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転換!関ヶ原!  作者: 歴史転換
叶ワナイ恋編
28/29

外章三話 恋ノ夢ハ永遠カ・・・

 どうも歴史転換です。ペースは落ちてますが、更新は続けますよ。昔は毎日更新していた体力は、今現在は持ち合わせていません。


 今回は、軽い死体の表現がありますので、ご注意して下さい。

  では、これが歴史シミュレーションなのをお忘れなく。

※2019年6月25日に移動。内容は変わってません。

 

3 男ト女、此処ニ初対面ヲ果タス


 

 時は一五九五年七月十九日の夕暮れになる。京の聚楽第に向かって、大阪城の自分の屋敷から駆け出した小早川秀秋は、予定よりも早く聚楽第の大門前に到着していた。

 秀秋は移動方法として馬に乗っていたが、馬はかなりバテているようでハアハアっと息使いが荒い。馬の鼻や口からは水が出ているし、目は充血している。秀秋は此処に到着を早める為、かなり馬に無理をさせていた。それこそ寝るのもそこそこにしての強行移動だった。

 馬に降りた秀秋は、馬の顔を左手で撫でた。馬はハアハアっと言いながらも、愛想良く左手に顔を擦りつけた。

(後で、馬小屋で休ませねば・・・。)

秀秋もこの馬を不憫に思ったが、そこは仕方が無いっと割り切っていた。秀秋以外にも付き人に近侍を四人引き連れたが、その近侍はまだ到着していない。この秀秋の馬はそれなりの馬だったようで、徒歩のかの者達には追いつかなかったのだろう。秀秋のお供は一人も居なかった。

 仕方なしに秀秋は、そこから近くにあった木の傘に腰を置いた。行儀が悪いことである。馬はその木に括りつけて、馬を座らせた。

 秀秋が待っている間、ジリジリッと嫌な汗が吹き出た。夕暮れと曇りもあってか、陽の暑さは感じは弱い。だが、そこから逆に湿気が酷く、青の平服がベッタリっと汗で纏わりつく。この感じが、秀秋にとって堪らなく嫌であった。


(しかし、いつ拝見しても豪華すぎるな。)

秀秋は目の前にあるその聚楽第を見ると、常々そう感じてならなかった。

 聚楽第は切腹させられた豊臣秀次の政庁であり、邸宅であり、そして城である。此処で秀次は基本的に政治をしていた。城というのは、ここには天守閣がある本丸があったり、城の外などには堀が深く掘ってあるなどの造りがあるからだ。それに此処には常に、一万余りの兵が滞在していて戦闘はいつでも出来るように待機している。なのでそのことを念頭に置くと、邸宅っというよりも城っと言う方がある意味シックリ来る。

 その聚楽第だが、建築としてはかなり豪華に仕上がっている。各地の所々に、瓦に貴重である金箔を貼ったり、材木なども最高級の物で仕上げている。その豪華さは大阪城にも匹敵するぐらい、ここの聚楽第は豪華絢爛であった。

 この聚楽第の豪華絢爛な所は、秀秋は生理的に嫌悪している。これは何故かというと、虐げられた秀吉夫妻の住まいが同じ豪華絢爛さの大阪城だったからだ。あの辛いっという感覚すら鈍って感じなくなった居場所を、秀秋の脳裏に浮かばせるのがこの聚楽第なのだ。この他にも敬愛と親愛している養子先の、小早川隆景夫妻が大変質素だということも加わる。なのでこの聚楽第に秀秋は滅多に訪れてない。他にも諸所の理由があるが・・・。


(それにしても、秀次のあの顔・・・正に醜かった。)

秀秋は暫し待った後、漸く来た近侍四人を門番に対応させてから、今度はそう思った。四人の近侍は全力疾走したからか汗だくになりながら、仁王立ちしている甲冑姿の門番に対してここに来た説明をしている中、秀秋は先程の光景が頭の中で広がっていった。

 秀秋一行は、寝るのもそこそこにして急いだ所為で、昼には京に到着していた。秀秋一行が京の都に着くと、京の都の町人が何故か慌しく騒いでいた。このことが秀秋は気になった。秀秋は早速、近侍の一人に原因を調べさせると、秀次の首が三条河原で晒されているっとの原因が分かった。

 そのことを秀秋は知ると、直ちにそこに向かうことにした。京の聚楽第と三条河原は、そんなに距離は離れていない。場所はどちらかというと、京都御所の近くにあった。因みに京都御所とは、天皇殿下が御住まいになられている場所である。なので聚楽第ともう一つその近くにある二条城は、この京都御所を監視と守護の役目にもなっている。

