忠誠心
また異界編でごめんね!
___無の空間・ヘルの宮殿___
「やったか!」
ボッサが叫んだ。
「離れろ!」
シンモラが叫んだ。
やったか、なんて言うのは間違いだった。
足元に無数の亀裂が走っていた。
さすが巨人というだけはあって、重みに耐えきれなくなったダイアモンドが悲鳴をあげている。
束の間の再開を喜ぶ暇もなく、嫌な音がして四匹と三人と二体が落ちた。
___異界___
遂に犠牲者が出た。
そのとき、ヘイムダルの弦も切れた。
......例年より、はやい!
錯覚かもしれない。もしくは、神々が衰えているのかもしれない。
ともかく、今度のラグナロクの訪れは早かった。
あの日、無の空間でヒトがレーヴァテインを手に入れた。
それがきっかけとなり、一日もしないうちに異界は輝きを失い、太陽は落ちた。
一日中、夜なのだ。そして、毎晩のように割れんばかりの悲鳴が聞こえる。
神々、木々、河川、動物など全ての生を持つ者が嘆いている。
つまり、これがラグナロクなのだが、今度ばかりは勝手が違う。
ラグナロクを抑制する5つの神具が散りじりになったことで、今度の儀式は期限ギリギリになりそうだ。
その上、遂に第二のヒトがこの世界にもやってきて、レーヴァテインや神々と干渉した。
余裕を持っていたロキが慌てでもしたのか、今度のラグナロクは早い。
......これまで幾度となく滅亡を免れて来た神々だが、神具という後ろ盾をなくした今では無力に等しい。
死亡者が続出していた。
神々の秩序は踏みにじられ、巨人だらけの死体を踏んでいた巨人たちの足は、遂に神々の死体も踏むことになってしまった。
奴らはいつになっても進軍をやめようとしない。
......もう、後がない。
あと数時間もしないうちに、この防衛戦は突破されるだろう。
そうなれば、ヴァルハラの神殿とこの地を繋ぐ『虹の橋』が崩壊する。
そして、世界が炎に包まれ、沈む。
全て数千年前の子供の頃に聞いたことのある伝説だった。
それが、今まさに起ころうとしているのかもしれない。
ヘイムダルは神具の一つであるホウズを握りしめ、俺だけは何があっても死んではならない、と誓った。
「俺は世界の終わりを告げる天使になる予定なんだ」
と独りごちて、壊れた楽器を捨てた。
魔力を失ったそれを投げつけ、ヘイムダル自らが巨人に向かっていった。
___異界___
「久しいな、ロキ」
鳥男が喋った。
ユグドラシルの頂上に居座るこの男......。
癪に触る。
「そうは言いますけどね」
続きの言葉をこらえ、懐に隠した短剣を握りしめる。
「何?」
「あなたは自らを唯一神だと思っていられるようですが、魔力のほうは大丈夫で?」
「お前ごときが口にするな」
鳥男は答えた。
ロキは遥か下で行われている小競り合いを眺めた。
「それにしても、見苦しいものだ。こんなオモチャで、遊んでいる暇があるのですか?」
「知っているだろうが、......あれは不死身だよ」
鳥男は立ち上がって、ロキが指差す方をぼんやりと眺めた。
「着実に倒されつつあるようで?あなたは、いささか神々の力を甘く見ておられるようですな......。あなたの魔力にも限りはある。あれを生み出すのと、神々の抵抗。どちらが早く尽きるかはお分かりでしょうに」
ロキは語りかけるように呟いた。
鳥男の耳元で、嗾すような声が響く。
それが幾度となく頭に響いて、思考の邪魔をする。
「あれは時間稼ぎにすぎない。......ラグナロクが訪れるまでの」
そんな迷いを振り払うように、鳥男は断言した。
「勝つのは我だ。そして、お前たち雑魚の出番はない」
「提案をしているのです。......まじめに、きけ!」
ロキの言葉はそこで途切れた。
鳥男がロキの首を締め付ける。
だが、ロキは鉤爪のような鋭い爪が食い込むのにも気にしないで喘いだ。
「......どう、せ、あの時みたいに、俺を利用して......頂点にのし上がろうって......、のく......にはな、んの!」
言葉にならない。
だが、そこで苦しみは終わった。
「馬鹿な真似はよせ」という鳥男自身も、息切れを起こしている。
