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9話

私が朝食を終えると部屋のチェックインをして出発する。


ウィルとルアンさんとまた三人で馬車に乗った。御者さんが馬を走らせて動き出した。

「…それにしたって三日かかるというのは本当だったんですね」

私がぽつりと呟くとウィルが最初に反応する。

「イルゼ様。わたしの言うことは嘘ではありませんよ。昨日にそう申し上げたはずです」

「それはわかっています。けど、ウィルさん。私は付いていく事に了承しただけですよ」

「なるほど。イルゼ様はアマーリエ侯爵の娘になるつもりはないと仰せですか」

ウィルが冷たい目と口調を私に投げ掛けてきた。それにむかっときて睨み付ける。

「ええ。アマーリエ侯爵の娘としてまだ振る舞う気はありません。それに母さんと姉さんはどうしているんですか。もしや、危害を加えたりしていないでしょうね?」

「…それはどうでしょうね。ただ、ルイーゼさんといリア様のお命は無事ですよ」

「あなたの事は今一つ信用できません。ウィルさん、母さんと姉さんに何かすれば。私は二度と婚約者候補にも侯爵様の娘にもなりませんから」

きっぱりといい放つとウィルは目を見開いた。そして、声を出して笑いだしたのだ。

「はは。たかが、二十歳の小娘に何ができるんです。わたしはたまたま、あなたが侯爵の実の娘だとわかったから迎えに来たまで。あなたの代わりなどいくらでもいます。思い上がらないでいただきたい」

「ウィルさん。確かにその通りでしょうね。けど、二人に手出しをしたら私は絶対にあなたや侯爵様の言うことは聞きません。それだけは譲れませんから」

精一杯虚勢を張って言う。ウィルはそんな私をへえとおかしそうに見てくる。

「なかなかに賢い娘さんのようだ。けど、あなたの思っている以上に貴族の世界は複雑だし厄介ですよ。それは覚えておかれた方がいい」

私はウィルの言葉に頷く事も否定する事もしなかった。それをルアンさんがはらはらとしながら見守っていたのだった。



あれから、ウィルとはろくに口をきいていない。ルアンさんが気を使って話しかけてはくれる。それに答えたりはするので馬車の中はまずまずの雰囲気だった。ウィルもあの時以来、自分から話しかけたりしない。

せいぜいが宿屋に着いた時などに声をかけるくらいだ。それでも、ルアンさんから彼には注意するように言われている。警戒してしまうのは仕方ない事だった。



「イルゼ様。後数時間で侯爵邸に着きますよ」

ルアンさんが教えてくれた。

今日で早くも三日が経った。ウィルも不機嫌そうではあるが少しほっとしたらしい。そっと息をつく。

私はそれを目の端で捉えてすぐに窓に視線を移した。アマーリエ侯爵の領地に入ったらしく田園風景が続く。

「ルアンさん。アマーリエ侯爵邸に着いたらお別れになるのかな。そうだったら寂しくなるんだけど」

「そんな事はありません。イルゼ様のお世話は邸に着いてからもわたくしの担当になりますよ。ですからご安心ください」

「そう。よかった。知らない人だったらどうしようかと思っていたから」

私があからさまにため息をつくとルアンさんはまあまあと宥めてくる。

「大丈夫ですよ。侯爵様は穏やかで優しい方ですから。ルイーゼさんを大事になさっていたから実の娘であるイルゼ様を粗略にはなさったりしませんよ」

そうだねとルアンさんの言葉に頷いた。

ウィルも私をじっと見て口を開く。

「イルゼ様。旦那様はあなたを裏切ったりはしませんよ。ただ、親戚の方々には注意をしてください。何を言ってくるかわかりませんから」

「忠告をありがとう。気を付けるよ」

一応、お礼を言うとウィルは目を見開いた。

「へえ。イルゼ様がお礼をね。わたしはあなたを誤解していたようです」

ウィルは呟いたけど私は聞かなかった事にした。ルアンさんは苦笑しながら見守る。

こんな光景に少し慣れたと思った頃に馬車が停まったのだった。

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