 さて三条河原の大橋には、沢山の人が押し合っていた。恐ろしい人込み皆が思っているのは、晒されている秀次の首を見たいが為である。秀次の首は粗末な木の台に乗せられていて、そこに二人の監視の兵が武装姿でいる。万が一、首を盗む輩がいるかも知れんっとの当たり前の行為である。

 秀秋もどうしても秀次の首が見たい。流石に、人込みに馬に乗ってる秀秋はこのまま突っ込むのは不味いっと思い、近侍の内の二人に馬を預けた。馬を降りた秀秋は、残り近侍の二人を引き連れて、その晒された首を間近に見る為に動いた。

 今日はあまりいい天気ではなかった。そのことを秀秋は天に感謝した。それはというのも、人込みに突入した三人は、その人込みの熱気に包まれたからだ。その熱気は天候が悪かった所為で、ギリギリ我慢が各人が出来る範囲内であったからである。

 秀秋は先頭を突き進んだ一人の近侍の活躍により、最前列に陣取ることが出来た。前には秀次の首が丁度、真正面になるような場所であった。秀秋の左と後ろに、近侍が周囲に警戒して秀秋を警備している。右は秀秋が太刀を腰にぶら下げているので問題はない。

(秀次・・・。)

秀秋は意外に冷静な頭で、晒されてる秀次の首を見た。

 秀次の首級は、全体的に腐っていた。この七月という夏の初旬もあって、その腐敗は早々と進行してしまったのだ。だから最前列からは腐乱臭が漂っていて、基本的に皆が顔を顰めている。顔は多少は死化粧をしているから、色は綺麗に見れないことはない。血も流してるから色白なのも、綺麗に見れる要因になってはいる。

 だがその顔は、苦悶に満ちた顔だった。その顔からは執念と未練が溢れんばかりに醸し出していた。まるで、自分が死ぬのはおかしいっと弁論している顔であった。

 

 その顔を見た秀秋は、秀次の名を心中で呟いた後にしかめっ面になった。それは周囲が顰める理由とは異なる。秀次の哀れさと侮蔑、秀吉の嫌悪と侮蔑の感情からであった。

 秀次と秀秋は、秀吉の養子仲間だが仲は悪かった。秀次は強い者には腰は恐ろしい程に低い。だが弱い者には威張り散らす男だった。秀秋は弱い者だったので、秀次は何かと秀秋を馬鹿にしていた。威張って鼻につく行動も多かったからだ。

 だから秀秋は、秀次の死にはあまり悲しみはなかった。だが秀次に対してのこの哀れさはこの首を見て秀秋の心を支配した。

 秀次は自他認められてる凡将である。だがその秀吉の過度な期待に、何とか秀次は答えようと必死の努力をした。その所為か、何とか見れるぐらいに成長はした。そのことは世間も認めてる。なので豊臣家安泰っと言われていた。

 だが実子の秀頼が誕生すると、秀次は用無しっと言わんばかりにこうなった。関白が太閤に切腹されることは本来は前代未聞であった。太閤とは、関白を隠居などをした際に他の人物に譲った人のことを称していうのだ。だから太閤とは、政治の表向きは官位ではない。だから政治だけで判断したら、関白の方が偉いのだ。

 その関白を秀吉が躊躇無く、何ら障壁もなく殺した。しかも、理由は悪逆非道っと先程から人込みで囁きあってる。

 しかし秀秋は、秀吉が実子に関白にしたいが為の狂言だと信じてる。大方、秀吉の付き従う忍びにでも噂を流布したのだろうっと秀秋は思った。そうしたら秀次を処断しやすくなるからだ。

 こう思考すると秀次を哀れんだが、それを悪化させた無能さを秀秋は侮蔑した。実子が産まれたら、さっさと関白を辞職すれば良かったっと秀秋は思ったからだ。もしもしていたら、秀吉は喜んでそれを認めさせるように動くし、辞職になれば殺すことのなかったろう。最悪で出家ぐらいに収められた筈だっと秀秋は空想の中で結論つけた。

