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決闘と私怨と戦士と

[前回までのあらすじ]

・バカ令嬢、勇者達に喧嘩を売る。

「決闘だ!お前らに決闘を申し込む!!」


 バカ令嬢に殺されかけた勇者の仇を討つため、勇者の仲間と思わしき戦士風の大男が俺達に決闘を申し込んだ。

 その所為で、今、俺はギルド前にある大通りに立っている。


「ええ、受けて立つわ!コウが!!」


「何で俺なんだよ」


 ナチュラルに責任転嫁しようとするバカ令嬢にツッコミの声を上げる。


「良いじゃない。勇者には劣ると思うけど、自分の実力を確かめる事ができると思うわよ」


「いや、なんでお前が売った喧嘩を俺が買わなきゃいけないんだよ」


「……あいつらがこの町の治安を乱しているからよ」


 ボソッと俺にしか聞こえない小声で彼女は囁く。


「風の噂によると、あの勇者達、勇者に任命されてから、好き勝手やってたみたいよ。他の人のパーティから成果を強奪したり、町娘を強姦したり。気に食わないからという理由だけで通行人をボコボコにしたり、それはもう悪虐の限りを尽くしているみたいらしいの」


「んなもん、ただの噂だろ?本当かどうか分からない。もしそれが本当だったら、誰かが裁いている筈だ」


 周囲の野次馬達が腫れ物であるかのような態度で俺達と勇者達を見つめる。

 その瞳には恐怖と困惑しか映っていなかった。


「裁ける訳ないじゃない。勇者はあの最強にして最高の騎士アランドロンに匹敵する実力を持つ圧倒的強者なのよ。並大抵の相手が裁こうとしたら、逆に返り討ちに遭ってしまうわ」


「……ここには法律ってもんがないのか」


「法律が守るのは偉い人達の安寧よ。平民はそのついでに守られているに過ぎないわ」


「おい!何こそこそ喋ってやがる!!??決闘だって言ってんだろ!!!!」


 戦士風の大男は、その体躯に見合った大声で俺らの注意を惹きつける。


「どっちにしろ、噂通りの人物なら、この決闘は避けられないわ。たとえ逃げたとしてもあの手この手卑怯な手を使って地の果てまで追いかけて来ると思うわよ、あいつら」


「何でそこまで理解しているにも関わらず、お前はあいつらに喧嘩売ったんだよ……」


「偉そうな態度が気に食わないから」


「私怨じゃねぇか」


「無視、してんじゃねぇよっ!!!!」


 怒りがピークに達したのか、大男は再び俺に巨大な斧を投げつける。

 俺はそれを弾き飛ばすため、腰に着けている刀を抜こうと──したが、右手は宙を切ってしまう。


「あ、やべ。刀、ギルドの中に忘れてた」


「はあああああああ!!!???」


 隣にいたバカ令嬢の腕を掴んだ俺は、ギリギリの所で飛んできた斧を避ける。

 斧は豆腐を砕くような感じで、地面を粉々に砕くと、大男の手の中に戻った。


「おい、バカ令嬢。今すぐギルドの中にある俺の刀を取って来い。じゃないと死ぬ。余裕で死ねる」


「刀がないなら、敵の武器を奪えばいいじゃない」


「お前、本当は俺の事、嫌いだろ」


「ていうか、取りに行こうにも取りに行けないわよ。ほら、見て」


 そう言って、バカ令嬢はギルドの出入り口付近を指差す。

 そこには俺が持っていた刀を持つ女僧侶──勇者の仲間が立っていた。


「あいつ、私達がギルドから出た瞬間、貴方の剣を確保していたわ。抜け目ないというかなんというか」


「え、……俺、あいつと素手で戦わなきゃいけないの?」


「大丈夫、貴方が闘っている間に剣を回収してみせるわ」


「いや、俺があいつに殺されるんだが」


「だ・か・ら!決闘するって言ってんだろ!!無視してんじゃねぇぞ、コラあああああああ!!!!!!」

 

 また大男が怒り狂い出したので、俺は大人しく丸腰のまま、彼の前に出る。


「やっと、出てきたか!!このクズ野郎!!じゃあ、決闘始めんぞ!!」


「……その前に俺の武器返して欲しいんだけど」


 僧侶らしい格好をした女性を指差しながら訴える。

 戦士風の男は俺の訴えを鼻で笑うと、バカにしたような態度で耳障りな大声を腹から出す。


「はっ!返す訳ねぇだろ!!お前の武器で俺が傷ついたらどう責任取るんだよ!!??」


「は?さっき決闘って言ってたじゃねぇか」


「俺の言う決闘ってのはな!俺が一方的に蹂躙できるものを決闘って言うんだよ!!」


 ここにリンチって言葉は存在しないのか?

 呆れた言い分を平然に言い放つ大男の言葉を聞いて、思わず溜息を溢してしまう。

 もしかしたら、デカそうな図体の割に肝っ玉が小さいのだろうか。

 ちょっとだけ確かめてみる事にする。


「俺はお前が負けた時の事を心配してんだ。丸腰の相手に負けてみろ。お前、2度と偉そうな態度を取る事ができなくなるぞ。……まあ、お前がそれでいいんだったらやるけど」


 自信満々に言ったお陰で、大男を騙す事ができた。

 彼は目を泳がせると、震えながら声を張り上げ、俺に質問を投げつける。


「……ぎ、ギルドカードを見せろ!!見せないと、こ、殺すぞ!!」


 俺にとってゴミでしかないギルドカード──このカードを持っていても依頼を受ける事ができないため──を投げ渡す。

 大男は黒塗りだらけの俺のギルドカード見た途端、自信を取り戻してしまった。


「はっ!ステータス欄、殆ど黒で埋め尽くされてやんの!それに、冒険者ランクも最低のFだし!お前、よくそれで丸腰で十分とか言えたよな!ステータスが表示されないくらい雑魚じゃねぇか、お前はよぉ!」


 俺のギルドカードを投げ捨てながら、大男は無駄に声を張り上げる。


「なあ、知っているか?俺の冒険者ランクはSSSなんだぞ!!SSSってのはな、この国で十数人しかいない超エリートなんだぞ!!お前みたいなクソ雑魚冒険者が何人かかって来ようが勝負にならないくらいに最強なんだよ!!分かってんのこ!?分かってて偉そうな口叩いてんのか、このクソ雑魚が!!」


 視界に薄く黒い亀裂が走り始める。

 このままでは本当に丸腰で闘わないといけなくなると思った俺は、バカ令嬢に助けを求めた。

 バカ令嬢は俺の刀を奪った僧侶らしき女とキャットファイトを繰り広げていた。

 ……彼女は当てにならない事に気づく。


「余所見してんじゃねぇよ!!」


 溜息を吐き出そうとした瞬間、大男が重そうな戦斧を抱えたまま、俺との距離を詰め始める。

 大男は瞬く間に俺との距離を詰めると、俺の脳天目掛けて、戦斧を振り下ろそうとした。


 いつも読んでくれている方、ここまで読んでくれた方、ブクマしてくれた方、評価ポイントを送ってくださった方、そして、新しくブクマしてくれた方に感謝の言葉を申し上げます。

 次の更新は4月14日水曜日13時頃に投稿致します。

 暫く週1ペースで更新していきますが、ちゃんと完結させるのでよろしくお願い致します。

 同時連載している「価値あるものに花束を」は毎日更新し続けていますので、もし読んでいない方はそちらを追ってくれると嬉しいです。

 これからも完結までお付き合い頂けるように頑張りますのでよろしくお願い致します。


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