二十九話:記憶。
あらすじが復活することはありません。
「申し訳ないと思っている」
彼女から出た言葉は、意外なものだった。
「お前を選んだのは、私だ。結局はお前を利用することになった。その上、バルドルを糧にして今ここに立っている、無力な神だ」
ボッサは突然のことで戸惑い、そしてレーヴァテインを見つめた。
ぼうっと淡く光る赤に照らされた地面......。
「シンモラ......」
ふと思い返すと、もう故郷の記憶はなかった。
頭がラグナロク、という五文字で占領されている。僅かな記憶をたどって行くと、その片隅にシンモラとバルドルが対立していた。
「お前を殺したのも、私だ」
「何を?」
「私はお前を殺した」
「気づかなかったろうが、神具は所持者に力を与える。だがそれには代償が付く。神具は徐々に所持者の命を削る」
淡々と言い渡された。
ボッサはさらに困惑した。
頭で何かが切れた。
「前に、お前は死んではいけない、と言われたのを記憶していますが」
「そうとも、お前が死んでどうする?私の利用する駒が無くなる」
......。
「言っておくが、お前は私の駒以外の何者でもない。だが、お前の力は強すぎる。だから私は見栄を張った。自分を偽り、無理矢理お前を洗脳し、従わせた。私には、それくらいしかできない」
「今ここで殺すなら殺してくれてもいい。だが、お前の裏切りのせいで世界が一つ壊れるということは覚えておけ」
そういうと、シンモラは背を向けた。
似合わない鉄槌を背負い、素早く顔を背けた。
「それではバルドルは、何のために......。あなたのために死ぬことなんてなかったでしょうに」
シンモラは歩き続ける。
「言えよ!言え!」
怒声が響き渡った。
途端、握った手が震え、レーヴァテインが落ちた。
途端、膝の力が抜け、視界が朦朧とする。
「バルドルは死なない。あいつは、樹そのものだからな」
......は?
声が出ない。
視界が暗くなり、体が横たわる。
ボッサはそのままの姿勢で倒れた。
「バルドルは体が無い。だから包帯を巻いている。バルドルの包帯が解けた時、ユグドラシルは崩れ去る。あの癒しはバルドルの意図ではなく、本当に樹の危機が迫っている」
体が何かの手と触れた。
いとも簡単に体が持ち上がった。手に感触が蘇る。
目を開けると、レーヴァテインを差し出したシンモラが、いた。
シンモラが歩き続ける。
「お前は、それを手にしている限り死ねない。たとえ生命力が無くとも。そしてその剣の管理は私がしている」
「私が念じるか、私が死ぬか。それでお前の手からレーヴァテインは離れる。そうなればお前も尽きる。お前は今、レーヴァテインをとった。......私を見失うなよ。」
私にはもう、目が見えないから。という言葉を飲み込み、シンモラが少し微笑んだ気がした。
記憶にシンモラが追加された。
洗脳を受けていたとしても、それによって必要なことしか思い出せなくなっても、今はこれで十分だった。
バルドルには申し訳ないが。
___キルティ城下町・民家___
「それで、これは?」
ヴァナディースが机上の街区地図を指差す。
地図には、さまざまなところにバツ印が押されていた。
路地裏から下水道、脇道まで、全て男が調べたものなのだという。
......この際、明らかにさせてもらうが、男の名前はオッタルである。
「ヴァナディース!」
と、ルフトル
「なんだって!?」
と、オッタル。
色々カオスだった。
だが、小さな家の小さな庭で起きたことが、世界を変えるのかもしれなかった。
まず、ルフトルを押しのけ、男もといオッタルが駆け込んだ。
倒れているヴァナディースを家に運び、オルキルがそれにつづく。
ルフトルが最後に入り、鍵を閉めたのだ。
「うぐっ」
ヴァナディースが目を開けた。
彼女がまず見たものは、オッタルだった。
初めは幻覚かと思ったが、そうでないことに気づいた。
「ふぅ......」
という聞き慣れたため息を聞いたからだ。
そして天井に吊るされた明かりと、ベッドの感触。
ヴァナディースは飛び起き、まずオッタルをはたいた。夢でないことを確かめるためだ。
オッタルはヴァナディースが起きたことも知らなかったため、よろけ、倒れた。
ヴァナディースにも腰に懐かしい感覚が来て、倒れた。
そのままヴァナディースがオッタルを押し倒す形となり、そこを見舞いにやってきたオルキルが見た。
オルキルが驚きのあまり叫んで、それを聞いたルフトルに続いて、男の子、女の子がやってきた。
オルキルが、「世界が滅ぶかもしれん」といったところから、今に至る。
会議は始まった。もちろん男の子、女の子は隔離だ。
オッタルはところせましと地図に記されたマーカーの内、一つを指した。
「さっき分かったが、やつらは今日の朝早くに会合を開いた。恐らく、闇に乗じるために夜に出発する」
「なんで分かったのさ」
ヴァナディースがきく。
「空間操作でな」
聞きたかった単語にヴァナディースは顔を崩した。
「まだ使ってたのかい」「便利だからな」とよそで行われる会話に飽きたルフトルが続きを促した。
「俺らは奴らより先にゲベールへ着かにゃならん」
「どうやって?ここから徒歩で三日はかかるし、関所をこえないと」
と、ルフトル。
「だから、これを使う」
オッタルは足で床を蹴った。
バタン、と派手な音がして埃が舞う。
床が抜けたと思ったら、下の通路に繋がっていた。
「反乱軍のパイプだな。こいつがあれば半日では着ける......何事もなければな。山を一つ通りこしてまっすぐ向こうにつける」
誇らしげに言った。
「さあ、今からでも遅くはないぞ!荷物をまとめたやつから、行くんだ!」
声を張り上げた男が、大きめの袋をひっ掴み、梯子を降りようとする。
「待たれい!」
黙っていたオルキルがストップをかけた。
オッタルの手が止まり、全員がこちらを向いた。
「ラグナロクが来ている......力を借りたい」
「あたしらはそれで来たんだ。『大いなる光への帰還』を唱えてくれないか」
ルフトルが首を傾げ、オッタルが目を丸くした。
やっぱり作品を読んでもらうのって大事ですね。
某サイトに投稿したのですが、様々なご意見がもらえて発狂しそうです。
今更ですが、三点リーダーを二つ繋げて書く、ということにも気づけたので感謝ですねー。
それとやはり後書きに関して、無駄すぎるという意見がありまして、ちょうどネタも尽きたということなので今回から一切書かないように心掛けたいと思いますね。
当初はリアルで寂しかったので適当にこれが俺だあああ!っていうくらいの意気込みで(適当じゃないですね)書いていたのですがもう不要ですね。
投稿が遅れてしまった場合に関しては、少しばかり諸事情をお話しするかもしれませんが。
※挨拶は省略させていただきます、という定型文も要らなくなってスッキリです。
※挨拶は省略させていただきます。
さて、もう二十九話ですね。
先程のお話にも繋がることですが描写不足とのご指摘もやはりあったので、今回から(二十話くらいから気合入れて書いていたつもりでしたが)そういったことも意識して書いてこーってことでね。
二十九話目にしていうことでもない気がしますが、キャラが薄いだの設定が無茶苦茶だのといったのを直すのは骨が折れますね。
次回作からはそういったこと含め根本的に考えるってことで(逃げ)。




