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あ1  作者:
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八話:巨人

酒場の亭主、ヴァナディースはルトルフらと同行することになった。

これから先に待ち受けるサモステル峠。

彼らは歩いた。

酒場の朽ちた看板には、Welcome...と書かれている。その後の文字は消えて、読めない。

知る人ぞ知る、ドル砂漠の端にある人里離れた小さな町は、その短い歴史を閉じようとしていた。


「この看板...この景色を見るのも、最後か。」

と、ヴァナディースが呟く。


三人は、黙ったまま酒場を出た。


「ここら辺は、あたしも良く知っているんだよ。峠までなら案内できるよ。」

そう言うと、ヴァナディースは先頭に立った。


「オルキル、まさかサモステル峠へ?」

と、ルトルフが(ささや)く。


「その通り。帝国の軍隊は集合しつつあります。

奴らがゲベールへ進軍を始める前に、一度、あちらの将軍とも話しておきたいのでな。」

オルキルが返す。


一行は歩いた。

見渡す限り何もない、灼熱の砂漠だったが、ルフトルはゲベールのことを。オルキルは遥か遠き故郷のことを。そして、ヴァナディースはその強靱な体力で黙々と歩き続けた。

道中、干からびた動物の死骸や水たまりの跡がちらほらと見える以外の事は一切目に入らなかった。


「う..。」

と、ルトルフが漏らす。


「どうした?」

オルキルがすかさずフォローする。


「退屈だろう?あたしらはこんなところでも生きていくしかなかったんだよ。」

ヴァナディースはそう言うと、青く澄み渡った空を見上げた。

___そう、あの日までは。

アイツに住処を奪われるまでは...。


「あたしら?人の姿は無いように思えたが。」

と、オルキル。


「無理もないさ、あたしらと言っても、老人が1人と、若いのが数人。それと、年に数回あんたらみたいな旅人が来るよ。

この前、老人が1人出て言ったきり、戻らなかった。

あの謎の火の柱に巻き込まれて尽きたんだろうさ...。」

ヴァナディースはそう言ったきり口をつぐんだ。


2時間後、ようやく目的地にたどり着いた。


「ああああああああーーー!!」

と、ルトルフ。


「ん、」

と、ヴァナディース。


「疲れた。とにかく疲れた...。

指先はチリチリするし、口の中はカラカラだ。おかげに、砂塵がいくつか目に入った...。

これほど退屈な時間を過ごしたことはないんだ、ヴァナディースは、毎日こんなことを?」

ルトルフが不満の声を上げる。


「しっ!何か来るよ」

ヴァナディースは声を殺した。


岩陰に身をひそめると、オルキルのいる位置から、岩の隙間を通して、何かを見つめることができた。

2mか3mはあるであろう巨体が角を生やしている。腰に斧を巻きつけた奴もいれば、矢筒を背負った奴もいる。

どいつも、目をギラつかせて辺りをうろついている。


「ああ、まずいぞ、これは。」

と、オルキルが囁く。


「どうした?」

と、ルトルフ。


「あれはオークだ...。ああ、クソ!まずいことになった。

奴らは、獣人のオーク。しかし、何故だ?この辺りにはいないはず..。」

と、オルキル。


「オークだって?そりゃ、いいや。

オーウェンの町では、毛皮として高く売れるんだよ」

と冗談混じりにヴァナディース。


「とりあえず、逃げた方がよろしかろう?

我々では勝てる相手ではない。」

と、ルトルフをみながら、オルキルが言った。


「分かった、分かったよ...。」

ルトルフが呟く。


このまま眺めていてもいいか...。という訳にはいかない。

見つかる前に行動を起こさなければ。


「でも、ここの峠には番人がいてね...。

名前はヨトゥン。

オークよりも獰猛で、体も大きい。おまけに、いつも腹ペコの巨人族だ!」

ヴァナディースは叫んだ。


「あ、やばい。。」

ヴァナディースが言った時にはもう遅く、既にオークの数人がこちらを振り返っていた。

獣人は久々の獲物が来たと言わんばかりの形相で、斧を取り出している。


「まずい、奴らに見つかったら僕たちは...」

ルトルフは嘆いた。


「待たれよ、皆の者。

わしに考えがある。」

黙っていたオルキルは声を張り上げた。


「だ、だから、騒ぐなって。」

と、ヴァナディース。


それを無視し、オルキルは続ける。

「ヨトゥンといったな?

