3,驚くべき力
ちょっと長めだけど誤字脱字などは報告よろしく。
感想なども聞かせて下さい。
ちょっと眠い(´・ωゞ)
〜王宮前広場にて〜
「では、このアンケートに答えて、試験官に渡して下さい。試験官から合格をもらえたら、帰ってよろしい。」
なんだか偉そうな話し方をする人だけど、貴族っぽいから口答えはしないでおこう。
「ねえサミー、私まだやること決まってないんだけど、どうしよう…。」
「だから、思いやりと優しさを活かしたものにすればいい。シェリーも見つかってないんだし。」
そうか!私の意志の強さを利用して、シェリーを探すことを目的にすればいい!
私はアンケートにサラサラと書き、最後に『キャロル・ジャクソン』と署名して、試験官に渡した。
「『行方不明の姉を探して旅をする』だと⁉はっははは…」
試験官は嘲笑した。いらっときたが、
(ここは、我慢、がまん。)
とぐっとこらえた。
それを聞いて、足を止めて振り返った人がいたのを感じた。
でも、振り返るわけにも行かないし…
「稼ぎは?」
「冒険者をやって稼ごうかと。」
試験官の言い方にあんまりいらっときていたので、即答してしまった。
しまった。頭の片隅でちょっと考えていただけなのに、目的にしちゃったら変えられない!
「あの、ちょっと…」
「よろしい。では次の人。」
無理やりどかされた私に、サミーが近づく。
「なあ、誰と冒険するんだ?一人じゃ危ないぞ。」
「目的にしちゃったから、仕方ないよ。誰か相棒を見つけなきゃ。」
そう、冒険者の人、冒険者志望の人、冒険者になりたい人、…??
なんかおかしい。
なりたい人がすぐそこにいるような…。
「とにかく俺は、冒険者になるために…」
「あー ‼ いたー ‼」
私は思わず声を上げた。周りにいた人はみんな振り向いた。
「…へ?だれが?」
「ねえサミー、私の相棒になってよ!」
「それってつまり、俺達がパーティーを組むってこと?」
「そうだと思うけど?」
「へえ。俺なんかでいいんだ。意外。」
サミーは、私が嫌がると思っていたらしい。
その声を聞いて、私は心配になった。
「やっぱ、私じゃ、やっぱだめだよね。ドジだし、間抜けだし…」
「い、いや別にね、構わないんだけど…」
「よし、じゃあ、決定!」
俺、これからどうなっちゃうんだろう…サミーは小さくため息をついた。
「とりあえず、出発したらまず、ユニオンに行こう。」
「ユニオン?ユニコーンの仲間?」
サミーは、吹き出した。
もう、人の話に向かって、失礼ね!
「違うよ。冒険者をやってる人の同業組合のこと。よく本なんかじゃ、『ギルド』っていうのもあるけど、ここじゃあ『ユニオン』が普通だよ。」
へえ。知らなかった。サミーも下調べしてたのか。本気でなりたかったんだ。
キャロルはサミーに感心していたが、自分の首の後ろに盗聴器が隠されているとは知らなかった。
「へえ。冒険者ユニオンね。先回りしなくちゃ。」
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⚠一部サミー視点
「いっただっきまーす」
朝からこんなに豪華なもの、食べてもいいんだろうか…
ちょっと心配になるけど、まあ、いっか。
「サミー、ちょっと来て。」
ルビーが自分の寝室に呼んだ。
母さん?なんの用だろう。
母さんはベッドに座っていた。の隣に座った。
「座ってくれる?」
俺は母さんの隣に座った。
「最後に重い話でごめん。でも、2つの秘密を守るって約束して。」
「うん。約束は破らない人だから大丈夫。」
母さんの顔がちょっと和らいだ。よかった。
「まず一つ目は、あなたは王の隠し子だということ。」
は⁉
え?え?ええ?
