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あ1  作者:
22/35

二十一話:錬金術



___無の空間・最下層___


ゴゴゴ...ググググ...。

ガガ......。


地鳴りがする。


エランドは咄嗟に武器を構えた。殺してやる。

殺す...あの男を殺してやる。

確証はない。そもそも、あの男が何者なのかさえ分からないのだ。人ではないのかもしれない。

だが、こんなことになってしまった以上は仕返しをしてやらなければいけない。


そういえば、こうなったきっかけは?

...そうだ。父は愚かだった。ゲベールなどという雑魚に手をかす協定を結んでしまった。

キルティを裏切り、ゲベールについてしまった。そのせいで、キルティの兵士がレベ城に押し寄せたり、市民を人質に城の人間を脅したりもされた。

定期的に配給する物資が底を尽きそうになれば、やりくりをしていた。食事が質素になり、城には塵が積もることになった。

何故、ここまでしてあいつはゲベールに手を貸し続けた?

馬鹿な奴だ。そのせいで、俺は今、こんなにも苦労をしているんだ。


よし、男をやる前に、ゲベールを燃やしてやろうか!

それで、あの世から愚かな父を引きずってきて、目を固定してゲベールが燃える様を眺めさせてやろう。


復讐心がふつふつと沸き上がり、彼は戦慄した。

だが、笑っていた。

その笑みは、恐怖に支配された者の顔だった。


二匹の狼と、一匹のカラスは、彼を注意深く見守っていた。



___キルティ領・渓谷___


「ヴァナディース...またの名をフレイヤ。あんたが」

オルキルが呟いた。


彼は次第に容態が良くなった。

少なくとも、人並みに喋ることができるようになった。

下半身から流れ出る金色の液体が固まり、それが心身を活性化させている。


「あたしもさ。さっき気付いた。あんた、トールってんだ」

ヴァナディースが呟く。


神たちは、岩にもたれかけ、ただただ疲れ果てた体を休めた。


オーディン神を始めとする『アース神族』。そして、神々の敵『霧の巨人』たち。

その間に位置する『ヴァン神族』。

アース神族のオーディン神、トール神、ヘイムダル、そしてバルドル。ヴァン神族のフレイヤ神。

それぞれ位の高い神が、神具を用いてラグナロクを抑制する。

これまでも、ずっとそうしてきた。


だが、お互いに顔を合わせたことはない。アース神族とヴァン神族の関係は良いものとは言えないのだ。

だから、ヴァン神族のフレイヤ神が主要5神の内に加えられ、和親を結んだ。それが最近だ。


「会えて嬉しい」

オルキルには、それしか言えなかった。



「ラグナロクが近づいている」

オルキルはゆっくりと言った。


「だろうね」


「帰らなければ。もう諦めろ」

オルキルは諭した。


ヴァナディースはとある目的で、数百年前にこの世界に降り立った。

人探しだ。

オーウェンで店を開き、情報を待ち続けた。が、それらしき情報も、手掛かりもないまま、年月が流れた。


「ああ」

と、ヴァナディース。


「実は、ここにいるのが分かったのさ。あたし、あんたらについて行けば会えると思った。どうせ魔力もないだろ?あいつなら......そうだね、まあ、元には帰れると思う。ルフトル優先で、付き合ってもらうよ」


___キルティ城下町・民家___


しばらくすると、男が戻ってきた。

満足げな笑みだ。成功したのだろうか。


「一晩で済ませる。まあ、腰掛けてくれや」

男はルフトルに言った。


断ることができず、座った。

ふと見ると、茶色の液体を何か容器に注いでいる。丸く、出っ張りが付いている。

変なの。


「変なの」

また、思っていることが出てしまう。


男はニヤニヤして言った。

「あ?知らんのか?無理もない」


それは、紅茶と呼ばれるものらしい。

苦い飲み物のようだ。だが、ほんのりと香り、それが美味しい、と。

苦味が、おいしい?


容器を、カップというらしい。

これに注いで、口を付けて飲むそうだ。


「遠くの遠くの、はるか彼方から伝わったものだ」

と、男は言った。


ルフトルには初めてのものばかりだ。こっちに来てからは、料理においてもワンランク上。合成タンパクなどと違い、本物の肉が使われている。

ここに住みたい、とさえ思った。世界は広い...。



一息つくと、男が話を持ち出した。


「あのな、俺は魔法使いじゃない。錬金術師だ」

神妙な口調で、ゆっくりと喋る。



「錬金術師...ってのはまあ、簡単に言うと...そうだな」

男は空の箱を取り出した。


「よく見てろよ」と、男が木箱を掴む。

素人でさえ分かるほどだ。エネルギーが魔力のそれとは違う。周りの空気が、一瞬にして圧縮される。

次の瞬間、木箱は木刀へと形を変えた。


!?


