IF編「甲賀忍・爪牙」
未来の分岐点です。
目を覚ますと、見知らぬ一室にいた。
あれ、俺、確か、サムライと死闘をしていて、それで……
「目、覚めたか?」
「!!」
俺は咄嗟に武装を確認するが、ない。
相棒の鋼爪が。
「っ」
しかも、身体が重い。
頭がクラクラする。
「テメェは伊賀の忍が刃に塗ってた毒にあてられちまったんだよ」
サムライは壁に寄りかかりながら、こちらを覗いていた。
んな馬鹿な。
「俺は忍だぜ? そんじょそこらの毒……」
「そんじょそこらの毒じゃなかったんだろ。俺を殺すためにどっかから仕入れてきた、とか」
「……ありえるな」
「調べてみたが、致死性の猛毒だった。テメェじゃなかったら死んでるぜ」
「なるほど」
納得だ。
サムライが薬を盛った可能性もなくはないが、そうだとしたら俺の命は既にない。
サムライの言葉には信憑性があった。
「……なぁサムライ」
「ん?」
「ここは何処だ?」
「ラブホ」
「ふぅん。何で殺さなかった?」
「……毒で痺れてるやつを殺して楽しいか? 少なくとも、俺はつまらないね」
「……ししし、アンタとは話が合うね。サムライ」
なんだろうなぁ。
戦いの最中にも思ったんだけど、こいつとは他人な気がしないんだよな。
同類だ。
「アンタ名前は?」
「大和だ、テメェは?」
「爪牙だ」
「なら爪牙。毒が治るまで待ってやる。その後、もう一度殺し合いをするか問う」
「なぁに言ってんだよ。さっきの続き、しようぜ」
「……クク、お前はそういう奴なんだな。好きだぜ、お前みたいなやつ」
「俺もだ、奇遇だな」
二人で笑い合う。
あ~あ、それにしても、暇だな。
早く殺しあいてぇのに、身体が言うこと利かねぇ。
どうすっか。
「……」
「?」
俺はサムライの、大和の身体を観察する。
ふむふむ。
ほぅほぅ。
なぁるほど。
これぁ、いい男だぜ。
「なぁ大和」
「ん?」
「俺とセックスしねぇか?」
「……ハァ?」
大和の表情が唖然とする。
ししし♪
「いいじゃねぇか。今は戦えねぇんだ。なら、食べるか、飲むか、セックスするしかねぇだろ」
「……」
「どうせ明日生きてるかわからねぇ命だ。好き勝手に生きて、そんで死にてぇ」
「……クハッ、ハハハハ!」
大和は不気味な笑い声をあげた。
「ほんと、テメェとは気が合うなぁ。爪牙」
「ハハハ!」
二人で爆笑しあう。
そして、大和が俺の隣に座った。
俺は大和に抱きつき、キスをする。
そのまま、押し倒された。
◆◆
数時間後。
俺は大和の腕の仲でコロコロと喉を鳴らしていた。
「めっちゃ気持ちよかった」
「そうかい」
大和は微笑む。
……。
……。
「なぁ、大和」
「?」
「……いや、なんでもねぇ」
「……なんだよ、言えよ」
「なんでもねぇって」
俺は寝がえりをうつ。
大和はそんな俺の首筋に、息を吹きかけた。
「あっ」
「どうしたんだ?」
「……」
背後から抱きしめられる。
俺は、素直に告白した。
「殺せねぇ」
「?」
「もう、アンタのこと殺せないよぉ、大和」
俺は振り返って、大和に抱きついた。
「セックスして情が移っちまった。こんなん俺らしくねぇ、らしくねぇよ」
「……なら、いいじゃねぇか」
「でも……」
「上の奴には、伊賀の奴等の介入で取り逃がしたとでも言っておけ。お前ほどの腕だ。処分されることはねぇだろ」
大和は俺の頭を撫で、額にキスをする。
俺はたまらず、大和に言った。
「なぁ大和。甲賀に来いよ。一緒に忍やろうぜ。コンビ組んで、敵をぶっ殺しまくろう」
「……」
「なぁ、駄目か?」
上目遣いで覗く。
大和は苦笑した。
「悪いな、誘いは嬉しいけどよ」
「……そうか」
俺はシュンとする。
いいコンビになれると思ったのに……
「なら、今度会った時は敵同士だ。容赦しねぇぞ」
「おう」
俺達は笑顔でキスを交えた。
◆◆
朝。
起きると大和はいなかった。
ったく、行く時くらい起こせよな。
「……大和」
初恋だった。
あ~あ、相棒にしたかったなぁ。
……しかし、アイツは落ちないなぁ。
くそう。
あ~ッ。
よし、決めた!!
「……大和、次あったら捕虜にして、無理やり仲間にしてやる! 絶対だ!」
俺は立ち上がり、ガッツポーズをとった。