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転換!関ヶ原!  作者: 歴史転換
本編
11/29

間章 秀秋と重元


 飲食している読者様はこれから汚い表現があるので、見ない方がいいです。これは、本編の5の続きです。

 

 5.5 忠臣と大名と諌言と・・・



 廊下に一人の男が、夜の暗さを恐れず歩いている。その男はどこか怒りが顔に表れている。その怒りが足音に出てるかと思ったが、意外に全く出ていない。一応の礼儀はあるようだ。その鍛えた体をこそこそと動くのは滑稽である。その姿は闇にも馬鹿にされているようで相手にさせてもらえないようだ。

(ったく・・・殿は何処にいるんだ。)

その男、松野重元は主である小早川秀秋を捜索していた。

 

普段は大名以外の家臣達の多くは、釜山城の麓のある仮屋敷にいる。ここで多くの者が私用をしたり、待機をしている。無論、大名は釜山城の中に部屋があり、そこに滞在している。

 今回こそ、多くの者が偶然居るので釜山城の部屋が満室だが、基本的に五・六人の大名しかいないので部屋は沢山余る。そこには、各大名の家老が居て、ここで大名の命を待つのだ。

 重元は、小早川家の家老だ。小早川家の三大家老ではないものの、上の家老だ。この重元も普段は余った部屋での待機している。だが、今回は余っていない。だから麓の仮屋敷にいる筈である、

 それなのに何故、重元は釜山城の廊下にいるか。それは、秀秋の部屋番を任されてるからだ。ここには近侍で信任されてる柳生五宗章が無論、待機しているのだが総責任者ではない。重元は秀秋に一番信頼してるからこそ、部屋番の総責任者に信任されたのだ。

 その重元が秀秋の部屋で、いくら待っても帰ってこない秀秋に不審がった。先に帰ってきた宗章もいい加減に焦れている。その宗章に捜索させるかっと一瞬脳裏を過ぎったが、結局は重元自らが捜索している。また、諌言をしなければいけないっと予知したからだ。

 その重元は、よく秀秋に小煩く諌言する。まるで姑かっという程、小煩い。しかし、秀秋は一切怒らない。

 それは重元が自分の為に諌言してるのであって、そこには欲がない心からの諌言だと秀秋は知っているからだ。だからいくら諌言してもけして怒らない。

 その重元が一番信用されている理由は、小早川家の中の家老で、一番付き合いが長いのだ。その付き合いは豊臣秀吉の養子になった時からである。この頃は無論、小早川家に養子に出されるまでは一切信用されていない。だが、それも仕方なしっと重元は淡々とだが忠義に仕えた。幼い頃からを秀秋を知ってる重元は人を信じられない気持ちを理解していたのだ。

 その後、小早川家に養子になってからは互いに親しくなる。互いに親しくなった重元にある日、どんな諌言もしていいっと秀秋自身が頼んだのだ。始めは固辞したが、至らぬ所は直さねばいかんと秀秋の決意に、重元もそれならばっと現在も言い続けている。


 暫く廊下を歩く重元だったが、さて秀秋を発見した。だが、秀秋の様子が少し可笑しい。秀秋は廊下の庭に通づる手摺りに、両手をかけて前のめりに顔を出している。

「殿。」

思わず音量が高くなりそうなのを何とか耐えた重元は、その秀秋の姿をを遠めで見て青ざめた。何かあったのではないのか。そう思うとドクンっと心の臓が高く鳴り響いた。

 急ぎながらも慎重な足で秀秋に近づいた重元だったが、秀秋に近づくにつれて、何故か呆れた表情になっていく。心の臓も落ち着きを取り戻していく。

 

 何故秀秋の様子が可笑しいのか。立花宗茂と別れた秀秋だったが、その時になにをしたかが全ての原因だった。

 あの時、かの者は足早に去ったのだ。遅い歩きではない。駆け足に近い速度であった。かなり酔う者が軽くの運動でもどうなるか。結論、酔いが強くなる。足早に去った秀秋はこの運動に対して、酔いが強くなりすぎた。

 そう・・・かの者は庭に向かって、激しく嘔吐してたのだ。正に自業自得である。

 それは、現代で言えば、温泉に稀に見られるライオンの口から温泉が出てるが如くである。秀秋は顔は青かったが、嘔吐を出すのが気持ちいいのか、恍惚としていた。秀秋自身は現実逃避しているのかもしれないが。

 その鮮やかに出ている反吐は秀秋を嘲笑うように出ている。ううーおぼぇぇーっと何か嫌な声がするのは気のせいであろう。月も気まぐれでこの汚らしい物を面白がってか光が強い感じがしている。実に悪趣味だ。

