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「神代さん、脱いでくださいっ!」

 午前の授業も終わって、俺は学食でパンを買う。

 学食で食べても……どこの学校も一緒で、昼の食堂は盛況だ。

 俺はパンを手に教室に戻った。

 ひかりさんが俺を見つけて、

「あ、神代さん、どこに?」

「学食に」

「お弁当、作ってきたのに」

「え?」

「ご両親からお金もらってますから」

「……」

 親が食費も入れてくれてる……のはわかった。

 でも、弁当って今、ひかりさんは言った。

「あの、お弁当って?」

「だから神代さんの分も作ってるんですよ?」

「どこに?」

 俺は家を出る前から、なんとなく弁当の数を数えていた。

 ともかく最初びっくりしたのは穂のかちゃんのカバン一個分の巨大弁当。

 そして次にびっくりしたのは、ひかりさんが3つも準備している事だ。

 家を出るまでまいちゃん・籾ちゃんに会ってなかったから、ひかりさんが3つ食べると……ちょっと想像していた。

「だから、神代さんの分も」

「どこに?」

「え?」

「どこに?」

 ひかりさんはカバンを見て固まる。

 そうだ、家を出る時3つ持っていた筈だ。

 2つはまいちゃん・籾ちゃんの所に行った。

 ひかりさんは弁当箱を手に、

「え、えっと……神代くんの分、忘れちゃった」

「いいですよ、俺、もう買っちゃったし」

「ダメっ!」

「!!」

「ご両親からお金を頂いているから、ちゃんとしないと!」

「でも、弁当は一個ですよね」

「うう……」

 ひかりさんの困った顔……ちょっと早苗さんに似ている、やっぱり姉妹だ。

 俺がじっと待っていると、

「じゃあ、これ、食べてくださいっ!」

「え、えっと、じゃあ、ひかりさんは?」

「わたしは学食に買いにっ!」

 なんだか言い出したら聞きそうにないから、もう止めないつもりでいた。

 でも、ひかりさんの笑顔、すぐに凍った。

「どうしました?」

「お、お財布忘れちゃった」

「……」

「とととともかく神代さんはそれを食べてください、わたしは我慢しま……」

 って、言ってる最中、ひかりさんのお腹がかわいい音で鳴いた。

「すごいお腹、空いてますよね?」

「うう……神代さん、言わないで」

「じゃあ、お弁当、いただきます」

「はい、どうぞ」

「これ、余っちゃうから、食べてもらっていいですか?」

「!!」

 俺が学食で買ったパンを差し出す。

 ひかりさんは俺をじっと見て、

「いいんですか?」

「俺は弁当あるから」

「じゃあ、頂きます」

「一緒に食べましょう」

 って、ひかりさんはパンの入った紙袋を手に、

「わたし、学食で買ったりした事ないんです」

「へぇ、そうなんだ」

「いつもお弁当作ってるし……昼はすごい人ですよね」

「どこの学校も同じって思いましたよ」

 俺は弁当を開けて、箸を握った。

 ゴハンに鮭に卵焼き、ひじき……なんだか普通ですごい。

 朝の残りを入れてきたんだろうけど、ちょうどいい感じ。

「いただきまっす」

 俺は俄然食欲がわいてきた。

 でも、ひかりさんの表情に手が止まってしまう。

 パンを手にコワイ顔をしているひかりさん、俺をじっと見つめていた。

「どうしました?」

「ぱぱぱパンっ!」

「さっき買ったんです」

「ぱぱぱパンっ!」

「そうですよ」

「……」

 ようやく真顔に戻ってくれたひかりさん。

 手にしたパンをじっと見ていたけれど、

「食べないんです?」

「い、いただきます」

「?」

 こわばった顔でパンを一口。

 モゴモゴと食べている間、ずっとコワイ顔だ。

 でも、呑み込むと、

「おいしい……」


 午後の授業「体育」の時間。

