第一章十五節 李氏朝鮮脱出
何と、この作品の合計PVが10万を突破しました。こんなに期間が開いた作品なのに、読者様のおかげでございます。ありがとうございます。
何とかしようと連日投稿を頑張ってやりました。話が進まずのリハビリ作品なのですが、宜しかったら見てください。
では、これが歴史シミュレーションなのをお忘れなく。
15 会議
小早川秀秋がおたあと会談しているその時、別の部屋では小早川家の家臣達が会議をしていた。
「さて・・・。皆様、お忙しい中ですが集まって頂き、ご苦労様です。時間も惜しいですから、今からのことを考えましょう。」
声を出したのは、小早川家の筆頭家臣である稲葉正成である。どうやら、この会議の進行役のようだ。この言葉に、座していた松野重元・平岡頼勝・清水景治が頷いた。他の者はどうやら忙しいかったのだろうかいなかった。席は円を描く様になっている。その中央には巻物が置いてあり、どうやら景治がこの会議の決めたことを書すのに任命されたようだ。因みに、景治自身は嫌がったが、この中では悲しいかな一番位が低かった。重元・頼勝の両名の無言の重圧に屈したのだった。全く、どの時代にも権力を振りかざして嫌な仕事を押し付けるのは、一般常識であるのは変わらないようだ。
「今から考えると言われても、ただ日ノ本撤退・小西行長様の救出の出陣の両方を準備をすれば宜しいのではないですか。」
真っ先に発言したのは重元だった。座して発言した彼の者だったが、幾分か苛々しているようである。それを証拠に座して胡坐を組んでる足が小刻み震えていた。背丈の高い彼の者のその震えは、他の三人も手に取るように分かった。
(やれやれ、このような会議は早く抜けねばいかん。)
重元はそう思っていたが、それは彼の者が苦手とするこの会議から抜けたいからであった。
元々、重元は戦場で活きる猛将である。戦で指揮を取ったり、少し時代が遅れているが自らも槍などを用いて相手との一騎打ちもやっている。戦は重元に取って、魚に水を与えるものであった。
それが今はこんな机上の会議である。知の事になると基本はからっきしと自他が認めている重元にとっては地獄である。政務などは家老である以上、渋々ではあるが遅いながら平時は勤めている。
因みに、小早川家の基本は『働かざる者は暇を出す』である。特に上に昇格すればする程、その傾向が高くなっていく。武官は平時に、文官は戦時にいつもどちらか苦慮しつつも仕事をしている。その後ろ姿を見て、下の者は大変そうだなと上官を他人事みたいに思いつつも助けている。その助けた姿を見た上官達は、その中で使える(自分達の今後が楽になる)者を昇格させる。昇格した者達は、その上官達の仕事に対する助言を聞きつつも必死に頑張る。それを下の者も手助けするといった巡回が常に生まれる。小早川家は仕事能力もそうだが、自分達の思う通りに動くかも加味して昇格させる(あまりに能力が低かったり、あまりに仲が悪かったら除外。賄賂なぞ発覚したら、その場で上官ごと暇が命じられる。)ようにしている。これが多少能力は低くても、それ以外の交渉術や指示や教え方などで昇格させる者も多い。それが一概にいいとはいえないが、上手く小早川家は機能している。無論だが、今は上の人数が少ないので、機能しているのもギリギリなのは追加しておく。
そんな重元の心情を読んでる頼勝は、重元を一瞥してたがはあっとため息を吐いた。その顔は苦渋の顔をしていた。自分も苦手ではあるが、不得意かといえば彼の者よりはかなり出来る。そこは、小早川家の三大家老と誉れ高い通名があるのだ。
「重元・・・。そのような顔をするでない。見ているこっちが苛々してしまうわい。」
苦言を言うと、重元は嫌な顔をした。重元からしたら察して欲しいから苦慮しろが本音だろうが、頼勝からしたら上記で気持ちが分かるが許す気はない。家老である以上はそんなことは慣れろと何回も伝えているからだ。現に頼勝の瞳は笑っておらず真剣そのものだ。
重元はその苦言に、さっと目を逸らしながら無言になった。そのことで全体的に、部屋の空気が鉛の如く深く暗く重いものになった。それを必死に日光が割って入り、部屋の空気を変えようとしてくれている。何と健気で雰囲気が読めるのだろう。だが、そんなこと関係なくまだ変わらなかった。そこに部屋の片隅に蜘蛛の巣を作り住み着いてる小さき蜘蛛も、早くこの空気が変わって欲しいが如く四名を小さき目でギラリと睨んでいる。先ほどからこんなで空気のせいか、獲物が全く入らない。このままでは今日、絶食になってしまう。死活問題なので蜘蛛は抗議の目線を送るが、四名は案の定だが気付く筈はなかった。
そんな空気を打破したのは景治であった。
「まま、両方共落ち着いて下され。・・・稲葉様、今回はそんな大事ではないのでありましょう。多分ですが、殿の何か私用に近いことなのではないですか。」
その言葉は重元がギョッと目を大きくして正成を睨んだ。頼勝もハッとした顔でこちらは正成をにらんだ。そしていつの間にかだが、中心にあった巻物はなくなっていた。どうやら、景治が独断で片付けたようだ。それを見ていた正成も特に何もいっていない。
(大体、自分が重大な会議に参加する資格がない。それならば、殿の前によくいる私か吉正か宗章だが、あいにく吉正は来訪に対応しているし宗章は口下手だ。後は私しかいない・・・。やれやれこんなことは吉正がいいのだが貧乏くじを引かされた。)
