第三証人「黒鬼・大和3」
「やっほー!! 温泉だー!!」
「わーい!!」
爪牙と金太郎は大はしゃぎしている。
俺は日本酒一式を携えながら、やれやれと溜息を吐いた。
「あんまはしゃいでると転ぶぞ。ったく」
一式を温泉の前に置いて、爪牙に手招きする。
「頭と背中流してやる。こっち来い」
「うん!! 金太郎もこっち来い!」
「うん!」
俺と爪牙、金太郎は並んで頭を洗い合う。
爪牙の奴、髪を下ろすとまた可愛いな。
何時ものポニーテイルもいいが、これも中々……
「ふふーん、どうした兄貴。髪を下ろした俺が珍しいか?」
「まぁな、何時もと違って可愛いよ」
「へへへ♪」
嬉しそうに笑う爪牙の頭を洗ってやる。
金太郎は爪牙が洗っていた。
お湯を被せてやり、次は背中だ。
「爪牙……」
「ん?」
「相当無茶したんだな、傷だらけだぜ」
「兄貴のために頑張った傷だ、勲章だぜ!」
「全く……」
どうして俺の弟子はこうも可愛いのかねぇ。
背中を流し終え、二人と一匹で湯に浸かる。
「「「はぁぁ」」」
あー、気持ちいい。
やっぱ温泉最高。
「兄貴……」
「何だ」
「俺ってその、女らしい体つきじゃないよな。ほら、腹筋割れてるし」
確かに、爪牙の腹筋は薄っすら割れているが。
「俺は嫌いじゃないぜ」
「本当か!?」
「ああ。女とはいえ戦士、いい身体付きだ」
「うん! 兄貴が好きならそれでいいや!」
爪牙は俺の腕に抱きつく。
おうおう胸が当たってるぞコンチクショウ。
やわらけーなー。
「ふぅ……本当は大和様と二人きりで風呂に入りたかったのじゃが」
万葉が入ってきた。
隣の爪牙があんぐりと口を開ける。
まぁ、しゃあないな。
万葉は女として最高級の身体を持っている。
言葉に出していえないが、爪牙では足元にも及ばない。
「どうしたクソガキ、今更、女としての格の違いを思い知ったか?」
「う、うるせぇ!」
万葉はふっと笑いながら湯を浴びて、俺の隣に浸かる。
「ささ、大和様。酌します」
「おう、サンキュー」
んー、妖艶な美女と可憐な美少女を両隣に、美酒を呷る。
最高だね。
男として、これほど贅沢なことはない。
「大和様、やはりいい身体をしておる。やはり最高の雄じゃな」
「胸板厚いよな。それでいて、無駄が一切ない。理想の肉体だ」
「おいお前ら、ぺちぺち触るな。くすぐってぇだろうが」
「それにほら、主様のもう一つの得物。これは凄まじいぞ。三千世界一じゃ」
「だな。俺もここまで凄いのは会ったことがない。ある意味無双の剣豪だな」
「テメェ等、金太郎がいるんだぞ。自重しろ」
ぺしぺしと二人の頭を叩く。
しかし、二人の鼻息は荒かった。
「なぁ大和様、上がってから、早速お楽しみといかぬか?」
「おい、今夜は俺が寝るんだ。三ヵ月も溜まってて、我慢できねぇんだよ」
「一人で盛っていろ、犬」
「うるせぇ、狐ババァ」
「あ?」
「んん?」
「喧嘩すんな。してやらねぇぞ」
「す、すまなかった大和様」
「兄貴~っ、それはずりぃよー」
俺は二人を抱き寄せる。
「俺が本気になったら、お前ら、明日布団の中から出られなくなっちまうぜ。それでもいいのか?」
俺がそう言うと、二人は頬を朱に染める。
完全に、雌の顔になっていた。
「ああ、明日、布団から出られぬくらい、妾を愛してくだされ」
「兄貴のが欲しくてたまらないんだっ」
「よしわかった。二人纏めて相手してやる。先に上がって準備しておけ」
「わかった!」
「おう!」
二人は意気揚々と去っていく。
俺は酒を飲み直した後、そこらへんを鼻歌交じりに揺蕩っている金太郎を引き寄せた。
「わぅ?」
「お前は、まだ酒は無理だよな」
「お酒?」
「お酒もわからないか、ふぅむ」
俺は金太郎を撫でながら、夜空に浮かぶ満月を仰いだ。
暫く、一人で月見酒を楽しみますかね。
この後、万葉の屋敷で激しい雌の悲鳴が聞こえたという噂が立つが、かんけーないかんけーない。