そろそろ、『霧の巨人』生み出すのも限界なのだ。
鳥男は巨人を生み出すだけでなく、それを維持して、一体一体の行動を全て管理しているのだ。
こみ上げる吐き気を堪えて、ロキは続けた。
「うまくいくと、いいですね。せいぜい祈ってますよ」
立ち去ろうとするロキに、鳥男は声をかけた。
「馬鹿なことをしたな、またミスをしたのか。お陰様で、ヘルのやつ、迷惑をしてるだろうな」
「分かってます」
ボソッと呟くロキに、追い討ちをかける。
「バルドルは殺せと言ったはずだ。......そして我は、三度目は無いぞ、と言ったはずだが」
「んなこと......あんたがやればいいでしょうに」
ロキが苦しい反論を返す。
「替え玉は山ほどいる。タダ飯を食っていられるうちが花だ」
鳥男が短剣ごときで死なないことはわかっているのだ。
こいつはレーヴァテインの炎に焼き尽くされた時、始めて生を終える。
鳥男を背に、ロキは拳に力を込める。
......もう少しの辛抱だ。どうせ神々のことだ、今回もラグナロクは訪れないに決まっている。
そして、役目を終えたレーヴァテインを持つじじいをこっちに持って来れば、俺の勝ちだ。
もう、俺は信用されていないのだろう。
こうなれば好きにやらせてもらう。
ロキはアンクルボダの形見、フェンリルを呼びだした。
......あいつのやり方は気に食わん。俺は好きにやる。
ロキは血を求めて旅だった。
もうここには用はない、と念を入れて。
当初はメインが現実世界の方でしたが、最近は異界の方を書くのが楽しかったりします。
更新がめっちゃ早いのは明日が休日だって分かった時の喜びに心が震えたからです(これ書いたのが水曜日)。
※挨拶は省略させていただきます
三文字きっかりのタイトルを考えるのに10分くらいかかるんですが。
ちなみに、今回の伏線?的なのはまあタイトルの話なんですけど、何で三文字にしたかは結構アホらしい理由です。
九話でしたっけ、あの話で三つの世界で動く三人目の主人公が決まったからです。
そっから三つの世界ってことで急に三文字きっかりになりました。
もっと何かあるって期待してた?
ふひひサーセン。
ちなみに冒頭の「やったか!」ですが、「やったか!?」では無いのでフラグじゃないよ。
もう何話目か忘れましたが、今更恐ろしいことに気づきました。
週間ユニークユーザーっていうのが表示されて、当初は105人とかそこらで土下座してました。
その時全然気づかなかったんですが、メニューの上の方にアクセス解析っていうのを見つけてクリックしてみたら前回のアクセス数が20人だったんですよね!?!?
これはつまり一回更新するごとに何人かいるんか!?って思って辿って行って、ドッキリカメラも驚きの、多い時には40回くらいのアクセスがありまして。
んでまあ、もっと下の方にトータルで五百回のアクセスがあったのを知って流石に驚いて禿げそうになった次第です。
指が頭皮に触れそうなくらい髪をかきむしったあげく、四回ジャンプして落ち着いた訳ですが......え?全部嘘ですってば。
実を言うと28話くらいから(つい最近じゃん)アクセス解析には気づいていて、トータルで数千人くらいいることには気付いていたのですが、その多くがミスタッチか新着から迷い込んで来られた子羊なんだと思うと胸熱ですよね。
そういった熱が顔の方までせり上がって来て「うーん」って唸ってキーボードに頭を数回打ち付けるという奇妙な時期を是非とも皆さんにも経験していただきたい。
恥ずかしすぎて頭の方まで熱くなってその影響でなんかタンパク質やら亜鉛やらがとけて髪が数十本抜け落ちる、というような不快な時期を皆さんにも経験していただきたいってね。
恥ずかしすぎてお風呂上がりのドライヤーのなんか先っちょのアミアミを髪の毛に擦り付けて遊んでたらなんか頭から焦げ臭いにおいがしてきたっていう奇妙で不快な冒険を皆さんにもしていっていただきたい。
そうやって髪の歴史は繰り返されて行くんやなって。
何いうとんねん。
ちなみにドライヤーで髪を焦がしたことはあります。
あ、禿げをよく使いますがふっさふさですからね。




