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神域と強化と魔王

「なあ、ルル。お前の魔法でレイを自称神様レベルに強化する事はできるか?」


 思いついた疑問を吟味する事なく、ルルに尋ねる。

 彼女は困ったような表情を浮かべると、少しだけ首を傾げた。


「無理ですね。レイさん程度の実力では、幾ら魔法で強化しても、あの神様レベルにする事はできません」


「シンプルに傷つくっす、その罵倒!違うっす!私が求めている罵倒はそういうのじゃないっす!」

 

「ですが、……そこの人なら自称神様レベルにする事ができます」


 傷つく変態奴隷志願娘レイを気にかける事なく、ルルは"そこの人"を指差す。


「くっくっくっ、大魔王である我を"そこの人"扱いか。くっくっくっ」


 "そこの人扱い"された大魔王は不敵な笑みを浮かべ続ける。

 その姿には少しだけ哀愁みたいなものが漂っていた。


「あんた、失礼過ぎでしょ!これでも魔王なのよ、この人!!」


「そうだ!そうだ!オレの上司を"そこの人"扱いするな!これでも魔王なんだぞ!!」


 サキュバス クイーンとオークキングは、魔王を"そこの人"扱いするルルに敵意を剥き出しにする。

 というか、自分達の上司を"これでも"扱いするの酷過ぎだろ。


「五月蝿いです。乳首から白いビーム発射する淫乱女風情が。隣にいる股間から白いビームを発射する豚男とまぐわっていろです」


「乳首から白いビーム発射できないんですけど!?」


「オレも股間から白いビーム発射できねぇよ!」


「はっ、経産婦と精通済みが何を言っているんです。──貴方達には立派なものがついているじゃないですか」


「いや、私、妊娠してないし!」


「オレも精通していないし!」


「「「「いや、流石にそれは無理があるだろ/でしょ/っすよ」」」」


 彼がエロ本でニャキニャキしている事を知っている俺とレイとルルとサキュバスクイーンは、ほぼ同じタイミングで同じようなツッコミを繰り出す。

 ちなみにユニコーンジャックはルルに恐怖しているのか、口を開こうとしなかった。

 ……無理もない。

 だって、あんな目に遭わされたのだから。

 

「くっくっくっ、若人。貴様は一体何をやろうと考えている?」


 この中で1番空気を読む事ができる魔王は不敵な笑みを浮かべながら、話を元に戻そうとする。


「神域とやらに至る。……そこに至らないと、最悪の場合が起きた場合に対処する事はできない」


 "神域"とやらに心当たりがないのか、魔王達は首を傾げる。

 

「そのためには強い奴と闘う必要がある。……強くなるには、強い奴と闘うのが1番の近道だからな」


 自称神様が水の都で俺達と戦った理由を思い出す。

 あの時、自称神様は闘う事で俺を神域とやらに至らせようとした。

 神域とやらが何なのか分からないが、多分、あの心器(アニマ)ってのを扱えるようになる事が神域に至るって事なんだろう。

 確証はない。

 けど、あの心器(アニマ)とやらを扱えるようになった方が良い事だけは間違いない筈だ。


「くっくっくっ、貴様が言いたい事は何となく理解した」


 そう言って、魔王は俺の目を真っ直ぐ見据える。


「要は貴様と闘えば良いのだな。良いだろう、この大魔王の肩、貴様に貸してやる」


「……良いのか?怪我すると思うぞ」


「くっくっくっ、それで真王を討つ事ができるならば、傷の一つや二つ、安いものだ」


 大胆不敵な笑みを浮かべながら、魔王は指を鳴らす。

 その瞬間、俺とレイとルルは突如発生した黒い穴に飲まれてしまった。

 

「うおっ……!?」


 穴の外に放り出される。

 気がつくと、俺達は草原に立っていた。


「ここは……?」


 周囲を見渡す。

 俺の記憶が正しければ、ここはシャニア町──俺がこの浮島に来て初めて訪れた町。そこの冒険者ギルドでデスイーター討伐依頼を受けた──近くの草原だ。

 

「くっくっくっ、あそこは我の部下が沢山いるからな。誰も巻き込まない所にワープさせて貰った」

 

 そう言いながら、魔王は虚空から剣を取り出す。

 先程、オークキングが取り出した剣と同じくらいのものだ。


「ここなら好き勝手暴れても問題ないだろう。行くぞ、生き急ぐ若人よ。──貴様の力、私に見せるが良い」


「ルル、魔王の強化を頼む」


 瞬間移動した事実に今でも困惑しているルルに俺はお願いする。


「レイ、ルルの魔力が切れたら魔力を供給してやってくれ。前にやっていたから出来るだろ?」


「ちょ、ご主人、マジで魔王(おとうさん)と闘うっすか!?こう言っちゃ身内贔屓かもしれませんが、ウチのおとん、ガチで強いっすよ!そんな奴にルルちゃんの魔法使ったら……」


「大丈夫だ」


 指を鳴らしながら、俺は魔王の方に視線を向ける。

 鳴らした指から黄金の風が少しだけ漏れた。 

 その少しだけ漏れた黄金の風を剣の形にする。 

 が、今の俺では出せる黄金の風が少なく、短剣の形にするので精一杯だった。


「どんな壁があろうが関係ない。それでも壁があるんだったら、全部まとめて──」


 短剣の形にした黄金の風を右手で握り締める。

 そして、ルルの魔法を受けた魔王に向かって突撃を開始した。


「──ぶった斬ってやる!!」


「その意気、良しっ!」


 魔王が指を鳴らすと同時に、空から無数の岩塊が振り落ちる。

 

「うおっ……!?」


 空から落ちて来た無数の岩塊は瞬く間に俺の周囲にあった草原に減り込んでしまった。

 ほんの数秒で草原だった場所が凹凸しかない荒野に変わり果ててしまう。

 まだルルからの魔法(バフ)を貰っていないにも関わらず、魔王は今の俺よりも強かった。


「あ、ごめん、タンマ……」


 思っていた以上に魔王が強かったので、俺は少し時間を貰おうとする。

 が、蛙の子は蛙と言うべきか。

 俺の声が聞こえていないのか、魔王は次の攻撃を繰り出した。


「ぎゃあああああ!!!!!」


 情けない悲鳴を上げながら、魔王が繰り出す攻撃を避け続ける。


「ご主人!さっきの啖呵はどこ行ったっすか!?」


「頑張ってください、コウさん!今から魔王を超強化するんで!」


「待て!今、魔王を強化して貰ったら、死ぬ……!」


 さっきカッコつけたのを後悔しながら、俺は魔王の攻撃を避け続ける。

 ……果たして俺は自称神様レベルに到達する事はできるだろうか。

 そんな自信なさげな事を考えている間にも時は進む。


 ──神堕しが行われるまで、残り2日。

 いつも読んでくれている方、ここまで読んでくれた方、ブクマしてくれた方、評価ポイントを送ってくださった方、そして、新しくブクマ・評価ポイントを送ってくださった方、本当にありがとうございます。

 次の更新は明日の20時頃に予定しております。

 明日だけでなく明後日も更新すると思うので、お付き合いよろしくお願い致します。

 

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