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大和さんの異世界漫遊譚【完結】  作者: 桒田レオ
《第一章・忍、剣客編》
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IF編「甲賀忍・爪牙」

未来の分岐点です。

 目を覚ますと、見知らぬ一室にいた。

 あれ、俺、確か、サムライと死闘をしていて、それで……


「目、覚めたか?」

「!!」


 俺は咄嗟に武装を確認するが、ない。

 相棒の鋼爪が。


「っ」


 しかも、身体が重い。

 頭がクラクラする。


「テメェは伊賀の忍が刃に塗ってた毒にあてられちまったんだよ」


 サムライは壁に寄りかかりながら、こちらを覗いていた。

 んな馬鹿な。


「俺は忍だぜ? そんじょそこらの毒……」

「そんじょそこらの毒じゃなかったんだろ。俺を殺すためにどっかから仕入れてきた、とか」

「……ありえるな」

「調べてみたが、致死性の猛毒だった。テメェじゃなかったら死んでるぜ」

「なるほど」


 納得だ。

 サムライが薬を盛った可能性もなくはないが、そうだとしたら俺の命は既にない。

 サムライの言葉には信憑性があった。


「……なぁサムライ」

「ん?」

「ここは何処だ?」

「ラブホ」

「ふぅん。何で殺さなかった?」

「……毒で痺れてるやつを殺して楽しいか? 少なくとも、俺はつまらないね」

「……ししし、アンタとは話が合うね。サムライ」


 なんだろうなぁ。

 戦いの最中にも思ったんだけど、こいつとは他人な気がしないんだよな。

 同類だ。


「アンタ名前は?」

「大和だ、テメェは?」

「爪牙だ」

「なら爪牙。毒が治るまで待ってやる。その後、もう一度殺し合いをするか問う」

「なぁに言ってんだよ。さっきの続き、しようぜ」

「……クク、お前はそういう奴なんだな。好きだぜ、お前みたいなやつ」

「俺もだ、奇遇だな」


 二人で笑い合う。

 あ~あ、それにしても、暇だな。

 早く殺しあいてぇのに、身体が言うこと利かねぇ。

 どうすっか。


「……」

「?」


 俺はサムライの、大和の身体を観察する。

 ふむふむ。

 ほぅほぅ。

 なぁるほど。

 これぁ、いい男だぜ。


「なぁ大和」

「ん?」

「俺とセックスしねぇか?」

「……ハァ?」


 大和の表情が唖然とする。

 ししし♪


「いいじゃねぇか。今は戦えねぇんだ。なら、食べるか、飲むか、セックスするしかねぇだろ」

「……」

「どうせ明日生きてるかわからねぇ命だ。好き勝手に生きて、そんで死にてぇ」

「……クハッ、ハハハハ!」


 大和は不気味な笑い声をあげた。


「ほんと、テメェとは気が合うなぁ。爪牙」

「ハハハ!」


 二人で爆笑しあう。

 そして、大和が俺の隣に座った。

 俺は大和に抱きつき、キスをする。

 そのまま、押し倒された。



◆◆



 数時間後。

 俺は大和の腕の仲でコロコロと喉を鳴らしていた。


「めっちゃ気持ちよかった」

「そうかい」


 大和は微笑む。

 ……。

 ……。


「なぁ、大和」

「?」

「……いや、なんでもねぇ」

「……なんだよ、言えよ」

「なんでもねぇって」


 俺は寝がえりをうつ。

 大和はそんな俺の首筋に、息を吹きかけた。


「あっ」

「どうしたんだ?」

「……」


 背後から抱きしめられる。

 俺は、素直に告白した。


「殺せねぇ」

「?」

「もう、アンタのこと殺せないよぉ、大和」


 俺は振り返って、大和に抱きついた。


「セックスして情が移っちまった。こんなん俺らしくねぇ、らしくねぇよ」

「……なら、いいじゃねぇか」

「でも……」

「上の奴には、伊賀の奴等の介入で取り逃がしたとでも言っておけ。お前ほどの腕だ。処分されることはねぇだろ」

 

 大和は俺の頭を撫で、額にキスをする。

 俺はたまらず、大和に言った。


「なぁ大和。甲賀に来いよ。一緒に忍やろうぜ。コンビ組んで、敵をぶっ殺しまくろう」

「……」

「なぁ、駄目か?」


 上目遣いで覗く。

 大和は苦笑した。


「悪いな、誘いは嬉しいけどよ」

「……そうか」


 俺はシュンとする。

 いいコンビになれると思ったのに……


「なら、今度会った時は敵同士だ。容赦しねぇぞ」

「おう」


 俺達は笑顔でキスを交えた。



◆◆



 朝。

 起きると大和はいなかった。

 ったく、行く時くらい起こせよな。


「……大和」


 初恋だった。

 あ~あ、相棒にしたかったなぁ。

 ……しかし、アイツは落ちないなぁ。

 くそう。

 あ~ッ。

 よし、決めた!!


「……大和、次あったら捕虜にして、無理やり仲間にしてやる! 絶対だ!」


 俺は立ち上がり、ガッツポーズをとった。



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