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しょうくんはBL漫画家です!  作者: 猫正宗
第1章 BL漫画雑誌『タージマハル』創刊!
8/8

07 不埒な計画は頓挫する

「ふぅー。もうお腹いっぱいだよぉー!」


 満腹になったお腹をさすりながら、リビングソファに腰を下ろした。


 リモコンのボタンを押す。

 テレビから流れてくる笑い声に紛れて、シャーっと水道の音が聞こえてきた。

 七海お姉ちゃんが食器を洗ってくれているのだ。


 流しに立つ後ろ姿を流し見てから、ボクはのんびり食後の時間を楽しみ始める。

 お姉ちゃんは「ふんふんふーん」なんて鼻歌まじりで、とっても上機嫌みたい。


「洗い物お終いっと。しょうくん、晩ご飯は美味しかった?」


 しばらくするとお姉ちゃんがやってきた。

 軽く微笑みながらボクの隣に座って、肩を寄せてくる。

 ぴったりと体が密着した。


「うん! すごく美味しかった! ごちそうさま、七海お姉ちゃん!」

「お粗末さま……って、あらあら? お腹がぽっこり膨らんじゃってるじゃない。食べ過ぎちゃった?」

「だって、お姉ちゃんのハンバーグが、美味しすぎるからだよぉ」


 これは本当のことだ。

 ふっくらジューシーなハンバーグは肉汁たっぷりで、ボクは2回もご飯をおかわりして食べてしまった。


「きゅーん! しょ、しょうくんったらぁ! 嬉しいけど、お腹苦しくなぁい?」

「う……。ちょっとだけ苦しいかも」

「やっぱり? じゃ、じゃあ……、じゃあね、こうすればいいのよ? ……ぅん、しょ」


 お姉ちゃんが手を伸ばしてくる。

 白くて細い指先が、ボクのズボンに触れた。

 ぱちんとボタンを外してくれる。


「……ふわ」


 腹部に開放感を感じた。

 締め付けられていたお腹が緩められて、少し楽になる。


「はぁ、はぁ……。次は、こう……」


 ジーっと、チャックが下された。


「な、七海お姉ちゃん? そこまでしなくても、ボク大丈夫だよぉ?」

「い、いいから。はぁ、はぁ……。お姉ちゃんに、任せて……」


 下されたチャックから、白いブリーフが覗いている。

 お腹が撫でられた。

 さわさわと優しい手つきだ。

 ちょっとひんやりするけど、くすぐったくて気持ちがいい。


「あぁん! お姉ちゃん、そこはぁ……!」

「どどど、どうしたのぉ?」


 体がピクンと反応しちゃう。

 気のせいかな?

 撫でられているのが、ちょっと下の方に集中しているような……?


「はぁ……、はぁ……。しょうくん……。お姉ちゃんの、しょうくぅん……」

「ちょっ、ちょっと!? そこは違うよ、お姉ちゃぁん!」


 やっぱり気のせいじゃない。

 下腹部をさする手つきが、どんどんいやらしくなっていく。


「しょうくん、しょうくぅん! お姉ちゃん、もう! もうっ!」

「だめぇ! 七海お姉ちゃぁぁん!」


 鼻息を荒くしたお姉ちゃんは、しばらくの間そうやって、ボクを介抱し続けてくれた。


 …………介抱、だよね?




 ようやく落ち着いてきた。

 ふたりして姿勢をあらためて、並んで座る。


 七海お姉ちゃんがボクの手を握ってきた。

 指が絡み合う。


「しょうくんの手のひら、あったかいねー。はいこれ、食後のお茶よ」


 淹れてもらったお茶を啜る。


「ふぃ……。お姉ちゃんのお茶は美味しいねー」

「熱くない? ふぅふぅしてあげようか?」

「大丈夫だよー」


 火傷しない程度の、程よい熱さだ。

 七海お姉ちゃんは、ボクの好みを知り尽くしてくれているのだ。

 優しくてこんなにいいお姉ちゃんがいて、ボクは幸せものだよね。


「あ、そうだ。ねぇ、しょうくん?」


 まったりのんびりお茶を飲む。

 そうしていると、お姉ちゃんが急にぽんと手を叩いた。


「なにー?」

「持ち込みの話。結局どうなったの?」


 そういえば忘れていた。

 漫画作画担当で、双花社からデビューできることになったんだった。


 お姉ちゃんにはちゃんと報告しなきゃ。

 なんたって七海お姉ちゃんは、ボクに漫画の描き方を教えてくれたお師匠さまでもあるんだから!

