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盗賊

週一のペースであげていく予定です。

2話


気がつくと青空が広がっていた。

見渡す限りの空には大きな雲が風に押されてゆっくりと流れて行く。

どうやら寝転がっていたみたいだ。

起き上がって周りを見てみると馬が思い思いの場所にいて草を食んでいる。


馬は知識としては知って居るが、見るのはこれが初めてかもしれない、珍しくて眺めてると


「あっ。見つけた。パパ、馬泥棒。」


えっ、ちょっとまって馬泥棒?

いきなりそんな物騒な場面に出くわしちゃったのかと思って辺りを見回そうと視線を彷徨わせると、突然背中に衝撃が走った。


「捕まえた。絶対に許さないんだからね。」


どうやら第一村人は同い年くらいの女の子で

僕は馬泥棒に認定されていた。




「はっはっは。いや、すまんねうちの娘が。私が村長のシゲ、こっちが娘のミカだ。」


豪快に笑いながら僕にお茶を進めてくれたのは180cmくらいのヒゲ面に農作業焼けなのか肌は黒く、腕もがっしりしていて、ぱっと見クマみたいな人だ。

僕は牧場でぼーっとしているところ第一村人の女の子、改めミカが発見して冒頭に至る。ミカは赤い髪にそばかすの残る顔にはまだ幼いながらに意志の強い目を僕に向けている。いや、怪しんでるだけか。


「なんで、牧場の真ん中なんかで寝転がってるのよ。馬のこともじーっと見てるし。あきらかに怪しいじゃない!」


いや、ごもっとも。あーなんて説明しようかなぁと考えて苦笑いして、取り合えづ誤魔化す事にした。


「ちょっとぼーっとしてたら迷い込んじゃって」


あ、バカを見るような目がこっちを見てる、いや、 僕もどーかなーって思います。はい。

だけど、あんまりうまく説明できないんだよなぁと思っていると。シゲさんが最近村に起こっていること教えてくれた。


「最近村の周辺で魔物が死んでいたり、家畜が一匹二匹いなくなっとるんだ、恐らく盗賊かなんかが近くに居るんだとみんな警戒しとるんだよ。」

「魔物が死んでるなら、魔物が家畜のことも襲ってるんじゃないんですか?」

「馬鹿ね、魔物の仕業だったらもっと家畜がやられてるし被害がこの程度で済むはずないわ。それになんていうか少しずつ居なくなるのよ」

シゲさんの説明に僕が質問すると代わりにミカが答えてくれた。


なるほど、魔物にしては被害が少なく、家畜の減り方が計画的なのか。

確かにそれなら盗賊の線が濃厚なのか。

だけどなんで少しずつ家畜を減らして居るんだ?一気に襲って来れない理由でもあるのだろうか?


むむむと考えて居るとシゲさんが教えてくれた。

「この村はな山の中にあるが、川も近くにあって平地もそれなりにある、家畜や作物なんかもある程度は自分たちでなんとかなっちまうんだ。それに少し他よりも高い位置に村があるから守りやすいのさ。だからたまにこういうことが起こるんだ。」


なるほど、ある程度慣れっこのようだ。


その時、村に危険を知らせる警鐘の音が響き渡った。

櫓の上の見張りが盗賊の襲来を告げた。


「ミカ、急いで彼と安全な場所に避難を、できるだけ村の女子供を誘導する用にしてくれ。」


「シゲさん、ぼくも連れて行って下さい、きっと役に立てると思います。」


「な、パパ!私も戦えるわ!一緒に連れて行って!」


ぼくとミカが同時に抗議する


「ダメだ、君はこの村の構造を知らない。それに避難した者達を守る必要がある。 役に立てるのなら任せても大丈夫だろう?ミカお前は大事な一人娘だ、何か有ってからではアリアに顔向けできん。」


シゲさんがとミカが一瞬だけ睨み合う。がすぐにシゲさんが視線を外して僕に頭を下げた。

「すまないが娘を頼む。」

それだけ言うとシゲさんは急いでどこかへと行ってしまった。多分盗賊たちのところへ行ったのだろう。


少しだけ悔しそうにしていると、自分のやることを思い出したミカはすぐに行動に移った。


「ついてきてこっちよ。」


それだけ言うとミカは走り出した。

どうやら村の真ん中にある村長宅の隣には、住人達の避難場所も併設されているようだ、普段は別のことに使ってそうだけど。村の中心に向けて走るように周りの人にも声をかけていく。