 因みに、秀秋が嘔吐する前後に人は誰も横切ってない。不幸中の幸いである。


「このような所で何をされてるのですか。」

重元が秀秋の後ろに立っていうと、秀秋はビクッと体を一瞬震えさせた。どうやら重元が近寄ってくるのさえ分からなかったようだ。

 恐る恐る秀秋は首だけを動かして重元を見た。重元の顔は呆れていたが、こめかみに血管が浮き出ているのは気のせいだろうか。重元は秀秋の口元を見て血管をピクリっと動かした。どうやら口元の反吐に対して不快感が出ているようだ。

 重元の顔を見て、秀秋は顔が更に青ざめた。これは不味いっと秀秋は惚けることにした。

「何、月が綺麗だと思ってな。」

秀秋はそういって、重元の注意を逸らす為に自ら月を見た。そして、チョイチョイっと手を秀秋の隣に招く。

 重元もその問いに答えるように、無言で隣に立って月を見た。

 その間に秀秋は身なりを整えようと立ち上がってる。早速、反吐で汚い口元を慌てて手で拭いたが、急いだのか雑な拭き方だったので汚さはまだある。これでは格好は全くつかない。

 だが、先程まで秀秋が地を凝視してたのを、重元は見ている。その手摺り外の下には秀秋の造った湖がある。秀秋はそれを何とか隠そうと上を見て、それを誤魔化そうとしてるのがバレバレである。実に白々しい限りである。

「確かに綺麗ですな。」

重元も一応乗った。確かに月を見ると綺麗だ。その月は、さも当たり前だと光る。秀秋はホッと胸を撫で下ろしたが、それは早計だった。

「でも、それはそれですな。何故、このような所で奇妙な体勢だったのですかな。説明を。」

秀秋の惚けを重元は一刀両断した。秀秋の言葉に乗ったのは、建前である。武士の情けか見るのが嫌なのか、下の反吐湖は見ない。

 ただ、空を眺めるて秀秋の回答を重元は待った。その無言の威圧感に。秀秋は流石に惚けを諦めた。これ以上は惚けても無駄だと観念したのだ。

 

 だが秀秋は、重元の顔を見るのは気まずいらしく二人は暫し、空を立ち止まりながら眺めた。涼しさがより際立ってきた最中、漸く秀秋は重元と向かい合う。

「少し、酔いが回ったのだ。」

苦笑しながらポツリと呟いた。秀秋には飲みすぎは悪気はなかったが、心配させて悪かったっとの謝罪の気持ちは言霊にあった。

 調子に乗りすぎたっと続ける秀秋に、思わず重元は頭を抱えた。全く人騒がせだと重元は感じた。

「今後は酒の飲みすぎを控えて下され。」

重元は秀秋に諌言した。重元はため息を、腹の底から遠慮なく吐く。これには秀秋も何も言えずに苦笑を深める。重元は本気に心配させられたこともだが、このため息にはもう一つの理由があった。

 

 それは、この諌言は秀秋には、全く意味がないだろうと思ったからだ。重元が諌言や苦言をしたことは山程ある。そんな中で秀秋が政務などの所謂、大名や武将の能力指摘などはどんな些細なことでも紳士に聞き入れる。

 だが秀秋が私的なことや、自分の体のことなどにはあまり耳を傾けない傾向がある。そのことを重元は重々認知していた。秀秋は自分に興味が皆無なのかもしれないっと重元は読んでいる。

「分かった分かった。」

案の定、重元の諌言に秀秋は軽い返答だ。重元は予想通りだと胸中で、今度はため息をする。この何ともいえない表情の重元の顔を見た秀秋は、苦笑していた顔を急に引き締めた。

「これから軍議次第で激しい戦になるやもしれん。いつでも出陣出来るようにしておけよ平八。」

そういうと秀秋は部屋に歩き始めた。足取りも荷物を降ろしたおかげか、かなり軽くなった。

 これに一瞬、体が固まるがハッとして後を追った。あれでも頭脳は常に働いておられるのだなっとかなり失礼な考えを重元はしたが、感嘆もした。

 ・・・この後の地獄が待っているのを知らずに。


「んぎゅっ。」

秀秋は後、部屋がもう少しの所で転んだ。昨日の軍議といい、よく転ぶ男である。秀秋は転んでから何故か立とうとしなかった。

 これには慌てて重元は秀秋を起こしにかかる。もしや転んだ際に、打ち所が悪かったのやもしれんっと重元が思ったからだ。

 秀秋は昨日の軍議前の入室の時も転んだが、この時の傷はあの時よりも深かった。足取りこそ軽くなったものの、気分は快調ではない。やっと落ち着いていたのに、この転びが意味するのは。

「うぅーっ。」

「殿。殿。如何なされた。」

「は、はぎぞうだ。」

「え、ちょ、ちょっと待ってくだ・・・ぎゃーー。」


 ・・・・・・・・・・・・一匹の野良犬の遠吠えが聞こえた気がした。

・・・すいませんでした。気分を害された読者様にはお詫び申しあげます。これからもこんな転換!関ヶ原!をよかったらでいいんで応援してやって下さい。

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