巨人族を利用すればいい。巨人族は、知性に乏しいとされている...。

オーク共を巨人の前まで引きつけ、エサが来たと思わせれば良いのだ。」


「名案!さっそく、やろう。

囮は僕にやらせてくれ」

と、ルトルフは飛び出した。


でも、どうすればいい?

何か奴らの気を引かせるもの......。

ルトルフは周りを見渡した。岩々に囲まれ、視界が悪い。

視界が悪い...?そうか!目を眩ませれば

一か八かだ!


そう決めると、実行に移した。


ルトルフは短剣を鞘から抜き、頭上に(かか)げた。

すると、降り注ぐ太陽の光が反射し、ヴァナディースへと降り注ぐ。


「ヴァナディース!この光を反射させるんだ」

と、叫んだ。


「オルキル、剣をもう一本くれ!」


やろうとしていることがヴァナディースに伝わった。

弱々しい光をガラス板で反射させる。

オルキルは短剣を一本、ルトルフへ渡した。


「よし、こっちへこい!」


ルトルフは二本の短剣を持ち、ヴァナディースが反射させた光を更に反射させ、オークの視界に入れる。

先頭のオークは驚いて斧を振り落としそうになったが、あわてて態勢を立て直した。視界が悪く、降り注ぐ光を頼りに進むしかないと分かると、オークたちは光をめがけて一直線に突進する。


上手くいった!ルトルフは確信した。

そのまま、太陽が当たる位置に移動し、短剣を使い、光をオークに当てて誘導する。

そうこうしているうちに、関所が見えてきた。


ルトルフはオークを誘導させることに成功すると、すぐ側の岩陰に隠れた。


オークは光を見失った。だが、後戻りをしたくない。久々の獲物!!という勢いで、正面の突進する。

その先には、腹をすかした巨人ヨトゥンが待ち構えていた。

オークは驚いた。まさか巨人に出くわすとは。


...............


しばらく間を置き、ルトルフは向こうにいる仲間を呼んだ。


「やるではないか!光を利用するとは」

と、オルキル。


「今のは、愉快だったよ。

さあ、今のうちに逃げ出そう」

と、ヴァナディース。


一行は、すぐ側で座り込み、戦利品にありつく巨人とおさらばした。

こうして、無事にサモステル峠を越えた。

キルティ帝国の領土が眼下に広がった。



八話です。

書いていくうちに、段々と構想がたってきました。

作中、経歴詐称の人のセリフに似ていたか箇所があったかもしれませんが、気のせいです。

それと、やっぱし短剣で光を反射させるって無理がありますよね...。

中学生の頭じゃ、これくらいしかいい案が思い浮かばなかった...。


※挨拶は省略させていただきます。


一応、このパートの主人公はルフトル王子なので、やっぱり活躍を見せたいなと思いまして。

よくある設定ですが、少年の主人公は、対して力はないものの、咄嗟に何かを思いついたりすることに長けていて、それが後々功を奏すっていう感じにしたかったんですよ。


それと、この物語のストーリーですが、最初は男4人でオープンカーに乗ってチャラチャラなノリで帝国まで行ったけど、間に合わずにゲベール襲撃されちゃうっていうストーリーを考えていたんですよ。


ただ、テンションおかしい奴と無駄にイケメンな奴とオラオラと頭よさそうな奴で旅するなんて、お笑いですよね。


やっぱり、男臭すぎるのもアレですし、そうかといってハーレムになってしまうと一気にアレなので、やっぱり少年と偉いおっさんと面倒見のいい姉ちゃんっていうこの構成が自分は好きですね。


アレってなに?

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