第一証人「黒鬼・大和」
三ヵ月ほど経ったか。
俺は万葉の屋敷で養生していた。
万葉の奴は過保護で、俺を必要以上に気遣ってくれる。
見返りはきちんと催促してくるが。
夜中に。
……まぁ、封印を全部解いた以上、万葉とはしなければならない。
約束は守るが……
子供ができたらどうしよう。
切実な問題である。
万葉は子供を作る気満々なので、俺はひやひやしている。
それ以外は比較的穏やかに過ごしている。
居間で寝ていると、万葉が寄りかかってきて、うたた寝をする。
俺はその狐耳を撫でながら、考え事に耽っていた。
まず、爪牙。
あいつ、大丈夫かなぁ……
確かに強くなれとは言ったが、魔獣界での修行は、正直厳しいと思う。
魔獣界の魔獣逹は外界の神仏すら圧倒する百戦錬磨の強者逹。
爪牙より弱い魔獣は、この世界にいない。
しかも、魔獣逹は戦いを挑んでくる相手に一切容赦しない。
……心配だ。
だが、期待もしている。
爪牙が俺の予想を上回るほど成長すれば、あるいは……
魔獣界の魔獣逹は自分の認めた強者に敬意を評し、武具を与える、もしくは自らが武具となる。
爪牙の基本装備は鋼爪だが、アイツは器用で、武器であれば何でも扱える才能を持つ。
……もしかしたら、化けるかもな。
悩みはもう一つある。
先のアキとの一騎打ち。
正直に言えば、ギリギリだった。
次戦った時は、負けるかもしれん。
勝ち負けはあまり気にしないのだが、なんというか、アキには負けたくない。
というわけで、俺は随分前から開発していたオリジナル流派を、最終形まで持っていこうとしていた。
俺は基本的に型に拘らない。
何故か。
三千世界の剣術を全て極めた俺は、一つの流派では限界があることを知っているのだ。
故に俺は、数え切れない流派を一度に使っている。
だから、一々技名など放っていられない。
攻撃の全てが必殺技であり、秘剣だからだ。
しかし、それでも限界というものが見え始めてきていた。
俺特有の特技といえば、合気と気。
それだけでは成長する超越者には、アキには勝てない。
だから、今までのスタイルを継承しつつ、俺独自の流派が必要だった。
強者と戦う旅をしながら構想を練り、実戦に少しづつ織り交ぜていた。
そして、遂に完成したのだ。
風林火山陰雷
気を最大効率で使用できる流派。
気の扱い方の、原点にして極地。
最初は合気と気、どちらを中心の流派にするかで迷った。
しかし合気は常日頃から使っている技術。
だから、気を中心とした流派を開発した。
あくまで気の扱いの延長線のような流派なので、俺の合気と数多の剣術の複合というスタイルを阻害することはない。
この三ヶ月、頭で練って、身体を動かして、完成したのだ。
俺はまた成長した。
もうこれ以上成長しないと思っていたが。
ククク。
なぁアキよ。
次の勝負が楽しみだな。
お前はまた成長してくるんだろうが……
俺もまた、成長したぞ。