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再会

エルネスタが玄関先で、手持ち無沙汰に待っていると、先程の女性が行きと同じくバタバタと戻って来た。


「ごめんなさいね、お待たせしちゃって」

「いいえ……」


何と返していいか分からず、エルネスタが言葉を濁していると、奥の階段から物凄い勢いで降りて来る足音が近付いて来る。


「エル? 本当だ! エル!」

「クリス、久しぶり」


勢い込んで現れたクリストフに、エルネスタは街での習慣通り、ハグで応じる。クリストフは愛し気にエルネスタの髪を撫で、声を掛けた。


「街から、わざわざ会いに来てくれたのか?」

「あれ? 手紙に書いたんだけど、届いてないの?」


クリストフに王都行きの事情を知らせた手紙を書いたが、行き違っていたらしい。エルネスタは、改めて事情を説明することにした。


「ボク、街で住み込みの仕事していたんだけど、そこの主が王都へ異動になったから、付いて来たんだよ。だから、ボクも王都住みだよー」

「何だって!?」

「勤め先の邸は北西大通りの傍だし、こことはちょっと離れてるけどねー」


それから、玄関先で立ち話も何だからと、下宿人達の共有スペースであるリビングルームへ案内された。


各々、適当な椅子に腰を落ち着けると、エルネスタは改めてクリストフに目を向けた。久しぶりに顔を合わせた兄は、街から送り出した頃と比べて、背も伸びており、躰付きも逞しくなったように見える。何より、その大人びた表情に、エルネスタは驚かされた。


「それにしても、驚いたよ。まさか、エルが王都に来ているなんて」

「ボクも、思ってもみなかったよ! 王都へ来ることになるなんてさ」

「随分、しっかりして、大人っぽくなったな」

「それは、クリスの方でしょ?」

「俺なんて、まだまだ……」


話しながら、少し沈んだ様子のクリストフに、エルネスタは何と声を掛けるかと言葉を探す。


「ええと……クリス、何かあった?」

「俺が一人前になったら、迎えに行くつもりだったのに」

「迎えって?」

「いや、何でもない」


結局、クリストフは言葉を濁し、エルネスタは首を傾げたままになった。それからは、当たり障りのない世間話に終始して、日暮れ前には暇を告げた。


「じゃあ、また来るね、クリス」

「こちらからも行くよ」

「ボク、普段は主に付いて王宮通いだからなー」

「王宮?」

「主が、外宮に勤めている文官で、ボクは秘書見習いなの」

「……」


クリストフは、呆気にとられた。てっきり、邸の小間使いと思い込んでいたが、王宮勤めの文官付き秘書見習いという。このままでは、エルネスタの方が出世してしまい、クリストフが迎えに行くどころではない。


「俺、もっと頑張るからな!」

「……? それじゃ、またね」


エルネスタはクリストフの下宿を出ると、邸のある方角に向かって歩き出した。行きは使用人仲間に連れて来て貰ったので、道筋はうろ覚えだ。とりあえず、大通り沿いを歩けば、迷うことはないだろう。そう思い、下宿から冒険者協会の建物を目指す。


「ん? 何だ、変わった魔力だな、お前」

「ええと……どなたですか?」


エルネスタが大通りに出た所で、ちょうど冒険者協会から出て来た人物と行き会い、声を掛けられた。その人物は、大柄で赤髪琥珀眼の、やたらと迫力のある風貌だった。エルネスタは人見知りはしない(たち)だが、この時ばかりは、萎縮してしまった。


「俺は冒険者のライだ。お前、変わった魔力を持ってるな」

「ボクはエルです。魔力、分かるんですか?」

「俺は魔眼持ちだからな。お前のは、今まで見た魔力のどれとも違う」

「魔術師の師匠にも、そう言われましたけど、見ただけで分かるなんて、凄いです!」

「冒険者をやるつもりなら、鍛えてやるよ」

「ボクには向いてなさそうなんで、ごめんなさい」


冒険者のライと立ち話した後、別れて王宮前広場を目指す。王宮前広場は、街の中央広場より大きく、人出も多い。エルネスタは慎重に通りの数を数えて、北西大通りを探した。多分、ここだろうと進んでみたが、なかなか見覚えある場所に出られない。


「もしかして、迷った?」

「何? キミ、迷子なの?」


立ち止まり、きょろきょろと辺りを見回すエルネスタに、声を掛ける人がいた。その人は、小柄で華奢な感じの、白髪赤眼で、白い一角馬を連れていた。一角馬は、しきりにエルネスタを気にして、鼻をふんふん鳴らしている。


「まだ王都は慣れなくて。北西大通りに行きたいんですけど」

「ああ、道を間違えたんだね。送って行ってやるよ。おいで」


その人は、ひらりと一角馬に乗ると、エルネスタに手を差し伸べた。エルネスタは礼を言って手を取ると、馬上のその人の後ろに引き上げられた。


「俺は冒険者のサイラスだよ。キミは?」

「ボクはエルっていうの。北西大通りの近くにある邸に、住み込みで働いているんだ」

「王都は広いけど、造りは単純だから、すぐ慣れるよ」


ゆるゆる歩く一角馬に乗って、サイラスと話しながら進んで行く。程無く、北西大通りに入り、見覚えある場所に出た。ついでだからと、サイラスは邸の傍まで送ってくれた。


「ありがとう、サイラスさん」

「さよなら、エル。また会えるといいね」


エルネスタはサイラスの姿が見えなくなるまで見送ると、邸に入っていった。

ちょっと前作のキャラを出して、遊んでしまいましたσ(^◇^;)

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