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金欠と黒塗りのギルドカードとドヤ顔

[前回までのあらすじ]

・バカ令嬢を助けたコウ。

・バカ令嬢、めちゃくちゃチョロい(?)事が判明。

 浮遊大陸『アルカディア』に来て早数日。

 俺がバカ令嬢──リリードリ・バランピーノと旅を始めて早数日。

 延々と続く木々の群れを越えた俺達は、ようやく最初の町──シャニアに辿り着いた。


「や、やっと辿り着いた……」


 この数日、魔獣と呼ばれる異形の獣と闘い続けた俺は、町に辿り着くや否や、疲れによりその場に座り込んでしまう。

 町の中は背丈が低い煉瓦造りの家で埋め尽くされていた。

 その家も最初に訪れた町の家よりも薄汚れており、良く言えば生活感というものが漂っている。

 パッと見、あまり裕福な町には見えなかった。


「で、バカ令嬢。これから先、どうするんだ?」


「とりあえず、"西の果て"までかなり距離があるから馬車を確保しましょうか。乗り物があれば、半月くらいで着くでしょうし」


「そんなに狭いのか?この浮遊大陸ってのは」


「さあ?壁の外に出たの、初めてだから分かんない」

 

 とりあえず、俺はバカ令嬢と共に町を歩きながら馬車を探し始める。

 馬と馬車を貸し出してくれる業者は、すぐに見つかった。

 が、最大の問題は業者から金額を提示された後に起こった。


「お、……お金が圧倒的に足りないわ……!!」


 馬車だけ借りるなら十分過ぎるお金を彼女は持っていたが、馬車を引っ張る馬や馬を操縦する御者さんもレンタルするとなると、全然お金が足りなかった。


「で、どうすんだよ?歩いて行くか?」


「それは非現実的過ぎるわ。足怪我したら進めなくなるし。とりあえず、ギルドで金を稼ぎましょう。今のまま旅をしていたら、半月くらいで資金尽きると思うわ」


「ぎ、ギルド……?それって、冒険者ギルドの事だよな……?」


「ええ、街の外に生息する魔獣を狩るお仕事よ。幸い、この町にギルドがあるみたいだし、登録だけ済ませましょ」


 そう言って、彼女に連れられるがまま、俺はこの町にあるギルドに辿り着いてしまう。

 初めて見るギルドは、西部劇でよく見る酒場みたいな所だった。

 アルコールの匂いがするから、酒も提供されているのだろう。

 ギルドの中に入る。

 建物の中には多種多様な人達がいた。

 魔法使いみたいな格好をする者、騎士みたいな格好をする者、武闘家みたいな格好をする者に、僧侶みたいな格好をする者など。

 ここが浮遊大陸じゃなければ、コスプレ大会でも開いていると錯覚するくらい、建物の中には浮世離れした格好をした人達が屯していた。

 俺は自分の格好とバカ令嬢の格好を見る。

 ここ数日の旅により、俺が着ていた夏用のジャージは汚れに汚れ、今、俺は彼女が用意した布服を着ている。

 バカ令嬢は俺同様、安っぽい衣服に身を包んでおり、とてもじゃないが、場に即した格好とは言い難かった。


「なあ、バカ令嬢。俺達、浮いてないか?」


「浮いているのはこの地面よ」


「物理的な話をしてるんじゃねぇよ、雰囲気的な話をしているんだよ」


「いいのよ。あんな装備しなくても、私達強いから」


 彼女は堂々とした様子で奥のカウンターに向かい始める。

 この世界について、よく分かっていない俺は大人しく彼女に着いて行く事にした。

 ギルドの登録に関してはあっさり終わった。

 受付嬢の簡単な説明を聞いた後、必要な書類に記入するだけ。

 言っちゃ何だが、バイトの面接よりもチョロかった。

 あと、ここの公用語は下界と同じく、日本語だった。

 なので、特に労する事なく、俺は登録を済ませてしまう。


「登録完了しました。では、これをどうぞ」


 そう言って、受付嬢は俺達に免許証みたいなカードを手渡す。


「……これは?」


 受け取ったカードをじっくり見つめる。

 カードには番号と英語しか書いていなかった。

 名前欄みたいなものもない。

 恐らく、この登録番号が名前みたいなもんだろう。

 囚人と同じ扱いをされているみたいで、あまり気持ちの良いものではなかった。


「これはギルドカードです。このカードに触れると、お2人のステータスが表示されます。このカードがないと、依頼を受けられなくなるので無くさないようにしてください」


 受付嬢に促されるがまま、俺達はカードに触れる。

 最初にカードに数値が表示されたのはバカ令嬢の方だった。


「ねえ、この数値は平均よりも高いの?それとも低いの?」


「ええと、見せてください。……はい、平均よりも少し高いくらいです」


 平均よりも少し高いと言われた瞬間、バカ令嬢は無言でドヤ顔を披露する。


「でも、どれもこれも中途半端ですから、専用武器を持つ事はできませんね」


「専用武器?」


「はい、ステータスが一定の水準を超えていたら使う事ができる武器の事です。ほら、あちらの魔法使いが杖を持っているじゃないですか。アレを使えば魔法の威力を倍増する事ができるんですよ」


「なるほど、自分の長所を更に伸ばす事ができる武器って事か」


 器用貧乏であるため専用武器を扱う事ができないバカ令嬢を見る。

 彼女はドヤ顔のまま硬直し続けていた。


「にしても、登録時に専用武器を渡せない人間なんて初めて見ました。普通の人だったら、どこかしらの部分で突出しているため、この時点で専用武器を渡せるのですが……」


 どうやら普通の人は、ギルド登録時に専用武器を貰うらしい。

 器用貧乏過ぎて、専用武器を貰えないバカ令嬢はドヤ顔のまま固まり続けた。

 ……ちょっと憐れに思ったので、俺は彼女から目を背けると、自分のギルドカードを見る。

 ギルドカードの数値が入力される欄は、全て真っ黒に染まっていた。

 

「なっ……!?何ですか、その欄は!?」


 受付嬢は俺の手から奪い取ると、真っ黒に染まった数値欄を凝視する。

 そして、何回か俺のギルドカードを叩くが、数値欄は真っ黒に染まったままだった。


「し、失礼しました。どうやら壊れたみたいです。新しいのを持って来ます……!」

 

 奥の部屋に行ってしまった受付嬢を見届けた俺は、隣にいるバカ令嬢の横顔を覗く。

 彼女はドヤ顔したままだった。


「……いつまでドヤ顔するんだよ」


「……ドヤ顔を引っ込める機会を見失ったのよ」


 いつも読んでくれている方、ここまで読んでくれた方、過去にブクマしてくれた方、そして、新しくブクマしてくれた方、評価ポイントを入れてくださった方に感謝の言葉を申し上げます。

 本当にありがとうございます。

 前作よりも早いペースでブクマが増えているので、皆様には頭が上がりません。

 厚くお礼を申し上げます。

 これからも皆様が楽しめる作品を作っていくので、完結までお付き合い頂けると嬉しいです。

 

 あと、この場を借りて更新について告知致します。

 本作品は4月7日水曜日から週1ペースで更新していきたいと考えております。

 『価値あるものに花束を』の方は毎日更新し続けますので、もしよろしければこちらもお読みください。(https://ncode.syosetu.com/n7025gs/)


 話のストックが増え次第、毎日更新に戻すとので、少々お待ちください。

 これからもよろしくお願い致します。

 

 

 

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[良い点] >「……ドヤ顔を引っ込める機会を見失ったのよ」 wwwwwwwww サマル「いいじゃねーかよ。器用貧乏で何が悪い
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