17話
私もウィル先生の授業が始まりまずは歴史の講話を聞いた。
「このオークレール王国は昔、高名な魔術師と剣士、聖女の三人によって創建されました。初代国王は剣士であり王妃が聖女です。現国王陛下はその血筋を引き継がれ聖女の持っていた予知の力を所有なさっています。王太子のローレンツ殿下も魔力が強くて白魔術がお得意ですね」
「先生。聖女様は予知の他にも何かおありだったのですか?」
「そうですね。聖女は治癒や攻撃魔法にも優れておられたと聞きます」
ウィル先生はすらすらと答える。私は聖女のすごさに感銘を受けた。
イリア姉さんもへえと言っている。二人してこういう騎士物語などが好きだった。
授業とはいえ、ウィル先生の話はわかりやすくて面白い。すぐに興味を持ってしまう。
「先生。王太子殿下は婚約者探しをなさるために夜会を開かれると聞きました。イルゼにも招待状は届くのでしょうか?」
「はっきりとは言えませんが。おそらく届くでしょうね」
「わたし、イルゼが夜会で失敗をしないか心配で。先生、そんな事がないようにこの子を鍛えてやってください」
「…わかりました。善処はしましょう」
ウィル先生は頷くと掛けている眼鏡をくいと押し上げた。授業は再開されたのだった。
三日後、夜会のためもあるからとメイド長や他のメイドさん達がお針子さんも伴って私の部屋に来た。姉さんと母さんもいる。
私達三人分のドレスが必要なのでドレスショップの店長も来ていた。
まず、好きな色の布地やデザインを選ばせてもらう。主にこれは母さんがやってくれた。次に体の採寸をやってもらう。メジャーで首や腕などのサイズや長さなどを測っていく。店長やお針子さんはそれらが終わると後日に裁断して仮縫いをしにまた来ると言って帰っていった。それを見送るとルアンさんや他のメイドさん達からお疲れ様でしたと声をかけられる。
母さんも自分のドレスを三着ほど注文していた。こちらも疲れぎみなようだ。
「イリア、イルゼ。今日は夕食を二人でとって。わたしも疲れたわ」
「わかった。母さんもお疲れ様」
「ええ。じゃあ、もう部屋に戻るわ」
母さんはそう言って部屋を出ていく。
夕食を二人でその後とったのだった。
あれから、一週間後にドレスショップの店長とお針子さんが裁断して仮縫いしたドレスを持ってきた。
そうして、鏡の前で仮縫いしたドレスを着せられた。母さんとメイド長だという女性の二人でデザインやサイズを話し合う。
お針子さんが店長や母さん、メイド長の指示を受けて手直しを施していく。
ああでもないこうでもないと三人は言い合う。お針子さんはただ黙って腕を動かす。
「イルゼの場合、胸元や腕の部分は細かいレースを入れましょう。あまり強調しない方がいいわ」
母さんが言うとメイド長も意見を出した。
「イルゼ様はもう成人しておいでですから。少しくらい胸元を見せても大丈夫でしょう」
「けど、品位というものが求められるし。イルゼは普段から肌を見せたがらないのですよ」
二人が言うと店長が割り込んだ。
「…でしたら。イルゼ様のドレスは胸元をレースにして腕を出すようにしたらいいかと。上に羽織るショールもこちらで用意します」
「あら。店長さんが言うのもいいわね。後、イリアのはどうしましょうか?」
「イリア様は背が高くてすらりとなさっています。色も濃い藍色でシックなものにしましょう。イルゼ様は山吹色の大人っぽいもので良いと思います」
店長が言うとメイド長も母さんもへえと頷いた。さすがにファッションのプロだ。
私は感心しながらもじっと動かずにいる。姉さんも同様だ。
仮縫いしたドレスから普段着のワンピースに着替えた。姉さんも同じようにして自室に戻っていった。ルアンさんの淹れてくれた紅茶を飲んで一息ついたのだった。