激しく舌打ちしたいが、そこは景治は我慢した。そこはこの上官ばかりがいるこの空間ではご法度など分かりきっているから。
「その通り、殿の私用に近いが今後の小早川家の命運もかかってくる内容だ。だから身近な所に勤務している景治を呼んだのだ。」
正成は淡々とした顔で淡々と述べた。これには景治の癖、眉が顰めが更に深くなった。重元・頼勝の両名も何で景治がこの場にいるのかをここで理解した。
基本的に景治は小早川家の近衛兵取締役や近侍の副取締役を任命されている。中々の役職だと思われがちだが、簡単に砕けば戦時は本陣の兵を管理し、平時は近衛兵の鍛錬指示と近時の弐番目の地位で指示を出している。因みに近侍の一番は秀秋本人だったりする。これは好き勝手に動かれるのを嫌う秀秋の意向であり、基本的に大まかに秀秋が景治に指示を出し、それを景治が他の近侍に実行に移させている。近衛兵も秀秋のが棟梁であって景治は管理をしてるだけに過ぎない。だから所詮は二番手である景治の地位は、実はそんなに高くはないのである。故に重要な会議などでは、景治に発言権が存在しないのだ。
そんな景治は、会議の開始から重要度が低いと確信していた。何せ自分も入った会議だし、秀秋自身が参加していない。それから計算して、この会議が殿の『何か』の相談だと結論を下したのである。
「今回の撤退戦もそうだが、今後は多分になってまうが日ノ本は荒れるだろう。それがあると今の小早川家だけだと心細い。殿と盟友になりうる大名がいないかと思ってな・・・。」
正成が言うとはあっとため息を吐いた。顔は苦悶しており、考えがわかないようだ。これを聞いた他の三名も、思考をする。
前の章でも述べてはいるが、小早川秀秋自身の評価は最悪である。李氏朝鮮の現地総大将の解任や現地での振舞い、本人の人間不信による各大名の対応。それらを総括した時、秀秋の評判は『臆病で蛮行が目立つ』が一般的な認識になってしまう。李氏朝鮮出兵以前から評判は悪かったのも付け加える。
「分かりません。」
「濃もじゃ。スマンの。」
考えがなかった景治・頼勝はそう口から静かに言った。両名とも苦悶していったが、景治は特に苦し紛れに言っていた。これでは自分がいた意味がないのが悔しいのであろう。
そんな中、ただ重元一人はあることを思い出していた。
(そういえば、あの殿のゲロを体に浴びた日。あの時に・・・。)
「そうそう、今日な立花宗茂殿と話した。あんな馬鹿正直な男みたことがない。私と一緒の偉大な義父がいて、死去して、重圧も負けず、真っ直ぐな男はいない。とある嘘を言いつつ(行長の救出の理由など)だったが、多分あの方は分かったのだろう。それでも話を止めなかった。本当に珍しいみたことのない男だ。」
(そういっていた殿が珍しく笑顔で大名のことを語っていたっけ。・・・ってこれは使えるのではないか。これしかなかろう。)
「一人、可能性があるぐらいですが心当たりがございますが・・・。」
重元は早速、思ったことを三名に説明した。ここで追加説明をいれると、景治が宗茂に気付かなかったのはいつも傍にいなかったからだ。普段ずっと傍にいるのは吉正や宗章であり、景治は近侍の指示などでここ最近は忙しかったからである。宗茂や島津義弘が来訪したことも知らなかった。最もこのことは秀秋自身が、何を思ったか伏せるように吉正達に指示を出したので仕方がないが。
「立花様か。」
「うむ、あの立花様なら盟友になったら心強い。」
「しかも、領地も近い。これはいいのではないか。」
三名共、反応が良かった。当時の宗茂が評判高いのが分かる。更に筑後(福岡県南部)に領地がある為、目と鼻の先である。仲良くなるに値するものがあった。
「だが、立花様は小早川秀包と義兄弟じゃ。何かと不便なのが欠点か・・・。」
頼勝が言うと、他の者も嫌な顔をした。
二つある小早川家同士の仲の悪さは有名である。無論だが、家中同士の者達も仲が悪い。その秀包が義兄弟だという宗茂を取り組むのは難しいというよりも、心情的に嫌悪が四名共思い浮かんでしまう。
そんな内情でも、正成は顔を顰めつつも決断を下した。
「小早川秀包の遠慮はいらないとして、一先ずは立花様を第一候補として行動しましょう。まずは景治。宗章と謀り、殿の心情を知れ。後、吉正には立花家の現在の詳しい内情を探れと命じるように。」
「はっ。」
「頼勝殿は密かに立花家の重臣と接触を。」
「やれやれ・・・。なれない作業なんだが殿の為か、御意。」
「重元は撤退の準備等々をそのまま継続で行うように。頼勝殿が抜けて、少し負担が増すが宜しく頼むぞ。」
「仕方ないですよ。頑張ります。」
命じられた三名は了承を口にした。それを満足げに見た正成はその後、解散を口にしてその会議は終了となった。
(殿を支える柱を強化しよう。不器用で寂しがり屋な殿の何にもない安息な日々を味わってもらう為に、頑張ろう。)
こうして、秀秋の為に家臣達が動き出した。それは奇しくも当の本人である宗茂にとっても、正に渡りに船だったことはいうまでもなかった・・・。
連日投稿・・・疲れました。もう、昔みたいなのは無理なのが実感しました。今後はゆっくりと投稿になると思います。
それにしても、PV10万はビックリしました。これに答える方法を考えて、何とか投稿しようと現在に至りました。本当にうれしかったので再度、お礼を言います。
「本当にこの作品をみて頂き有難うございます。」