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七人の米神

 米神荘に向かうバスの中。

「本当に芽衣姉さんがあんなで、ごめんなさい」

「別に……ちょっとびっくりしたけど」

 って、隣の席のひかりさんが険しい顔でこっちを見ている。

「えっと、何か?」

「神代さんって……ちょっと喜んでないです?」

「は?」

「芽衣姉さんが迫って来たの、喜んでない?」

「うっ!」

「穂のかちゃん言ってた、ラッキースケベ?」

「そのラッキースケベ、やめてもらえません」

 って、途端にひかりさんクスクス笑い始める。

「芽衣姉さんのは姉さんが迫ってたから、神代さんのせいじゃないよね」

「わかってもらえます?」

「うん、芽衣姉さんって……綺麗でしょ?」

「美人さんですよね、患者さんにも人気じゃないんです?」

「そこなのよね……芽衣姉さん綺麗と思うの」

「それが?」

「あそこまで綺麗だと、かえって男の人、近付きにくいみたいなの」

「あ、それ、なんとなくわかるかも」

「でしょ、で、芽衣姉さん、ずっと一人なの」

 俺は力なく笑いながら、でも、ちょっと考えて、

「って、男の人だと誰でもああなるんです?」

「誰でもってわけじゃなさそうだけど……気にいったら猪突猛進」

「さっきはお酒飲んで迫ってきたけど……」

「知ってる、お酒臭かったし、お酒の瓶転がってたから」

 ひかりさん、にっこり微笑んで、

「でも、今度ラッキーだったら、出て行ってもらいます」

 その笑顔、なんかコワイ。


 リビングでテレビを見ながら、夕飯が出来るのを待っていた。

 隣では穂のかちゃんがおにぎりをほおばっている。

 夕飯前なんだけど、さっきからパクパク。

 大きな皿に10個くらいあったおにぎり。

 もう半分になっていた。

「穂のかちゃん、よく食べるね」

 って、口をモグモグさせながら見返してくる、呑み込んでから、

「穂のか、どうせ小学生ですから」

「まだ気にしてるの?」

「ラッキーさんにはわからないんです」

「機嫌直してよ~」

 俺、穂のかちゃんの攻略法、真剣に考えないと。

 この娘、ずっと「ラッキーさん」って言いそうだし。

 って、台所からひかりさんが来て、

「あの、神代さん、先にお風呂、入っちゃってください」

「あ、はい」

 って、俺、穂のかちゃんを見る。

 穂のかちゃんも俺を見ていた。

「何? 穂のかちゃん?」

「穂のかと一緒にお風呂したいですか?」

 言って来る……一瞬目が合ったけど、今はテレビを見ておにぎりをほおばっている穂のかちゃん。

「一緒にお風呂したいですか?」って言ってた。

 むう、どう言い返してやろうかな。 

「体、洗いっこする?」

 耳元で囁いてやった。

 耳まで真っ赤になって、頭から湯気をたてる穂のかちゃん。

 その拳が握られ、肩がピクピク震えている。

 俺だって何度も食らったりしない、言ってすぐ間合いを取っていた。

「穂のかちゃん、一緒に入ってもいいけど、ラッキーって言わないでね」

「むーっ!」

 穂のかちゃんが膨れてるのを見て、俺はリビングを出た。


 湯船に浸かりながら……まだ腹には痕が残ってる。

「痛みはないんだけどなぁ」

 今日はいろいろあった。

 インパクトあったのはナースの芽衣さんだろう。

 あんなに迫られて、ドキドキしないなんてない。

 でも……

 一番インパクトあったのは、正直言うとひかりさん。

 体操服姿は別段色っぽいってわけでもなかったんだけど……スタイルは一目瞭然。

「むう……」

 思わず声が出てしまう……俺、間違い起こさないでいられるだろうか?

 芽衣さんはすごい美人で、迫って来る、これが一番問題か?

 早苗さんもそうだと思う、俺に迫って来ないけど、俺、我慢できるかな?

 ひかりさんはいつも明るくて、話す事だって多い、友達ってくらいかな、今は。

 年下のまいちゃんに籾ちゃん、かわいいかなって思う。

 まぁ、籾ちゃんの微妙な趣味はこわいけど。

 あとは穂のかちゃんかな……ラッキーさんはやめてほしい。

 よくよく考えると、みんな美人だったりかわいかったり。

 これで我慢することが出来るのか?

 俺、ふとしたきっかけで間違いに走らない……自信はどうだろ?

『でも、今度ラッキーだったら、出て行ってもらいます』

 ひかりさんのコワイ微笑が浮かんだ。

 せっかく友達(?)になったのにお別れは嫌かな。

「でね~、今日来たお客さんがね~、袴姿だったの~」

「あ、まい、そのお客、神社にも来てた」

 そんな声がして、浴室のドアが開かれる。

 まいちゃんと籾ちゃんが立っていた。

 裸で。

 目と目が合って、最初に声を発したのは籾ちゃん。

「おおおっ!」

 籾ちゃん、すぐに浴槽そばまでやってきて、

「リアル裸男子キターっ!」

 お願いだから、隠して、俺も隠してるから。

「兄さん、何故隠すのです、堂々としててよいのですよ!」

「俺、風呂入ってるんだから、ちょっと待ってて欲しいんだけど」

「わたくしは兄さんの裸を見たいのです、他はいいです」

 ああ、目だけ見ると少女漫画の夢見る少女なんだけど……

 なんだか嫌なオーラを背負ってるんだよな~籾ちゃん。

 そんな籾ちゃんをまいちゃんが羽交い絞め。

「籾ちゃ~ん、裸~、見られちゃうよ~」

「かまわない、男の裸がそこにあるのだからっ!」

「まいちゃんありがとう、一度出てくれる?」

 俺が言うと……まいちゃんとばっちり目が合っちゃった。

 まいちゃん、急に顔を赤らめると、

「お兄さん~、見ましたね~」

「え? あ? え?」

 まいちゃん、籾ちゃんを引っ張って脱衣所まで引きさがると、

「穂のか~」

 何故穂のかちゃんを呼ぶ?

 待っていたとばかりに登場する穂のかちゃん。

「ラッキーさん、天誅です!」

 穂のかちゃんが拳を振り下ろすところまでは、ちゃんと記憶に残ってる。

 それから後の事はさっぱりだけど。


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