殿下の愛人は弟の第二王子
前作「殿下の愛人は男性新人騎士」もよろしくお願いします。
「お兄様?今日も舐めていいですか?」
「仕方ないな…夜も遅いから少しだけだぞ?」
「ん〜美味しい!お願いお兄様!もっといいでしょ?」
「これで今日は最後だからな?後でちゃんと歯磨くんだぞ?」
「うぅ!これ苦い!」
「ちょっと!兄弟で何やってるんですかああああああああああ!」
私は夜遅くにも関わらず殿下の寝室の扉を乱暴に開け放ち、突撃しました。
私はウェルトン公爵令嬢ユリアーナと申します。
なぜ私が婚約者であるレオハルト殿下の部屋に突撃したかと言うと、殿下とその弟である第二王子シリウス様との関係に違和感を持ったからです。
仲が悪いという意味ではありません。何か私の知らない秘密を共有しているような…ようするに女の勘ですわ!
周りにいる侍女達も同じような違和感を持っているようです。
「あのご兄弟って仲が良いっていうか、良過ぎるわよね」
「シリウス様とは8つも歳が離れているからか、夜寂しい時に自分の枕を持って、殿下の寝室に行かれる姿が可愛くて可愛くて」
「この前なんて、朝起こしに部屋に入ったらレオハルト様にシリウス様がぴったりくっついて添寝していましたの。一瞬、禁断の恋が此処に!?っと思いましたわ!」
いけません!いけませんよ殿下!いくら仲が良いと言っても限度があります!
そう思って夜に殿下の寝室を訪ねたのですが、扉の前で冒頭の会話が聞こえて、いてもたってもいられなかったのです。
「あなた達は何を考えているのですか!?いくら仲が良くても超えてはいけない一線があるでしょう!噂になっておりますのよ?禁断の恋がって!そもそも何を舐めてるのですか!私なんてまだキスだけなのに!………シリウス様?………えっと……何を食べてらっしゃるの?」
「ん?飴玉だよ?」
これは、このパターンは知っています、あれですよね?また私の勘違い。
「あの……つかぬ事をお伺いしますが、もしかして私の…」
「そうだね。勘違いだよ」
レオ様は私の言葉に被せるように即答されました。
「はぁ…私はなんて愚かなのでしょう…こんなのでは殿下の妻、次期王妃なんてなれませんわ……」
私が弱音を吐いていると袖を引っ張られました。そちらを見るとシリウス様が目を潤ませて立っていました。
「……お義姉様になってくれないのですか?」
雷が落ちたような衝撃を受けてしまいました。レオ様とこのまま結婚すればシリウス様が義弟に?なんと素晴らしい!
いろいろな想像をしていたら、いつの間にかレオ様が私の目の前に居て、私の耳元に口を近づけ、
「で?ユリアーナは何を舐めてるとおもったんだい?」
「はぁうぅ……」
おっと危ない!いつもならここで意識を飛ばして気づけば朝ですが今日はそうはいきません!ギリギリ踏み止まりました。
「おや?」
レオ様は少し意外そうな顔をされましたが誤魔化されませんよ?
「で?2人は何をコソコソやっていましたの?」
「答えるまで引きそうにないな…ギルバートがオススメする菓子屋があって、そこの飴をシリウスに見つかってしまってな、昼間堂々とは無理だから夜中コッソリくるんだよ」
「ほぅ?私に秘密で甘い物を?今回は結婚式の事と関係あるのかしら?あぁ!参加者のお土産にするのですか?そこの所ははっきりと……」
「もう勘弁してくれ……定期的にユリアーナにもお菓子をギルバートに送らせるから許してくれよ…」
「そこまで言うなら仕方ありませんね」
勝った!特に何か勝負をしていた訳ではありませんが、達成感があります。
「それと今日はもう遅い、久しぶりに3人で寝るとしようか」
「いいのですか!?ならレオ様は真ん中ですわね!」
私の言葉で一瞬シリウス様の目が鋭く光ったように見えましたが気のせいでしょう。
こうして、またも私の勘違いで大騒ぎにしてしまった禁断の恋事件に幕が下されたのだった。
後日、禁断の恋がお好きな令嬢にユリアーナは囲まれ、彼女達の妄想を永遠と聞かされる切っ掛けになった事件であった。
(おい、シリウスどこを触っているんだ?隣にユリアーナがいるんだぞ!?)
(フフッ……お兄様は僕のモノだ……こんな女なんかに渡さないからな)
(ユリアーナがいるから動けないし、声も出せない、やめろシリウス!)
(3人で寝るなんて提案したお兄様にはお仕置きですね)
(マジやばい!やばいってシリウス!)