デイ・スリー
随分長いこと開けてしまいました。
この問題は、私にとってなかなか書きづらかったのです。ゲームに没頭していただけでは、こうも筆が止まるはずがない。
それが、この証左です。
思い出したくもない日。
久々にミキに会った。
気分は最悪だ。
今付き合っているというお相手の社長殿の好みに合わせて、無駄にケバケバしくなった装い。
あの子は、社長ではなく社長の財力に惚れているのだろう。
憧れの女性がああなるのは見たくないものだ。しかし、結局は、理想的存在を見出せば見出すほど、幻滅の落差も大きくなるのかもしれない。
そして、現実である限り、見出した理想との乖離はいつかは訪れる。
それは、単なる恋の終焉以上の何かだ。
何が、シュウなら彼を救える、どうか助けてあげて、だ。
昔の彼女はもっと誇り高かった。少なくとも、あんな風にみっともなく私に頼み込んだりはしなかった。
それが、本当に彼氏を思ってのことなら、まだ許せる。
だが、彼女は金目当てだ。でなければ…あんな風に、ギラリと光る眼でダイヤを見つめたりなどはしないはず。
誤解?曲解?
そうかもしれぬ。
しかし、仮にそうだとしても、そう思わせた時点で、幻滅は不可避なのだ…。
彼女は女神でも天使でもない。ただの女だった。
当たり前と言えば当たり前か。
しかし、その当たり前こそが、時として男を狂わせる…。
ヰスキイの グラス眺めて あの頃の 想ひも酔ひと 同じと悟る
所詮は、一時の酔いだ。
だから、醒めた私は、あの女、ひいては全人類への絶望を、そのまま表現して見せよう。
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久々に会ったシュウは、ミキに言わせれば、殻にこもってしまっていた。
初めて彼と話した時。彼は、どこかに人間不信の気配を漂わせていた。
そして、再び信ずることで傷付くのを恐れてか、必死に自分の内面を見せず、殻で覆っていた。
あの頃に似ていた。彼は、あの頃のように、ミキに対しても一枚の壁を張っていた。
しかし、その壁は、あの頃よりも暗い色を持っていた。
あの頃の彼は、私に一縷の望みを賭けるかのように、すがるような形で、少しずつ、少しずつ心を開いてくれた。
中には私には分らぬ難解な話もあったけど、それでも、ただの天才ではない、等身大の人間としての彼を感じさせてくれた。
今の彼は、かつてよりも更に暗い人間不信の壁を纏って、私に対してさえも、再び心を閉じようとしていた…。
そう、感じたのだった。
特に、感染してしまった社長のことを話した時の暗い輝きは、思い出すだけで彼女をぞっとさせた。
しかし、それでも、ミキは、シュウをどこかで信じていた。
あの人は傷付きやすく、純粋な人だけど、本当は誰よりも友達想い…。
彼女は、その洞察力によって、誰よりも、恐らくは彼自身やその家族よりも、彼をよく理解しているつもりだった。
そして、それは、それゆえの信頼であり、同時に不安でもあった。
…だって、純粋さ故に、誰よりも壊れやすくもあるから。全ては、彼がまだ壊れていなければ、のことに過ぎないから。
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緊急速報
アメリカ・オレンジ大統領、遂に北朝鮮に宣戦布告
ナノボットの発生源と断定の上、報復攻撃に出る模様
この物語は、正直私にとっても扱いが難しいのです。定期更新は期待しないでください。
もしかしたら、一気に書き殴って終わってしまうかもしれませんが、どうなるかは、私自身も本当のところ分からないのです。
まるで、混迷する現実世界のように。