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大和さんの異世界漫遊譚【完結】  作者: 桒田レオ
第九章《超越者VS超越者2》
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第四証人「白羅刹・秋水2」

「さぁ、第二ラウンドのはじまりだ」



 私は魔眼を更に集中させる。

 大和様の身に纏う気。

 最早極限まで練磨されている。

 私が弟子の頃とは比べものにならない。

 あの時はまだ合気も未完成だった。

 先ほど手合わせをして、合気は既に完成しているとわかった。

 そして、気までも……


 大和様。

 あなたは、成長し続けているんですね。


「ふぅ……」


 私も、成長したんですよ。

 サムライマスター、ヤマトの教えを、守ってきたんですよ。


 弱き者を守るために剣を振るえ、悪を倒すために剣を振るえ。

 正義に順じろ。


 故に、悪であるあなたを斬る。

 それが私にできる、唯一の孝行だから。


「お前も新参者とはいえ、曲りなりにも超越者だ。俺が多少本気になっても、ついてこれるだろう?」


 大和様は気を練る。


「奥義、風林火山」


 第一に、大和様の身体が気に覆われる。

 第二に、大和様を中心に私を包み込むように気のドームが形成される。

 第三に、大和様のオーラが何百倍も跳ね上がる。

 第四に、大和様の身体の硬度が埒外なほど増した。


 なんだ、あれは……


 強化、なんてものではない。

 ただでさえ強かった大和様の力が、異次元のレベルに達している。


 これは……ッ


「風林火山陰雷、その内の四つを同時発動させた。この状態だと手加減できねぇから、気張れよ」


 大和様が消える。

 駄目だ! 速すぎる! 私の魔眼で追えない!

 ……いいや、大和様が強化されただけではない。

 私の身体能力も落ちているのか!

 この気のドーム。

 どうやら私の力を吸収し、大和様に譲渡しているらしい。


 このドームの中にいては絶対勝てない。

 このドームは、大和様の領域だ。


「逃がさないぜ」


 大和様の剣が迫る。

 咄嗟にガードしたが、重い、なんてものではない。

 何だ、この一撃は……ッ


 ただでさえ強化されている大和様の力が、数百倍に跳ね上がったのだ。

 当たり前といえば当たり前か。


 私は抜刀術で斬り結ぶ。

 しかし大和様は避ける素振りも、合気でベクトル操作する素振りも見せなかった。


 ガキン、と硬質な音が鳴る。


 そんな、馬鹿な。

 私の刃が、大和様の身体に弾かれた。

 硬度が埒外に増したのはわかっていた。

 しかし、ここまでとは……


「フフフ、そうか、大和。貴殿は気の扱いを極めたのだな。これでは、秋水には荷が重いか」


 グランドソウルは魔性の微笑みを漏らす。

 彼のサポート魔導が切れたわけではない。

 いいや、切れていたら、私はとっくのとうに首を跳ばされていた。


 自力が違いすぎる。


 技術ですら勝てない私が、地力で勝られたら勝てる筈がない。


「グランドソウル、力を貸してください」

「構わないよ」


 グランドソウルは拘束魔術で大和様を拘束する。

 私はその隙に、縮地で大和様に近づいた


 今の大和様に生半可な斬撃は効かない。

 であれば、最大最強の一撃を放つしかない。


 首筋へ無量大数、渾身の斬撃を叩き込む。

 一か所に重なった斬撃は無敵の刃となり、大和様の首筋を斬り裂く。


「おお!」


 大和様は驚きながらも、拘束魔術を力づく外した。


「むっ、凄い力だ。我の魔力でも抑えられないか」

「ククク、そうら秋水。お返しだ」


 大和様の出血はいつの間にか止まっていた。

 気の活性化があまりにも強すぎて、回復力も桁違いになっているのか。


 来る、攻撃が。

 避ける? いいや、スピード負けしているから、避けられない。

 鞘でガードの態勢に入る。


「大車輪」


 先ほどの技、旋風巻きと同じ要領で身体を捻じり、突撃してくる。

 遠心力のたっぷり乗った斬撃の嵐に見舞われた。


 なんという、威力。

 私は遥か彼方へと吹き飛ばされる。


 すぐに立ち上がるが、目の前に大和様がいた。


「修行が足りねぇ。戦闘経験も足りねぇ。つまらん……死ね、秋水」


 そのまま、逆袈裟に斬り裂かれた。


「……っ」


 落ちていく私を、大和様は冷たい瞳で見下ろしていた。



 ◆◆



 私は虚ろな意識のまま、三千世界に揺蕩っていた。


 私は、負けたのだろうか。


 首を傾ければ、大和様とグランドソウルが熾烈な争いを繰り広げていた。


「ハハハハ!!」

「フフフ!」


 グランドソウルが放つ魔導呪術のミックス波動を、大和様は掻い潜る。

 そして、大和様の刀とグランドソウルの蹴りが交差した時、三千世界が震撼した。


「大和、様……」


 私は手を伸ばす。

 数秒後に私は死ぬ。

 輪廻転生の輪に組み込まれてしまう。

 あそこから脱出するには相当時間がかかる。


 だから……っ


「ハーッハッハッハ!!!!」


 アア……

 あなたを止めることができない。

 不甲斐ない。

 自分の無力さに腹が立つ。


 でも、何回でも挑みます。

 あなたを必ず止めてみせます。

 私の決意は、揺らぎません。


 鬼の高笑いが木霊する。

 私の意識はそこで途絶えた。

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