 その等のことを思考すると、秀次のその表情は醜く感じてならなかった。秀秋は人とは最後の時、その表情は今までの事柄の満足度を表すっと隆景に聞いたことがあった。それを隆景から聞いた秀秋は、そうかも知れないっと頭に刻んだ。そのことで秀次の顔は醜く、こうはなりたくないっと秀秋は心中で呟いた。自分なら満面の笑みで、最後は死にたいっと秀秋はこの時に頭でそうするように信号を送ったのだった。

 しかし秀次をこうも虫屑のように処刑した秀吉には、秀秋は嫌悪と侮蔑を感じた。天下とは一人では経営なぞ到底無理だと秀秋は承知している。

 今頃は丹後亀山十万石ながらも、経営運営を自らもし始めていた。その大変さはよくよく身に沁みた。まだまだ若いからっと経営運営の殆どが、家老の松野重元等が仕事をしている。その際に秀秋は、独り善がりで政治を出来ることは不可能っと悟った。

 だが秀吉は最近の政治は、どうも一人相撲でしかないように感じてならない。そう秀秋は思うと、胸糞が悪くなった。この粗末な首も、秀吉の手の平で踊らされた末路だ。

(・・・・・・・・・。)

秀次に哀悼を示す為に一礼を心中でした秀秋は、さっと踵を返した。もうここには用は無いっとそう感じたからだ。残された秀次は、直も観客に訴えていた・・・。


 だから聚楽第の主である秀次はもういない。その主無き聚楽第だが、その豪華絢爛な所からかなりかけ離れていた事柄があった。それは秀秋一向が聚楽第の中に、漸く通された時に秀秋が直ぐ察知した。

 秀秋が周りを見た限り、人が馬鹿に少ないのだ。いや、これは誤っている表現だ。聚楽第の中にいるだろう非戦闘員が少ないのだ。

 ここの聚楽第には全国の多くの大名達の屋敷が存在する。そこには、駒のような娘を側室に出した大名の屋敷も存在している。そこには普段、近侍や侍女や小姓などの者達が滞在している。無論だがそこの留守や、側室になった娘の手助けの為にである。

 しかし秀秋は直ぐに理由を看破した。既に多くの大名達は大方、大阪城の屋敷に移住を命じられたのだと。現に秀秋一行が歩いている際、何軒かの屋敷を横切った。その屋敷の人の気配は、秀秋は全く感じられなかった。

 これは秀秋の想像は大体は当たっていた。現に秀吉は秀次処刑の際に、処刑に関係ない大名達の屋敷に居る住民に直ちに立ち去るように命じたのだ。

 だからどうしても非戦闘員が少ないし、屋敷の活発な動きもなかった。あるのは逃亡阻止の見張りだろうか、警備兵が先程からウロウロっと動いていた。

 先の門番から、先導役を任された足軽に歩きながらここの事情を聞くと、勿論だが正室と子は本殿に居る。だが、側室は各実家の屋敷に幽閉されているっと聞いた。すでに女の処刑の話しは、ここの聚楽第で知らない者はいない。秀吉は最後の餞として、慣れている実家の家で最後の刻を待つように指示した。ある意味、何とも残酷な餞別である。

 

 秀秋一行が着いたのは、殆ど陽が山に向かってしまった時刻になっていた。着いた場所は、駒の実家である最上家の屋敷である。屋敷には所々だが、灯が照ってるのか明るい。その明かりは、何処か哀しげだが雄雄しく灯を照らしていた。

(・・・遅くなってしまったが、事は急ぐし仕方ない。)

夜中に訪れるのは、かなり親しいか急ぎぐらいである。これ以外で訪ねたりしたら、かなり失礼に値する。だから秀秋は、門の前で心中でそう言い訳染みた釈明をした。

 そして先導役の足軽は、さっさと秀秋一行を案内すると持ち場を離れた。その足軽は去り際に、屋敷の入り口に仁王立ちしている二人の門番に、秀秋一行の来訪の事情を話した。内容は兎に角、ここに居る駒に会合したいっとのかなり話しを省略していた。

 この下手な説明に二人の門番は、当然ながら秀秋一行を凝視し、内心でかなり不審がった。万が一逃亡を許したら、自分たちの首が刎ねられるからだ。なので二人の門番は、近侍を此処で待機するように命じた。秀秋一人では、何ともならんと感じての要求だった。

 因みにこの時、秀秋の評価は悪かった。っと言っても、秀吉の寵愛が無くなったっとの評価だけである。なのでまだ若いので、凡将以前の男だと評価されていた。なのでこの頃は、馬鹿にする者も確かに居たがまだ無関心が大半を占めていた。