「戦える者は武器を持って村入り口の村長のところへ!女子供は私に続いて避難を!急いで!」


号令一家。彼女の声に村人たちはそれぞれのために動き始めた。


避難途中に周りを確認すると木の柵で村が囲まれているだけで人間であれば簡単に乗りこんで来られそうだった。



「貴方はここにいて、皆を守って。」

「だめだ、君を一人で行かせる事はできない。シゲさんに頼まれたんだ」

「私は、もう誰も失いたくない!待ってるだけなんて嫌なの!それに貴方なら信用できる。私をパパのところへ行かせて。」


ミカは民家に着くと僕に護身用なのか剣を押し付けて入り口に向かおうとする。


「なんでそんなに僕のことを信用できるんだ。」

さっき会ったばかりだろうと彼女をみると、少しの間逡巡すると、意を決したのかシゲさんが魔眼の持ち主であることを教えてくれた。

心眼の魔眼は、相手が善なのか悪なのか、あとは少し嘘をついていたらわかる程度のものらしい。だけどそれで十分だった。そのシゲさんが僕に頼ったことから、ミカは僕のことを信頼してくれた。


それで十分だ。僕はその信頼に応えるとしよう。そう思った時。


入り口とは反対側から叫び声が響き渡った。


「間抜けどもが、この村はこの俺様が頂いた。年寄りと男どもは残らず殺せ。女は今夜の楽しみに生かして捕らえろ。がきは捕まえて売っぱらうぞ。」

「「「「「「おおおおおおおおおおおお!!!」」」」」」


どうやら入り口は囮で本体は反対側からやってきたようだ。


僕は驚いて居るミカを家の中に押し込んで外から扉を閉める


「ちょっと、何やってるのあなた1人で敵うはずないじゃない、早く、パパを呼ばなきゃ皆も殺されちゃう」

「大丈夫、彼らに用ができた、シゲさんとミカの信頼に応えてみるよ。ちょっと中で待ってて」


なんでもないことのように剣を片手に持って盗賊たちと向かい合う。

村とは言え、そんなに広くもない。向こうもこっちを見つけたのか顔には下卑た笑みを貼り付けたままこちらを見る。


「おいガキ、死ぬ前に女どもがどこに居るかさっさと吐け。そしたら苦しまずに殺してやるよ。」

状況を理解して居ない盗賊達が仲間の声に笑って居る。

彼らは知らない。

触れてはいけない物がある事を。

彼らはこれから知ることになる。

触れてはいけない物に触れてしまった代償を。


「…かえせ。…やる。」

「あ?はっきり喋れねーのかこのクソガキ

としゃべりきる前に男の頭が落ちる。


ただ、剣を水平に振っただけで面白いように首が落ちた。これで僕も殺人者か。この世界にも警察とかあるんだろうかと呑気な考えが頭をよぎる。

まったく、引き返せば追わないものを、残りの馬鹿どもは5人。入り口にも居るみたいだしサクサク行こう。

ぼくは剣を振り上げながら残りの盗賊の元へ駆け出すのだした。


一人馬に乗ったリーダーっぽい男がこちら見て叫び指示を出しているが、なんというか遅い。まるでスローモーションのように周りの男達の動きが遅れて見えるのだ。

一斉にそれぞれの武器を掲げ向かってくる。一番手前まで走り寄ってきた男が片手剣を袈裟に構え、ふりおろしてきたのに合わせてこちらも剣をあわせて受ける、そのまま押し返すように力を込めれば相手は簡単にバランスを崩した。ガラ空きの胴を一閃し、一人減った。と思った時には左右から囲むように他の男達も近寄って来ている。


ぼくは囲まれる前に、少し後ろに引いて体制を立て直すと、囲まれないように左回りに敵を潰しにかかる。

さあ、もうちょっと頑張っていこうか。



「ふう。これで貴方だけかな」

リーダーっぽい人に改めて向き直り剣を向ける。

ぼくを囲もうとしていた3人は連携などしたことがないのかバラバラに攻めてくるため、ぼくが危惧したようなことが起こることがなかった。

思うに、今まで数に任せて相手をして来たのだろう。それに何というか相手を見ようと思うと時間がゆっくり流れるかのように、相手の動きがはっきりと見えるのだ。

神様の言ってたプレゼントかな?


「お前は、お前は何だ」

「名乗る程の者じゃないと言うか、名乗る名がないと言うか…」

一人残った盗賊が信じられないものを見るように聞いてくる、

まあ、真面目に彼に答えてあげる必要も無い。どうやら村の入り口の方から村長達がこちらに向かってくる気配もあるし、向こうも何とかなったのだろう。


「くるな。くるなああああああ」


馬を走らせ逃げようとしたところに難なく追いついて、後ろから首を撥ねとばす。

やっぱり身体能力はすごくアップしているみたいだ。騎手がいなくなって慌てた馬の手綱を持って少し走って落ち着かせ、そのまま村のみんなが集まり始めたところへ歩き出す。


今日は馬に始まって馬に終わるらしい。

お読みくださりありがとうございます。

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