「あ、体操服って持ってない」

 俺がつぶやくと、ひかりさんが、

「体操服、準備してなくてごめんなさい」

「あ、その……どうしたら?」

「体操服は購買で買えば……」

 って、俺は財布の中身を手に出した。

 バスは定期を買っていていいとして、手元にお金って1000円なかった。

 小銭をひかりさんに見せると、

「その……先生に忘れ物、借りましょう」

「あ、それって前の学校でもやってた」

「そうなんですか」

「でも、忘れ物って微妙だからな~」

「ですね」

「ひかりさんも忘れた事があるんだ」

「うう……妹達のを持ってきたら、自分のを忘れちゃって」

「お弁当もそうじゃなかったです?」

「え? そうでしたっけ?」

「自分の分を忘れて俺のを」

「あの、あれは、神代さんのを忘れたんです」

「どっちにしても……ひかりさんって」

「?」

「人の事が関わると、結構やらかしますよね」

「うう……ほっといてください、神代さん」

 って、体育館に向かいながらひかりさんを見たら、上下ジャージ。

 でも、ジャージでもすごい、いい感じだ。

「あの、ひかりさんって体育好きです?」

「うん、体を動かすの、好き」

「そうなんだ、なんだか楽しそうな顔してるから」

「ふふ、そんなふうに見えました」

 って、俺を見て、

「あのっ!」

「?」

「ちょっとちょっと!」

 ひかりさんは俺の手を取って駆け出す。

 いきなり手を握られたのにドキドキ。

 そして駆け込んだ先は保健室。

 ひかりさんは俺を座らせると、

「神代さん、脱いでくださいっ!」

「えーっ!」

 俺が声を上げると、ひかりさんは一瞬動きを止めてから、耳まで真っ赤になって、

「あわわ……そんなんじゃなくてですねっ!」

「だ、だって今脱げって!」

「そ、その、お腹、見せてもらえます?」

「は?」

 そしてひかりさんは一つカーテンで囲われているベットに向かって、

「先生、ちょっとお願いしますっ!」

 っ、カーテンの中から、

「ひかりちゃん、寝てるんだから起さないでよね」

 保健の先生が白衣に袖を通しながら出て来た。

 メガネをかけ、細めた目で俺とひかりさんを見ながら保健の先生は、

「さっきはびっくりしたわよ」

 保健の先生は俺を椅子に座らせると、シャツをめくりながら、

「ひかりちゃんが『脱いでくださいっ』なんて言うから何事かと」

「先生、言わないでください」

「風紀委員が風紀乱すのかな~とか」

「先生っ!」

 チョップするひかりちゃんに、保健の先生は笑いながら、

「痛いじゃない……って、脱がすのはコレ?」

 朝、着替える時は見もしなかったけど……ヘソを中心に真っ赤になっている。

「何、ひかりちゃんと彼……えっと、朝礼で言ってたわ、転校生よね」

「は、はいっ! 先生、これはどーして赤くなって!」

 俺はちょっとビビりながら言うのに、保健の先生はニヤリとして、

「ひかりちゃんと彼、何、新手のプレイ?」

 今度は「ゴン」なんて重い音のするチョップが振り下ろされた。

「あたた……痛いわね、ひかりちゃん」

「先生、わかって言ってますよね?」

「むう、穂のかちゃんのパンチ食らったんでしょ」

「穂のかちゃん」を聞いて、俺は昨日のパンチの痕と理解。

 理解しても、これほど赤く痕が残るなんて……なんてパンチだ。

「えっと、体育の時間みたいね、今日は早退して病院に行きなさい」

「は、はい……」

「ひかりちゃんも付き合ってあげなさいよ」

 保健の先生が言うのにひかりちゃんは考える顔で、

「でも、わたしも早退なんて」

「一緒に住んでるんでしょ、付添でいいじゃない、私が連絡しとくから」



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