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しょうくんはBL漫画家です!  作者: 猫正宗
第1章 BL漫画雑誌『タージマハル』創刊!
3/8

02 編集のお姉さん

「は、はじめまして! ボクは阿波翔太。中学1年生です。み、みんなには『しょうくん』って呼ばれています!」

『……え、えっとぉ』


 電話の向こうから、戸惑いの空気が伝わってくる。


 ……やってしまった。

 なんでいきなり、こんな自己紹介をしちゃったんだろう。


 バカバカ!

 ボクはほんとにバカ過ぎる!

 こんなんじゃ、門前払いされても仕方ないよぉ。


『……ふふ。うふふ。あー、おっかしい』


 あれ?

 電話口でお姉さんが、楽しげに笑っている。


『あなたは、しょうくんって言うのねぇ? それでそのしょうくんがぁ、いったいうちの編集部になんのご用なのかしら?』

「え!? あ……。は、はい!」


 良かった。

 まだ話を聞いてくれるつもりはあるみたいだ。


「じ、実はボク、漫画を描いてまして! お、恩赦? じゃない、御社が持ち込み原稿の募集をしてるって、宣伝を見つけて――」


 一気に捲したてる。

 でも口をつく言葉は、しどろもどろだ。

 やっぱりボクはまだ、ちっとも落ち着いたりなんてしてないみたい。


「それで……、それでボクは……!」

『落ち着きなさい、しょうくん?』

「あ、はい! す、すみま……せん……」


 謝る声が消え入りそうになる。

 うぅ……恥ずかしい……。


『しょうくんは、漫画の持ち込みに来たのぉ?』

「は、はい! そうです、そうなんです!」


 女の人が助け船を出してくれた。

 優しいお姉さんだなぁ。


「そ、それで、ボクの漫画をみてもらうことは、できますか?」

『分かったわぁ。今から玄関ホールに降りるから、少しそこで待っていて下さいねぇ』


 ガチャリと受話器の置かれる音がした。

 ツー、ツー、と通話終了音が聞こえてくる。


「……は、はぁぁ」


 大きく息を吐いてから、ボクも受話器を電話に戻した。

 一時(いっとき)とはいえ緊張から解放されて、どっと汗が吹き出てくる。

 途端に先ほどの醜態が、思い起こされてきた。


「ほんとに……、ほんとにボクってば……!」


 なんださっきの情けなさは。

 こんなんじゃあ、ボクが憧れている少年漫画の主人公たちみたいには、到底なれっこない。


 自分の余りもの不甲斐なさに、涙が出てきた。

 うるうると瞳が潤む。


「うぅ……。うぇぇ……」


 こんな場所で泣いちゃダメだ。

 さっきのお姉さんがやって来る前に、ちゃんと泣き止まないと。

 そうは思っても涙は勝手には止まらない。


 ――チーン。


 そうこうしている内に、エレベーターの到着音が鳴った。

 カツカツカツと、ホールに靴音を響かせて、誰かが近づいてくる。

 多分さっきの電話のお姉さんだ。


「えっとぉ、あなたがしょうくんかしら?」

「えぐ……。ぐすっ。……は、はい」


 服の裾で涙を拭った。

 それでもきっとボクの目はまだ、涙で潤んじゃってる。

 だけどこのままうつむいて、お姉さんを無視しちゃいけない。


 上目遣いに顔を見上げた。

 女の人と目が合う。

 お姉さんの瞳に、ボクの泣き顔が映り込んでいる。


「――はぁんッ!?」


 お姉さんが変な声をあげた。

 顔を真っ赤にして、がばっと仰け反っている。

 いきなりどうしたんだろう?


「ぐす……。お姉さん、どうしたんですか……?」

「きゅふぅん!? 待って。ちょっと待ってぇ!?」


 お姉さんは耳まで真っ赤だ。

 なにが起きてるのかな?

 も、もしかして、……なにかの発作!?

 大変だ!


「お、お姉さん! 大丈夫ですか!? 綺麗なお姉さん!」


 近寄って手を握る。

 お姉さんがビクンと激しく震えた。


「あ、あ……。なんて可愛いショタっこなのぉ……」

「しっかり! しっかりして下さい!」


 目の前でお姉さんは、ぶるぶると激しく震えている。

 救急車でも呼んだ方がいいだろうか。

 そんなことを思い付いたとき――


「もうっ! もう、我慢出来ないわぁっ!!」

「ぶぁふぅ!?」


 お姉さんが急に抱きついてきた!

 おっきなおっぱいに顔が埋まる。

 柔らかいけど、息が出来ない!


「ふぎゅぅ!? おねえひゃん!? 息が、息ができませ……ふぎゅぅ!!」

「きゅふぅーん! あぁん、もう! このっ、このぉ! 可愛すぎるわよ、この子ぉ!」


 ぎゅーっと抱きしめられる。

 どうにもこれは、解放される様子がない。


「ぉねぇひゃん……。ぃきがぁ……」

「あふぅん! しょうくん! しょうくぅん!」


 その拘束は、ボクが窒息してしまう寸前まで続いた。

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