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大和さんの異世界漫遊譚【完結】  作者: 桒田レオ
《第一章・忍、剣客編》
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第三証人「風俗嬢・佐藤舞」

 私の名前は佐藤舞。

 佐藤ってダサいから、気軽にマイって呼んで。

 現在、同僚と一緒に酒場にたむろしていた。

 すると、もう一人の同僚がやってきた。


「うーっす」

「ういっす」


 同僚はそのまま席に座り、


「ねぇ、私、昨日例のサムライのところに行ってきちゃった」

「マジで!? どうだったの!?」

「感想! 感想プリーズ!」

「えっとね……」


 私達はスマホを手放し、その同僚を囲む。

 同僚は恥ずかしそうに頬をかきながら、


「めっちゃ気持ちよかった」

「マジか!」

「巧かったってこと!?」

「ものすごく」

「そっかぁ」


 ヤバい、会ってみたい。

 最近、風俗街に謎のサムライが現れたのだ。

 そして、風俗嬢を食いまくっているのだ。

 そのサムライが、滅茶苦茶イケメンで、滅茶苦茶巧いという。

 何が巧いって? ナニよ。

 会った女達は全員メロメロになって帰ってくる。


「アンタ、彼氏持ちでしょ」

「え~? でも、あんなの体験したら……もう普通のじゃ満足できな~い♪」


 この同僚、「私に任せておきなさい!」と息巻いておきながら、この様である。

 ……ふっふっふ。


「今度は私が行くわ」

「おっ、ついに来た! 風俗街のクィーン、マイの出番が!!」

「100人斬りの異名を持つ伝説の風俗嬢! いったれぇ!」

「おうさ。私がペロリとたいらげてきてあげるよ!」


 両腕を組み、鼻をふんと鳴らす。

 任せておきなさい。



◆◆



 サムライがいるという酒場までやってきた。

 辺りを見渡すと、いた。

 サムライらしき男を発見。

 早速喋りかけてみる。


「ねぇ」

「アア?」


 一瞬、背筋に悪寒が走った。

 恐怖を感じたのだ。

 ただ、応答されただけなのに。


「あ、あの……」

「何だ?」


 サムライは網笠を被っていた。

 顔は見えない。

 私は顔を真っ青にしながらも、問う。


「あなたが、噂のサムライさん?」

「……噂ってのは、俺が風俗嬢とセックスしまくってるって噂か?」

「そう、それ」

「……お前もその口か?」

「うん」

「……」


 サムライは無言で立ち上がる。

 大きい……

 2メートルはあるだろう。

 体格もがっしりとしている。

 サムライは、網笠をとった。


「もっと顔を拝ませな」


 私は、思わず見惚れてしまった。

 褐色の肌、鋭い灰色の双眸、ギザギザの歯。

 顔立ちは驚くほど整っている。

 モデルでも、ここまでの男前はそうそういない。


「……どうした? 見惚れちまったかい?」

「!」


 私は恥ずかしくなって、俯く。

 サムライはそんな私を引き寄せた。

 顔が間近にある。

 ほのかに、百合の香りがした。


「フムフム、中々の上物だ。肌色もいいし、スタイルも絶妙。よし、気に入った。早速行こうぜ」

「……何処に?」

「ラブホに決まってんだろ。まさか、ここですんのか?」

「そんなわけないでしょっ」


 私は顔を真っ赤にして、サムライに付いていった。



◆◆



 ラブホにて。

 私は先にシャワーを浴びさせてもらい、待機していた。

 早速同僚とチャットでやりとりする。



 マイ サムライにあった。今からセックスする!

 同僚1 マジで! 写真! 写真送って!

 同僚2 はまるなよ! マジでヤバイから!

 同僚3 写真! 写真!

 マイ わかったわかった、写真送るね!


 返信し終わると、サムライがシャワールームから出てきた。

 姿はタオルを巻いているだけ。

 私は写真を撮ろうとしたが……止まってしまった。

 サムライの肉体。

 完璧だった。

 がっしりとした肩幅、きゅっとしぼれた腹回り、腹筋は綺麗に六つに割れている。

 脂肪など一切ない。

 美術的観点から見ても、完璧な肉体。

 ギリシャ彫刻にすら勝るだろう。


「ゴクッ」


 思わず生唾を呑み込んだ。

 あんなのに抱かれると思うと、私の女が疼いてやまない。

 ヤベェ。

 マジやべぇ。


「っと、写真写真!」


 私は慌てて写真を撮る。


「ん? 何撮ってんだ?」

「同僚に送る。いい?」

「……別に、かまわねぇよ」

「じゃあ、ツーショットもいい?」

「いいぜ」

「やったー!」


 私はサムライとツーションをとる。

 すぐに同僚から返信がきた。


 同僚1 ぎゃー!! 何この身体!! は、鼻血が!!

 同僚2 羨ましー!! くそー!!

 同僚3 めっちゃイケメンじゃん! いいなぁ!!

 マイ じゃ、今から一発やっちゃいます♪ あでぃおす!


「楽しそうだな」

「うん♪」

「……それでいい。楽しければいいんだよ。つまらねぇ人生なんて、クソ喰らえだ」

「サムライさん、いいこと言うね」

「クックック」


 サムライが私の髪を撫でる。

 ~♪


「名前、教えてくれよ」

「佐藤舞、マイって呼んで」

「俺は大和だ。じゃ、早速始めるか」

「うん♪」


 私逹は唇を重ねた。



◆◆



 数時間後。

 私は大和の腕の中で、子猫のように丸まっていた。


「三回くらい気絶しちゃった」

「気持ちよかったぜ。お前はどうだった?」

「もう、聞かなくてもわかってるくせに」

「ククク」


 私は大和の胸に頬ずりする。


「大和は、どうして公園にいるの?」

「特定の場所に住まないようにしてるんだ」

「どうして?」

「旅をしているからだ」

「日本中を?」

「いいや、世界中を」

「凄いね……。なら外国語とかもペラペラ?」

「まぁな」


 大和は私の頭を撫でる。

 私はコロコロと喉を鳴らした。

 ……。


「ねぇ。大和って、彼女とかいる?」

「どうしてだ?」

「私、アンタの彼女になりたい」

「冗談はよせ」

「マジよ」


 私は大和に抱きつく。

 大和はやれやれと肩を竦めた。


「俺は世界を旅してる。お前は俺について来れるか?」

「それは……」

「ほら、駄目だ」

「……でも、私」


 たった一日だけど、私、アンタのことが……


「……馬鹿。惚れっぽい女だな、お前も」

「うるさい……っ」

「……ありがとな、嬉しい。でも、駄目なもんは駄目だ。お前も俺も、不幸なことになる」

「……旅なんかしないで、この街に残ってよ」

「それは無理だ」

「っ」


 なら……


「今夜は……」

「?」

「今夜は、私とずっと一緒にいて。私だけを、見て?」

「……」


 大和は唇を重ねてきた。

 深く、激しく。

 愛してくれるのだろう。

 今日一日、ずっと……

 私は、彼に全てを委ねた。



◆◆



 朝。

 起きると、隣には大和がいなかった。

 置き手紙もなかった。


「……馬鹿」


 その日から、風俗街に大和は現れなくなった。

 数週間も経つと、皆興味を無くしていった。

 でも、私は覚えている。

 何せ、初恋なのだから。


「……大和」


 名前を呟いても、彼は何処にもいない。

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