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困惑

クリストフの放った救援信号弾によって現れたのは、上級冒険者『翠聖(すいせい)』ヴィルヘルムとその伴侶(パートナー)のステファン、翼犬を始めとした従魔三頭だった。


歴代聖女並みと言われる強力な浄化魔法を、神官では無い冒険者の身で使い(こな)すヴィルヘルムですら、今回の瘴気溜まりの浄化には手子摺った。数回に渡って浄化をかけて、ようやく浄化を完了した後、戦線のフォローに回っていた。


彼らは、以前に街で一度出会っただけのエルネスタを覚えていたようだった。初見で、ヴィルヘルムの仲介無しに従魔を手懐けたエルネスタは、彼らには印象深かったのだろう。街ではなく、こんな討伐最前線にいるエルネスタを見て、不思議そうに尋ねる。


「エル、何故こんな所に?」

「友達が危ないって、つい仕事中にこっち来ちゃいました」

「エルは、街の役場で文官の侍従をしているんだろう?」

「主が王都に移ったんで、それに着いて行って、今は王宮で秘書見習いしてます」

「王宮からは、魔法で?」

「はぁい、ボクの精霊魔法で」


エルネスタは、ヴィルヘルムにこれまでの事情を掻い摘まんで話した。ヴィルヘルムは頷くと、エルネスタの背後にいる二人に目を移す。


「そっちの魔術師がテオフィルか? なら、君は?」

「俺は、トールさんの所のクランで世話になってる、初級冒険者のクリストフって者で、エルの兄です」

「その白虎はクリストフの騎獣か?」

「はい。ドミニクっていいます」


ヴィルヘルムは状況を見て取ると、隣のステファンに目を遣る。ステファンは、心得たとばかりに頷いて見せた。


「じゃあ、ドミニクには俺とクリストフとで乗って行こうか。俺が後ろで(シールド)を展開するから」

「お願いします」


二人を乗せたドミニクが、先に前線基地へ向け出発した。


ヴィルヘルムは従魔の大猿デューイを促し、疲労困憊しているテオフィルを騎獣の翼犬ヒューイの背に運ばせた。翼犬は見上げる程の大きさで、騎獣にされることなど滅多に無い。


エルネスタはヒューイの正面に回ると、にっこり笑って両手を差し伸べた。ヒューイは、そろりと鼻先を突き出す。


「遠くから見かけた事はあったけど、顔を合わせるのは初めてだね。よろしく、ヒューイ」


エルネスタが鼻先を撫でると、ヒューイは大きな舌でべろっとその手を舐めた。そして、その交流を微笑まし気に見ていたヴィルヘルムは、エルネスタに声を掛ける。


「エルは自分で乗れる?」

「はぁい。浮遊(フロート)!」


エルネスタは魔力を放って自身を浮かせ、ヒューイの背に上がると、テオフィルを抱えたデューイの前に乗る。ヴィルヘルムは軽く跳躍して先頭に乗り、ヒューイに指示を出した。


「ヒューイ、前線基地へ。ルーイ、護衛して」


ヒューイは了解と言わんばかりに鼻を鳴らし、僅かな助走で飛翔した。小柄な羽根竜(フェザードラゴン)ルーイは、フヨフヨとヒューイの傍を飛び回る。ルーイは可愛い見た目に反して、先程魔物を一掃したブレス攻撃や、成人男性と同じ位の体格の大猿デューイを軽々と運べる力強さを持っている。


エルネスタは、翼犬に初めて乗った興奮に(はしゃ)いでいた。


「うわー、高い! 速い!」

「危ないから、燥がないで、ここにしっかり掴まって」

「はぁい」


エルネスタは促された通り、ヴィルヘルムの背にくっ付いて、両手を前に廻して掴まる。その時、エルネスタの触れたヴィルヘルムの腹部に、ぼんやりと何かの気配を感じた。


「……あの、ヴィルさん? これ……」

「ああ、分かった?」


おずおずと見上げるエルネスタに、振り向いたヴィルヘルムの緑の目が柔らかく笑んだ。


「ええと、その、ステフさんとの?」

「そう」

「え、でも……ヴィルさんって、男の人じゃ……」

「俺はちょっと特殊だからね」


意味深な笑みを浮かべるヴィルヘルムに、エルネスタは益々困惑した。とても理解が追いつかない。


「産まれたら、仲良くしてやってね」

「はぁい、それはもちろん!」


ヒューイは、文字通りひとっ飛びで前線基地に着いた。ヴィルヘルムはひらりと飛び降りると、デューイに指示してテオフィルを救護所に運び込む。エルネスタも浮遊で下に降り、後を着いて行った。ルーイも着いて来たが、ヒューイはふらっと何処かへ行ってしまった。


「エルは、仕事に戻らなくて大丈夫なのか?」

「あっ、忘れてた!」


ヴィルヘルムに問われて、エルネスタは焦った。慌てて魔力を練り、放った光の粒に伝言を囁く。


「ヘルムート様、無事終わりました。これから戻ります」


そして、光をそっと上に押し上げた。光の粒は、空でキラキラと漂って消えた。


「それ、伝言を届ける魔法?」

「はぁい、そうです。思ったより遅くなっちゃったので、帰るより先に伝言でもって思って」

「お小言位で済めばいいけどね」


くくくっと笑うヴィルヘルムに、エルネスタは首を傾げた。

ヴィルヘルムの特殊な体質については、前作「行き倒れを拾ったら何だか知らないが懐かれた件」を参照してくださいσ(^◇^;)

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