』
『そうですよ!みんなでダメだったのを1人で倒そうとするのは無茶です!』
『ご主人!現実を見ましょう!これは1人でどうにかできるものじゃないっす!』
「うっせー!こんな時に正論吐いてんじゃねぇよ!!いつもは言わない癖に!!」
『『『私達の事を何だと思っているの!?』
「バカ!腹ペコ!変態!!」
『『『それほどでも』』』
「褒めてない!!」
そう言って、俺は穴の中に飛び込んだ。
足元を見る。
爆炎も爆煙は跡形もなく消え去っていた。
俺の視界に映るのは小さな青い点のみ。
瞬時に把握する。
あの青い点が青空である事。
そして、黒い狐が青空の中に飛び込んだ事を。
「……っ!!」
太刀から出た黄金の風を逆噴射する。
黄金の風の風力により、落下速度を更に速めた俺は黒い狐──純粋悪"九尾"を追って、青空の中に飛び込んだ。




