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大和さんの異世界漫遊譚【完結】  作者: 桒田レオ
第九章《超越者VS超越者2》
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第一証人「黒鬼・大和」

 俺は三千世界に佇みながら、一度、大きく溜め息を吐いた。


 秋水は俺の最初の弟子。

 俺の過去そのものであり、関わりたくない存在だ。

 できれば会いたくなかったんだが……


 あっちは俺を斬るつもりだ。

 なら、斬るしかないだろう。


 俺が溜め息を吐いている原因は、別にある。

 この師弟対決を楽しんでいるクソ野郎がいるんだ。

 三千世界に結界を張って、ステージを作ってくれやがった。


 超越者・グランドソウル。


 金獅子。

 古今東西あらゆる魔導を極めた魔人。


 心底むかつく。


「大和様、勝負を始める前に、聞かせてください」

「何だ」

「……何故あの時、私を殺さなかったのですか。仲間を全て殺したのに、何故」

「お前が弟子だったから、理由はそれだけだ。特別な感情は一切ない」


 俺は二刀を抜く。


「あの時見逃してやったのに、わざわざ斬られに来やがって……」

「……ッ」

「なぁ、どうしてだ? どうして俺の前に現れた。超越者、白羅刹様よ」

「……大和様ッ!!」


 秋水は今にも泣きそうな顔で叫ぶ。


「何故!! どうしてですか!? 理由を教えてください!! 何故あなたは、そこまで豹変してしまわれたのですか!!」

「世界を救う過程で、強者を殺すことが好きになった」

「あなたほどの御方なら、精神力で狂気を抑えられたはずです! どうして殺戮の鬼になったのですか!」

「……ハァ」


 俺は唾を吐き捨てる。


「かまえろ秋水。テメェと語り合うことなんざ何もねぇ。斬り殺してやる」

「……やはり、もう、無理なのですね。わかっていました。けど、でも……ッ」


 秋水は顔を俯けた後、長刀を取り出し、抜刀の構えをとる。


「……斬るしか、ないようですね」

「ああ、テメェも剣客なら、言葉じゃなく剣で語れ」



「では、仕方ありません。グランドソウル、出てきてください」



「……は?」


 俺が呆けていると、秋水の後ろに現れる。

 金色の獅子のような美丈夫が。

 鬣のような黄金色の髪、同じ色の瞳。

 特注の黒いローブに身を包んでいる。

 顔立ちは端正を通り越して、もはや神々しい。


 間違いない。


「久しぶりだな。大和」

「グラン……どうしてテメェが」


 グランドソウル、グランは柔和に微笑む。


「秋水に頼まれたのだよ。貴殿を封印してほしいと」

「あなたを封印できるのは、三千世界でもグランドソウルだけです。古今東西あらゆる魔導を極めた魔人の力を、借ります」

「おいおい、真剣勝負じゃなかったのかよ」

「誰がそんなことを言いましたか?」


 秋水は体制を低くする。

 なぁるほど……。


「ク、ククク……」


 俺は俯き、総身を震わせる。



「クハハハハハ!! ハーッハッハッハッハッハ!!!!」



 そして、高笑いした。



「超越者が二人がかりか!! ああ、素晴らしいな!! 俺は今、歓喜に打ち震えている!! 最高の獲物を二人同時に味わえるんだからなァ!!」



 秋水は悲痛に満ちた表情をする。


「何が楽しいんですか……ッ。私は、こんなに辛い思いをしているのに……ッ」

「笑えよ秋水! 今から始まるんだぜ!! 最高の殺戮ショーがな!! お前も俺の弟子なら、ちったぁ楽しめよ!!」

「……ッッ、わかりました」



「サムライマスター、ヤマトは、世界を救った英雄は、もう何処にもいないのですね」



 秋水の目から焦り、不安の色が消える。

 おうおう、やっとその気になりやがったか。


「グラン、テメェも本気で来いよ」

「無論だ。我も久々に闘争を愉しみたい。二対一とは気乗りしないが、貴殿が嬉しそうなら何よりだ」

「おうよ。遠慮すんな」


 俺は心の底から笑い、殺気を開放した。

 黒き鬼が三千世界を破壊しながら秋水とグランを威嚇する。

 秋水の背後に白い羅刹が顔を出し、鋭い気を飛ばしてくる。

 グランの背後に金色の獅子が現れ、唸り声を鳴らす。

 ククク。


「……楽しませてくれよ」


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