「驚きなさんな。見てたろ?これは初歩の技だが、こんな風に物体を変化させることができる。物質の粒子を入れ替えて、形状を変えるんだ。これを錬金術と言う。」

と、男。


魔法といい、錬金術といい。

おかしなことだらけだ。

目の前の男が、急に大きく見えた。自分が小さくなったのかもしれない。

世界は広い。改めて、実感する。


「ただ魔法とは違う。魔法はな、作り変えるんじゃなく、物体を生み出すんだ。ここが違う。この木刀を生み出す時、錬金術師は木をつくり変える。これが魔法になると、何もないところから、木刀そのものを作ってしまうんだ」

と、男。


なるほど。これは理解できる。

だが、同じことをするんなら、魔法の方が便利なはずだ。


話は続いた。


「ところが、ぎっちょん!...あ、この言い回しも伝わってきたものだ。さて、ところが、使い分けが必要な場合だってある。お前は牢屋にいただろ?あの場合、俺は床を泥に変化させて、お前を救出したんだが、魔法じゃこれができない。わかるか?」


わからない。


「つまり、魔法は、生み出すことはできても、壊すことはできないんだ。錬金術は物体を変化させるが、魔法はエネルギーを形成して...例えば、火なり水なりを生み出すことしかできない。当然、生み出された火は消えないし、水を吸うことだってできない。床の場合も同じだ。既にあるものを無くすことはできない」


そうか。じゃあ、破壊と生成を両方できる錬金術の方が便利だ。


「でも、そうとも限らんぜ。どうせ、錬金術の方が便利だって思い始めてる頃だと思うから断っておくが、錬金術は、完全に変化させるまで時間がかかる。お前を救うのだって、土が変化するまで小一時間待ってたんだ。ミスリルもそうだ。一晩かけないと、剣にはならない」


...ルフトルはようやっと理解したらしく、猿のように、しきりに頭を上下して好奇心に目を光らせている。



錬金術とは、既にあるものを変化させる術。物体やら物質やらを変化させる。

魔法と違い、それには時間を要する。

また、錬金術師にはエネルギーを操れる能力が無いため、元となる物質が無ければ、役たたずのローブ着たオッサン、オバハン。


魔法とは、既にあるものを必要とせず、自然のエネルギーと使用者の生命エネルギーを融合することで成せる術。融合エネルギーをつくりだす。

錬金術と違い、物体を変化させる(壊したり、形状を変えたり)ことはできない。

また、エネルギーを融合して作り出したそれを打ち消すことはできない(火を出すと、消せない。水を出すと、吸えない。蒸発しない。自身を強化する魔法をかけると、効果は打ち消されないかわりに、自身の生命エネルギーがどんどん吸われ危険な状態に陥ることもある)。



「だが!これには例外がある。古の魔法(暗黒魔導や聖魔導とも言われる)においては、これらの理を全て無視することができる...らしい。そんな魔法があればの話さ」


男が無意識のうちに立ち上がり、小一時間熱弁をふるってしまったせいで、すっかり紅茶は冷めてしまった。

一気に飲み干すと、なるほど。不味い。


「さ、オッタル先生の授業は終わり!帰った帰った。その木刀はあんたにやろう。魔法の練習にでも使うといい」

男は飲み干すなり、立ち上がった。


ルフトルを押しのけるように玄関扉まで行くと、バタン!と扉を開け、ルフトルを強引に掴み、放り出した。


「アドバイスを1つ!魔法について俺は詳しくないが、言えることが一つあるぞ。イメージするんじゃなくて、周りに呼びかけるんだ。空気がこう...いい感じになったら、自分のエネルギーを放出するような感じで、こう、グイーーッとな!そうすることで初めて、融合エネルギーが生まれるんだぁっ」

男は変な調子で語尾を強調した。


バタン!やはり勢いよく扉が閉まる。

...いつも、ああなのだろうか。ルフトルは呆れてしまった。グイーッとか、バーーッとかで分かるわけがない。

来た道を思い出し、宿に帰った。



男は、間違えてキツイ酒を注いでしまった。

それに気付いたのは数時間後だった。


そして、ルフトル自身も、男の名に気付かなかった。

数時間後、彼は宿に帰りボヤ騒ぎを起こすことになるのだが、彼もまた酒を飲んでしまっていた。





※挨拶は省略させていただきます。


さて、またデータが消し飛んだので投稿が遅くなってしまいました(テスト勉強してたってのもありましたが)。

もし見てくださっている方がいらしたら、毎度毎度、僕の不注意です。すみません。

PCの起動が面倒臭いので、スマートフォンから投稿していました。


午後の紅茶くらいなら飲めます(レモンのやつ)。


さて、二人の正体、神話に詳しい方なら最初から分かっていたのではないかと思います。

オルキルはともかく、ヴァナディースでウィキったらフレイヤが出てくるので...。

つまり、それほどのにわか知識でここまでやってきたってことです。


今回は、魔法等の作者が設定した細かいことを中心に話を進めて行きました。本文見直しましたが、中二病末期みたいな文章で申し訳ない


何故か今作を完結させる前に、次作(予定)の構図を考えてしまいました。

結構出来上がって来てます。

今作の方はもうすぐ終わりそうなんで、ゴリ押しする予定。

全て予定ですが、気が済むまでとことん投稿するつもりです。


ってなわけで21話はこれにて。


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