妹s
「あの、いいですか?」
「何、神代さん?」
「穂のかちゃんなんですが……」
「?」
「家を出る時、見てたんです」
「はい?」
「カバン、二つありますよね?」
「穂のかの荷物は二つ……ですね」
「一つは『お弁当』ですよね」
「ええ」
「大きすぎやしませんか?」
「そ……そうかしら……」
引きつった笑みのひかりさん。
「で、もう一つ……聞きにくいけど聞きます」
「は、はいっ!」
「ひかりさんも弁当、3つ持ってますよね?」
「!!」
そう、家を出る時見ていた。
大きな弁当箱は穂のかちゃん。
4つのお弁当のうち一つは早苗さんが持って行った。
残る3つ……ひかりさんのカバンに入っていった。
って、ひかりさんはクスクス笑いながら、
「朝、ゴハンの時に言ったじゃないですか」
「?」
「まいと籾って二人の妹がいるんですよ」
「!」
「二人は朝練があるから、先に出ちゃってお弁当間に合わなかったんです」
「それで3つなんだ!」
「ふふ、わかってもらいましたか?」
ひかりさんは運動場の方を見ながら、
「もう朝練は終わってるみたいだから、1年の教室に寄っていきましょう」
最初に顔合わせしたのはまいちゃん、ひかりさんが紹介してくれる。
「妹の『まい』です」
「おはようございま~す、ラッキーさん」
「はじめまして……えっと……」
「昨日の夜~ 穂のかちゃんからラッキースケベさんって教えられました~」
「はは……」
「でも、普通そうで~よかったかな」
「まいちゃん……で、いい?」
「は~い」
「ラッキーさんはやめてくれない?」
って、まいちゃん、考える顔で視線が天井を泳いでから、
「う~ん……」
なんだかまいちゃん、ちょっとポワポワした感じかな?
ちょっと言葉遣いが伸びちゃうふうだ。
「じゃあ、『お兄ちゃん』!」
「!!」
「あたし、お兄ちゃん憧れていたから~」
「ちょ、ちょっと照れるなぁ」
「どうして~」
「俺、一人っ子だから、お兄ちゃんなんて呼ばれるとね」
「!」
まいちゃん俺をじっと見つめ、顔を寄せると、
「お兄ちゃん、オオカミさんに~なっちゃう?」
って、ひかりさんがまいちゃんをチョップ。
「いいかげんにしなさい、まいっ!」
「は~い」
「五女の籾です」
「はじめまして、ラッキーさん」
もう、そのラッキーさんはやめて。
三つ編みにメガネの籾ちゃんは俺をじっと見つめて、
「穂のかから聞いてます、ラッキーさんはロリコンですか?」
「その、ラッキーさんはやめて……俺は神代太市」
「太市さん……ですか……そうですね……」
一瞬、メガネがキラリと妖しく輝いた。
「兄さんでどうでしょう、わたくしのことは籾とお呼びくださいっ!」
「!!」
籾ちゃんは俺の手をとると、
「わたくし、『兄さん』がいいです、『神代さん』や『太市さん』はダメです」
「え、何で?」
「兄さんじゃダメですか?」
「べ、別にいいけど……でも、何で?」
「だって『神代』『太市』でもいいですよ」
「うん? 何?」
籾ちゃんが手を引き寄せ、瞳をキラキラさせながらキスでもしそうなくらいに顔を寄せてくる。
俺、意識してちょっと顔が熱くなったんだけど……
「わたくしの脳内で兄さんが男性教諭と『あんなこと』や『こんなこと』しちゃうんですっ!」
「!!」
こ、この娘はっ!
前の学校にもいた、同人誌とか出してて、男同士の恋愛を描くタイプの娘だ!
いつの間にか俺の背中に抱きついて、頬をこすりつける籾ちゃん。
「兄さんは嫌がる素振りを見せながらも、男性教諭の『それ』を『受け入れる』んですっっっ!!!」
俺、さっき熱くなったの、今は氷点下。
ひかりさんも冷や汗タラタラになっている。
頬を染めて、体をくねらせながら続ける籾ちゃん。
「別に『神代さん』でも『太市さん』でもいいですよ」
「……」
「そっちの方がずっと生々しいですけど」
「ゴン」なんて鈍い音、ひかりさんのチョップが籾ちゃんを叩いていた。
「籾、いいかげんにしなさい!」