母さんが言ってた浮気者って、あの王のことだったのか⁉
豆鉄砲を食らったような顔をしている俺の気持ちを察したのか、母さんの手が俺の頭を撫でる。
「誰にも言ってはいけないわ。キャロルにも、サファイアにも。」
今までずっと母さんは、我慢してたのか。秘密を誰にも言わないことなんて、そうかんたんにできることじゃない。
「二つ目は?」
「…それはキャロルとサファイアと一緒に聞きましょ。」
どうやらこっちのほうが重い話らしい。
母さんは立ち上がった。
俺も後ろについてリビングへ行った。
スマホをいじる私、キャロルはマップというアプリでユニオンの場所を調べていた。
ここをまっすぐ北に行って、魔物の森をまっすぐ北に抜ければ、ユニオンにつくんだけど…
問題はこの魔物の森。
あそこは私のパパ、すなわちアルバートが死んだところ。
できれば避けたいけど、空を飛べない限りは避けられない。
ルビーと共に戻ってきたサミーに相談することにした。
「ユニオンに行くには、魔物の森を抜けなきゃいけないんだけど、どうする?回り道でもする?」
返事がない。
「サミー?」
顔を覗き込むと、はっと目を瞬いて我に返った。
「ああ、魔物の森ね。回り道できなさそうだけど?」
「じゃあ…」
「今から大事な話をする。」
サファイアが私達の話を遮った。
「あなた達も感づいてるかもしれないけど、ジャクソン家は特別なの。普通の家庭には宿らない力が、宿ったの。」
「「力?」」
意識せずハモった私達に、ママは話を続ける。
「そう、キャロルには水と光が、サミーには雷が宿った。私は水で、ルビーにも雷が宿った。シェリーも水が宿っていたわ。キャロルは新たに光を手に入れたのね。私のお母様に似たのかしら。」
「おばあちゃん?」
「そう。お母様は光を持っていたのよ。」
「じゃあ、私と同じことができるの?」
そう言いながら、私は軽く念じて、消えている電気に光を入れた。
「すげ…」
呆然としていたサミーだが、急に立ち上がると、ベランダに行き、空を見上げた。
サミーは、戻ってきて言った。
「なあんだ、なんにも起こらないじゃないか。」
ルビーがなだめる。
「この剣を使わないとできないの。」
「何これ。ただの日本ばさみじゃん。」
「本当に日本ばさみ?」
どっからどう見ても日本ばさみだ。
サミーが蓋を開けると、カシャンと音がして、剣に変わった。
「何だこれは!すごいすごい!」
手にフィットした馴染みに、興奮するサミー。
「ようし。」
再びベランダに行って、剣を振り上げる。
青空に、黒雲が集まってきて、雷が落ちた。
すごいな…。
サミーは息を切らして帰ってきた。
「疲れたけど、すごいや。」
蓋を持って戻そうとすると、日本ばさみに戻った。
「その日本ばさみは、自動的にウエストポーチに戻る仕掛けになってるわ。」
ルビーが説明する。
いいなあ。私もほしい。
「キャロルはこっち」
サファイアから修正テープを渡された。
「修正テープ⁉」
「仕組みは同じ。でも振り上げても何も起こらないわよ。」
「ありがとう。」
「それと、こっちはウエストポーチじゃなくてポケットに戻るの。」
すごい。
「それと、これ。」
「ボールペン?」
「それは短剣になるの。シェリーを見つけたら渡してね。」
「…うん。」
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別れのときが来た。
旅支度も整った。バックパックにはシェリーのボールペン、万能薬(しかし強烈に眠くなる)、おやつ、水の入ったペットボトル。
服装は長袖のTシャツに、防弾チョッキ、ズボンというところまでは一緒だが(色はべつにして)、私はシェリーとおそろいのペンダント、サミーはウエストポーチといった具合。
「「行ってきまーす」」
「仕送りするから!」
私は正直、仕送りはいらないと思った。なぜかって?
サファイアとルビーの仕送りはいつも焦げた魚だから。
「気をつけてね!」
「そっちこそー!」
温かい言葉に溢れた朝が、今始まった。
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