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あ1  作者:
29/35

二十八話:霧の蛇

学校でエロマンガ先生のEDが流れました。

クラリスじゃねーじゃねーか!

___無の空間・最下層___


蛇は不満気に二股の舌をうねらせた。

ただでさえ長い舌が、大きなうねりとなり、先から唾液がほとばしる。

どうやら、あのオーディンの使いのエランドは言うことを聞かなかったようだ。

初めに三つの泉で啓示を受けろ、と言ったはずだったのに、恐らくムニンに洗脳されて本来の使命を全うしつつある。

そして、あの二匹の狼が絶えず語りかけ、本来なら無数にある脇道に向くはずのエランドの注意を逸らしているのだ。

これでは、意味がない。


蛇は生前の記憶を辿った。


家族を失った蛇は荒野を進んでいた。

ある日、耐え凌げなくなった飢えに襲われ、近くの村に食べ物を求めにいった。

あの時はまだ、人間と動物が通じ合える時代だった。


人間は動物を理解することができたのに、今ではその本能を無駄なものと捉え、それをやめてしまっている。おかげで、良き友だった動物たちは今や家畜だ。

話がそれた。


しかし村人たちは、蛇に心を開こうとしなかった。

当時凶暴だ、と恐れられていた蛇は、ここでも存在を許されなかった。

蛇は逃げ出し、近くの森へ隠れた。

数日か経ったある日、蛇を恐れた村人は村で有名な狩人に「あいつをどうにかしてくれ」と頼み、狩人は快く引き受けた。名をバルドルと言った。

やがて蛇は狩人に捕らえられた。

だが、狩人は蛇を殺そうとはしなかった。そして、縄で縛り付け、小屋に連れて帰った。

狩人は蛇を哀れんだ。

蛇には食住が保証された。

また、その環境の中で蛇は多くのことを理解した。


傲慢だった蛇は、思いやりを学んだ。


無鉄砲だった蛇は、深く考え、理解することを学んだ。


そして蛇は、上には上がいることを学んだ。


数年後、逞しくなった蛇を見て、バルドルは更に嘆いた。

蛇は教えを破り、傲慢な上、無鉄砲で、いつも頂点に立つのが自分だ、と考えるようになっていた。


ここまでが、記憶だった。


しかし、記憶は続いた。


蛇はバルドルと共に神々の住まう異界へと旅立った。


倒れる木々、燃え盛る炎、叫びまくる誰か。


そして蛇は、顔という顔に追い詰められた。

人の形をした悪魔だった。

バルドルは蛇をかばい、蛇は無の空間へ封印された。そして、蛇は不死となった。


やがてバルドルが三つの泉を作り、そこに霧となったものたちを住まわせた。

霧は魂として泉にとどまり、無の空間を支える力となった。


蛇は泉を守りながら、客を待った。

自分をこの泉から解放してくれる客を。

蛇は生きることの楽しさを知らなかった。でも、今は違う。

生きたい、という想いが蛇をいっそう駆り立てた。

他の泉に住まう者たちの考えも、同じだ。



この無の空間には、現実世界で死んだ者たちが霧となり集まるのだ。

泉に住まわされた者は自由を許されない代わりに、永遠を約束される。



生者が霧と干渉する、すなわち、生と死が混じり合うと、理が乱れる。


バルドルに会いたい。



___キルティ城下町・民家___


オルキルは少女の口を押さえた。

少女は驚き、なおも抵抗を試みたが、失敗に終わった。

『眠り(スリープ)』がかかったのだ。


ヴァナディースはというと、目一つ動かさず、人生初の木登りを堪能している。

目一つ動かさないのではなく、動かせない。

落ちちまうと、やっぱ痛い...よなぁ。そんなぼんやりとした考えが浮かんでから数分、手と足が全く動いていない。



___


「で、剣は?」


「だから、これだと言ってるだろう?」


そんなやりとりが数回続いている。

ルフトルは首を傾げ、男は切っ先のない剣を指し。


「いつの間にクルタナを盗んだのですか?」


「つくったんだよ」


「クルタナを?」


「ミスリルバージョンだ」


しばらく沈黙が続く。

それを押し破るように、というか場の雰囲気に耐えきれなくなった男の子は扉を開けて出ていった。


ルフトルはクルタナを鞄から引っ張り出し、『ミスリルバージョン』とを比べた。

刃渡りまで同じなのですね、という言葉を飲み込む。

やっぱり、ミスリルでクルタナをつくったんだろうか。


「刃渡りまで同じなんだ。俺の最高傑作」

男がぶっきらぼうに呟いた。


男は厚手の手袋をしていた。手袋には所々穴があいており、かなり色褪せている。

工場のようなにおい。それを代表するかのようにどーんと構える男は、苦労を全身に纏わらせていた。


「あ、あの」


それと同時に、鳥がさえずる。

いつのまにか、窓のさんに止まった鳥は目をパチクリさせながら鳴いた。

男はそっちにほうに気を取られて、「おー、よしよし」などと呟いている。


間をおいて、ルフトルは声を張り上げた。


「あのっ!」

「申し訳ない!」


二人の声が重なり、さらに雰囲気を悪くさせる。

鳥は驚いて、どこかへ消えてしまった。

しかし、そんなこともいとわない二人。


「ありがとうございました!」

「でも、結構がんばった」

同時だ。


「礼なんかいい」

「分かってます」

ルフトルが少しはやい。


「とほほ...どうせ俺なんかがつくると...」

「あはは、そう言うと思ってました」

男が少しはやい。


「え?」

「え?」

え。


それで終わった。


今度はちゃんと、タイミングを見計らってルフトルが口を開こうとした瞬間、悲鳴が聞こえた。


男が真っ先にハンマーを掴んだ。ドアを蹴破り、「何事だ!」と出て行く。

ルフトルもクルタナとミスリルバージョンを手に、続く。


玄関先で、女の子と男の子がくたばっていた。


男がきくと、二人同時に指をさして「へ、へんな人が」と、必死に訴えた。

血相を変えて飛び出した。ハンマーを振りかぶり、「さあ出て来い」と言う様子だ。



___


まずいところに来ちまった。

ヴァナディースは焦ってがむしゃらに枝へ枝へと登って行く。

オルキルはどう、なった...?


