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大和さんの異世界漫遊譚【完結】  作者: 桒田レオ
第九章《超越者VS超越者2》
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プロローグ

「ここが……」


 私は魔獣界と呼ばれる伝説の世界へと来ていた。

 気配でわかる。

 この世界の住民は、皆百戦錬磨の強者達だ。

 しかし、その気配の中でも、一際強大で、邪悪なものが一つ。


 ……魂まで、変質してしまいましたか。

 昔の悠久の青空のような、あの温かい気配は、微塵も感じない。


「……師よ。今日こそ、あなたと決着を着けます」



 ◆◆



「おい、万葉。結界を張れ、爪牙と金太郎は万葉の傍にいろ」

「どうしたんだよ、兄貴」

「わからぬのか、犬」

「ああ? だから何だよ」

「この世界の空気が変わった。来訪者じゃ、それもとびきりのな」

「……!」


 俺は気配を察して、顔を顰めた。


「この気配は……ッ」

「超越者だ」


 兄貴がそう吐き捨て、屋敷の入り口を見る。


「それも、少し面倒な奴だ。下手したらアキよりもな」


 兄貴が顔を顰める。

 門前には、純白のサムライ衣装に身を包んだ女が立っていた。

 肩には真紅のマントを羽織っていた。

 兄貴と一緒かよ。


 それだけでも気に食わないのに、更に目鼻顔立ちが整っているんだから、舌打ちが出る。

 純白の髪は肩辺りで綺麗に揃えられている。

 瞳の色は、赤色だった。

 肌もやけに白いし、アルビノか?


 女は兄貴に向かって儚げに微笑んでみせる。


「お久しぶりです。大和様……我が師よ」

「そうだな。秋水……俺の最初の弟子よ」

「!?」


 最初の弟子!? コイツが!?

 俺が驚いていると、金太郎が俺の胸にせっせと隠れた。


「お姉ちゃん、僕、怖いよ……」

「ああ……」


 二人のオーラが具現化する。

 黒き鬼と、白い羅刹。

 両者共に威嚇しあっている。


 な、なんつー殺気のぶつかり合いだ。

 鳥肌が立つ。


「ここでは周囲に被害が出ます。三千世界へ赴きましょう」

「いいのか? 三千世界だとしても、俺達が戦えば被害は増すばかり」

「他の超越者に結界を張ってもらっています」

「結界……ふん、アイツか。何時から手を組んだ?」

「あなたには関係ありません」

「カッ」


 兄貴が心底といった様子で溜息を吐く。


「……なぁ、秋水」

「何でしょう」

「このまま帰れ。今なら見逃してやる」

「……見逃してやる、とは随分な言い方ですね」

「できればお前を斬りたくない」

「私はあなたを斬りたいのです。いいや、斬らなければならない」

「……どうしても、か?」

「はい」

「……」


 兄貴は瞑目し、顎を擦る。


「しゃあねぇ、なら殺してやるよ。秋水」

「いいえ、斬られるのはあなたです」


 二人は消える。

 三千世界へ転移したのだろう。


「ふぅ……よかった。あの二人が本気で戦えば、魔獣界が消し飛ぶからな」

「……なぁ」

「なんじゃ」

「俺ってさ、超越者同士の本気の戦いをまだ見たことないんだよな。……兄貴の本気って、どれだけ強いんだ?」

「見ていればわかる。馬鹿でも一目でな」

「……」


 俺は黙って、ババァが作り出したスクリーン映像を見る。

 そこには、広大な宇宙空間に佇む二人のサムライがいた。


「黒鬼と白羅刹、どちらも超越者随一の剣の使い手じゃ」


 黒と白の剣士。

 果たしてどちらが勝つのか。

 ……いいや、信じてるぜ兄貴。

 兄貴が勝つって。


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