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16話

翌日にイリア姉さんとルイーゼこと母さんは改めて父上に挨拶をした。


父上は母さんを見てかなり驚いた顔をしていた。

父上はしばらくそうしていた。その後、母さんの手を握って感無量の表情をした。

『元気そうでよかった。ルイーゼ、病にかかっていないか心配していたんだ』

父上はそう言って数十年ぶりの再会を喜んだ。姉さんも私も泣きそうになったのは内緒だが。



あれから、一週間が過ぎた。私がアマーリエ侯爵家にやってきてから九日目に入っている。イリア姉さんは私よりも熱心に先生たちの授業を受けていた。先生たちもやりがいがあるみたいで姉さんをしきりに褒めていた。私も頑張ってはいるが。姉さんに追い付けないと思った。

さすがに侯爵家で過ごしていただけはあると侍女のルアンさんが言っていた。私はそれには驚いた。

ルアンさんに尋ねたらイリア姉さんは侯爵家に三歳か四歳くらいまでいたから少しは記憶があるはずだと教えてくれた。なるほどと納得したのだった。


翌日も姉さんと一緒にオリビア先生やサラディアナ先生、ウィル先生の授業を受ける。最低でも一年は勉強を続けてもらうと父上からも言われていた。

「イルゼ。オリビア先生たちは厳しいわね」

「うん。けど、私たちを教えて磨きあげようという気持ちを感じるから。頑張らないといけないわ」

「ふふ。その通りね。わかった、わたしも頑張らないと」

二人して笑い合ったのだった。



半月が経ち、イリア姉さんや母さんも侯爵邸に慣れてきたようだ。三人で朝食や昼食、夕食も一緒にとる。

住む場所は変わったが。それでも穏やかな毎日がやっとやってきた。

父上も時間が空けば、食事を一緒にとる。私やイリア姉さんの勉強の進み具合をよくきいてくるので二人してそれなりにはと答えていた。

今日も母さんと姉さんとでテイータイムだ。ルアンさんが淹れてくれた紅茶を飲みながら会話に花を咲かせていた。

「イリア、イルゼ。二人とも礼儀作法が身についてきたわね」

「うん。これもオリビア先生やサラ先生のおかげね。ウィル先生も厳しいけど根気強くつきあってくれるし」

イリア姉さんがにこやかに答える。私も頷いた。

「そう。それはよかった。けどわたしはなかなかできそうにないわ。夫人としての仕事は多岐に渡るから覚えるのも一苦労よ」

母さんはそう言いながらため息をつく。私と姉さんは何とも言い様がなくて紅茶を口に含んだり茶菓子をつまんだりする。

「…母さん。わたしがいうことでもないけど。侯爵様にふさわしくあろうと決めたのは母さんでしょ。頑張らなかったらきっと後悔する事になるわ」

「イリア…」

「ね?もう少し頑張ってみて。母さんにやってもらわないと誰がやるの」

イリア姉さんが励ましの言葉をかけると母さんは涙ぐんだ。

「イリアも大きくなったわね。そんな事を言えるようになるなんて。わかったわ、もう少しだけでも頑張ってみるわね」

二人が笑い合うと私もほっと胸を撫で下ろした。姉さんは少し強引な所があるが根は優しい人だ。母さんは昔から苦労をしてきているから姉さんも心配をしていた。

私もそれを見てきているからあまり負担を掛けさせたくなかった。もっと、勉強や礼儀作法の習得を頑張ろうと思ったのだった。


その後、ティータイムを終えて母さんは自分の部屋に戻っていった。姉さんと私は午後からのウィル先生の授業に向けて準備をした。それが終わると応接間に向かう。

しばらくしてウィル先生がやってくる。

「こんにちは。今日もよろしくお願いします」

「はい。お願いします。ウィル先生」

私が返事をするとウィル先生は頷いた。そうして両手で抱えていた紙束を机に置く。

それから今日の課題を差し出した。私と姉さんは受け取ると鉛筆を手に取った。

授業が始まったのだった。

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