 きっとお姉ちゃん、喜んでくれるぞー?


「えっとね! 実はね――」

「まぁ!? ダメだったのね!? あぁ、なんて可哀想なしょうくん! さぁ、お姉ちゃんのおっぱいに飛び込んでおいで!」


 バッと腕を広げる七海お姉ちゃん。

 丸くて柔らかそうなおっぱいが、ぷるんと揺れた。

 ブラジャーはしてないみたい。


 思わず顔をうずめたくなる。

 だってお姉ちゃんのおっぱいって、ふにゃっとしてて気持ちいいんだよね。


 でもその前にちゃんと報告しなきゃ!


「んっと、ちがくて――」

「元気出してしょうくん! お姉ちゃんが慰めてあげる! きょ、今日は久しぶりに一緒に寝ようね! はぁ……はぁ……。一晩中、一緒に……!」

「ち、違うよ、お姉ちゃん。ちょっと落ち着いて!」


 興奮したお姉ちゃんを宥める。

 七海お姉ちゃんはよくこんな風になるから、ボクも割と慣れっこだ。

 落ち着くのを待ってから、改めて切り出した。


「なんかボクね、デビューできることになったみたいなんだぁ。作画担当なんだって! えへへ……」

「…………はぇ? デビュー?」

「うん!」


 七海お姉ちゃんはポカーンとしている。

 いったいどうしたんだろう?

 喜んではくれないのかなぁ?


「……え? でもしょうくんって、王道少年漫画を描きたいのよね?」

「うん、そうだよ!」

「それで、あの漫画を持ち込んで、デビュー?」


 狐につままれたみたいな顔だ。

 ボク、なにかおかしなことを言ったかな?


「持ち込んだのって、双花社のクリーチャーコミックスよね? あの少年漫画の……」


 ボクは元気に頷く。

 思い返しても夢みたい。


「デビュー決まったって、あ、あのホモくさい絵柄で……? どうして? これじゃあ傷心のしょうくんを慰める、わたしの計画が……」


 お姉ちゃんはまだぶつぶつ言っている。

 その間にボクはお茶を飲み終えた。


「じゃあ、お姉ちゃん! ボクは部屋に戻るね!」

「あ、うん。は、はい」


 あんまり喜んでもらえなかったのは残念だけど、ちゃんと報告はできた。

 混乱している様子の七海お姉ちゃんを残して、ソファを立った。




 ベッドにドサッと体を投げ出す。

 目を閉じて全身の力を抜くと、眠気が襲ってきた。


 時刻は20時過ぎ。

 まだ早いけど、もう少ししたら寝てしまおう。

 今日は持ち込みなんかで、ちょっと疲れちゃった。


「っと。その前に、メールの確認しなきゃ……」


 編集の睦お姉さんが、あとでメールするって言ってたんだ。


 起き上がって、勉強机に向かう。

 ノートパソコンの蓋を開いて、ピッと電源を入れた。


 このパソコンは、七海お姉ちゃんのお古だ。

 お姉ちゃんのほうから、押し付けるみたいにしてくれたものである。

 モニターの上に備わっているカメラが、なんだかボクを見ているみたいにキラリと光った。


「メール、メール……」


 フリーメールのブラウザを立ち上げると、1通の新着メールが目に付いた。

 開くと案の定、睦お姉さんからのメールだった。


「なになに。『私のしょうくんへ――』って、なにこれ?」


 ちょっと意味がわからない。

 別にボクは、睦お姉さんのものってわけじゃないと思うんだけど……。

 でも仕事のメールって、こんな風に挨拶するものなのかなぁ?


「まぁ、いいや。それよりちゃんと読まなきゃね!」


 そう気を取直して、ボクはメールを読み始めた。

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