 この門番の横柄な要求に、近侍達は揃いも揃って憤怒して抗議した。四人の近侍達は、秀秋を守る近衛兵になりたかった。

 ここで説明すると近衛兵とは秀秋の戦の際には、秀秋本陣の周りを守備で固める兵である。もし戦になれば、秀秋の指示があれば率先して前線に参加が出来るし、何より秀秋の守護としての家の憧れでもあった。

 一方のこの四人が所属する近侍とは、戦でも数少ない者しか選ばれず、しかも戦闘には主の秀秋自身の危機でないと、近時は戦に参加は許されない。基本的に、戦では秀秋の周辺だけを守備するのが仕事だ。

 だから近侍と近衛兵だったら、出世が出来る度合いが全く違う。だからこそ家で、武人になりたい若い者は近衛兵に必死になろうとしている。

 だが、まだそこまではこの四人の実力は達していない。だからこのお供になった四人は、何とかして手柄が欲しかった。覚えを良くして、今後は近衛兵に昇格したかった。

 近侍の猛烈な抗議に、門番の二人も流石に押された。なので一人だけ近侍を連れるのを認めた。だが、ここから大変だった。これ以上の譲歩は門番の二人はないっと断言した。

 決定したのは結構、時間が経ってしまった。この時、秀秋は干渉は一切しなかった。ただただ、その無益すぎる争いをジッと見ていただけだった。


「いらっしゃいませ。では、こちらにどうぞ。」

門に二人は入ると、目の前に立っていた一人の老婆が声を掛けた。顔からしても、体からしても、髪からしても老婆にしか見えない。容姿はだから綺麗では決してないが、平服が調った淡い赤なのがいいのか、そんなに悪く感じなかった。

「失礼ですが、駒殿の付いています侍女ですか。」

「はい、そうですが何か。」

いえ、何もっと秀秋が言うと、老婆は此方が玄関ですっと言うとさっさと歩き始めた。この老婆の言葉だけならば愛想がいいが、態度や口振りはどこか棘があるし、高圧的に感じた。

(全く、これが最上家か。先が思いやられる・・・。)

秀秋は若干だが、心中でため息をした。これならば、駐在所に連れて行かれた三人の近侍と立場を入れ替わりたかった。それが駄目なら、その三人と供に連れられた馬でも良かったっと支離滅裂なことを、途中から秀秋は思考した。


 玄関に入ると、誰もいなかった。そういえば、玄関の庭の手入れもしてないみたいで、ここには人の気配が殆どないっと秀秋は読み取った。

(余分な侍女などは、既にここから退去させたようだな。)

秀秋は確信した。何故なら、玄関が物が溢れていたし、その物の上には塵が大量にあったからだ。もし人が来れば、それを見たら気分が悪いだろう。だがそれは、人が訪問する訳がないっと高を括るってたからであろう。

 だが今回、急に訪問者が来た。掃除しようともとても間に合わない。現に老婆の態度は、玄関に入ってから急かすように変わっていた。

「どうぞどうぞ、駒様は応接の間に居ります故、ささどうぞ。」

「分かってますよ。おいその物はこの御方にお渡ししろ。」

秀秋が近侍に声を掛けた。近侍は背負ってた袋から、野菜と酒を取り出すと老婆に手渡しに渡した。これは秀秋一行が秀次の首を見た後、お土産に調達したものだ。

「これは・・・有難う御座います。近侍の方は、別部屋をご案内しましょう。それはここにでも置いといて下さい。」

老婆は喜んだ。そのこともあってか、態度に傲慢さと急かすことは無くなった。現金な者なのか、はたまたチャッカリしてるのか分からない老婆だ。


「此方に駒様が居られる応接の間である。近侍の方はお隣の部屋ですが、宜しいですか。」

「はい、分かりました。大人しく待機してくれよ。」

「はっ・・・。」

近侍と老婆は、隣の部屋に入っていった。どうやら会合中の間、あの老婆が近侍の話し合いをするようだ。暇潰しも、作法の一つだからこれは当たり前だ。

(ここに駒殿が・・・うっ緊張する。)

秀秋は一瞬だけ躊躇したが、余り時間をかけなかった。こちらは当然の来訪者であり、待たせるのは失礼だからだ。

 出入り口の襖ををガラッっと空けた。そこには、一人の女性が大人しく座していた。そう、駒は一人でこの応接の間に居たのである。

本当に顔を合わせただけです。外章は亀より遅い速さで進みます…

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