ふいに、ドアが勢いよく開く音がした。


続いて、さっきの二人。

「へ、へんな人が」


オルキルがしくじった!

下を向いたら死ぬ、下を向いたら死ぬ。

そう言い聞かせて一目散にてっぺんを目指す。


...見えた!

右上の枝に足をかけ、腕で体を引っ張り、てっぺんの枝に...。

あ。


一瞬で世界がひっくり返った。

ふわああっっと情けない声を上げて、落下した、と思ったら背中に激痛が走る。


「ヴァナディース!」という聞き慣れた声を聞いたのを最後に、気を失った。



___ゲベール軍・ソリッド隊___


「砦の建設を急げ!」

ジャッジ隊長が指示を下す。


ついさっき、ワイド河に到着したところだ。

まずは、砦をつくり、相手の出方を伺う。

『火薬』が届き次第、それを橋に取り付け、燃やす。

これで敵の進路の妨げにはなるはずだ。

この大河を泳いでくるやつは、まさかいない。


しかし、ふと気になった。

この大河は、広すぎるのだ。


向こう岸が辛うじて見えるくらいの奥行きがある。

続々とやってきた後続の兵士たちが馬を降りて、仕度を整えているが、せいぜい、300人といったところか。

300人でこちら側を取り囲めるのだろうか。

もし見逃しがあれば、敵は本当に泳いででもやってくるだろう。

奴らの執念は凄まじいのだ。

しかも、この河が彼らの崇める聖地の1つなのだから。


ミーミルの滝、と呼ばれていたはずだ。



___キルティ軍・レベ城跡地___


焼け崩れた家々は撤去された。使えそうな建物には布が張られ、それが日光を妨げている。

しかし、兵たちはやつれていた。


「負けるな...」

誰かが言った。


二千の兵は、ようやく完成した(スノー)に乗った。

(スノー)さえあればサモステル峠をこえずとも、海を渡って南の大陸にたどり着ける。

しかし、たどり着けるのが問題だった。

まず、(スノー)に詳しいものが誰一人いないのだ。

舵のとりかたすら分からない全員を一つの(スノー)に乗せていくのだ。

いくら大型船とはいえ、限界だった。

途中で嵐にも会い、こちらに上陸するときには約5分の1を失っていた。


そして、上陸後。

残っていた反抗勢力がいた。

相手は一人にも関わらず、こちらの20人ほどがやられた。不幸は重なり、その20人の中に二千人を指揮するぺフェ伯爵がやられた。


相手にも逃げられた。矢を四本受けたにも関わらず、体を酷使しドル砂漠を横断したのだ。

追跡はそこで諦め、ゲベールへ去って行く相手をただひたすら見ていた。

追跡した兵が戻ってきた頃には(今やここからでも観測できる)ゲベールとレベの横断に必要なワイド河が占領されていた。

追跡者五名は戻ってきていない。


兵の士気は下がり、みなが戦意を喪失している。

1000以上の兵といえど、これでは宝の持ち腐れだ。

士気をあげるべく、最初から加わっていた司祭たちも、遂には神の教えとやらを放棄し、自ら海に身を投じる者もいた。


「情報と違うぞ!」では通用しない現実を目の当たりにした。

ゲベールはずっと前にレベ城がおちたことを知っていた、と考えるほかなかった。





※挨拶は省略させていただきす。


投稿直後に気づけてよかった、タイトルが三十八話になってました。


リアルの話になりますが、きのこが大嫌いです。

やっぱりきのこ無理って人は結構いるのでは?

まず見た目からして無理ですよね。あと、くさいし。

小学校の給食でかなり頻繁にしいたけが出てました。

うどんに入ったしいたけとか誰得だよ。...あ、きのこ好きな方申し訳ないです。


そんなこんなあって、きのこの山とたけのこの里は断然後者です。


ついでに、蜘蛛も大嫌いです。蜘蛛恐怖症です。


ところで三十話に完結できるのか怪しくなってきました。

今度は逆に書くことが多すぎて、あと二話じゃ足らないかも。

いつも見てくださっている方がどれほどいらっしゃるか存じませんが、その気なのであればもう少しだけ地獄に付き合ってください。


追記です。

ちょっと豆知識ですが、みかんの白い筋?みたいなの

アルベドっていうらしいです。


そして分かりにくい点があったので補足です。

冒頭で蛇がなんやら語ってますが、蛇は既に死んでいます。

本文にも記してありますが、分かりにくければ要約したので読んでください。


嫌われた蛇はバルドルに拾われる。

バルドルは成長しない蛇を殺してしまう。

蛇は異界に行ってバルドルの教えの意味を理解する。

バルドルは蛇を無の空間に、守護霊?として封印した。って話です。



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