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大和さんの異世界漫遊譚【完結】  作者: 桒田レオ
《第八章・魔獣界編2》
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プロローグ

 大和様は布団の中で眠っておられる。

 妾はそれを見守っていた。


 先日行われた超越者同士の戦い。

 三千世界に甚大な被害を齎したそれは、魔獣界も無論注目しておった。


 皆、大和様の強さに惚れ惚れしておったよ。

 魔獣界で大和様の虜になった魔獣が増えてしまった。

 鬱陶しい反面、誇らしい。

 妾の愛する男が、こうも益荒男であるのだと。


 同時に思う。

 龍咲秋。

 あの小童、妾の愛しい君をここまで痛めつけおって。

 ああ殺してやりたい。

 しかし、大和様は楽しんでおられた。

 心の底から。

 戦いを楽しんでおった。

 大和様は、あんな表情を妾に見せぬ。

 ああ、憎らしや。

 あの喉元、噛み千切ってやりたいわ。


「はぁ……」


 大和様。

 妾はその髪を撫でる。

 子供のような寝顔を見ていると、胸が締まる。

 頬が熱くなる。


「……ゆっくりと休んでくだされ。ここはどんな場所より安全故」



 ◆◆



 数日後。

 大和様が目覚めた。


「……悪いな、万葉。いきなりだった」

「いいえ、問題ありませぬ。大和様が無事で、何より」


 妾は大和様に抱きつく。

 大和様は辺りをきょろきょろと見渡した。


「爪牙は?」

「爪牙?」

「俺の弟子だ」

「ああ、あの小娘か」

「……まさか、追い出したのか?」

「いいや、勝手に出て行った。修行してくるらしい」

「……そうか、ならいい」

「っ」


 妾は気に食わず、頬を膨らます。


「大和様、弟子をとるならしっかりと選んでほしい。何であんな小娘なんぞ」

「アイツはまだ原石だが、いずれ七色に輝く」

「本当か? 妾にはそう見えんかったが」

「信じろって、俺の目を」

「……まぁ、大和様がそう仰るのであれば」


 そもそも、弟子などどうでもいい。

 妾は大和様を愛することができれば、それでいいのじゃ。


「万葉。封印を全部解いた。また頼む」

「わかった。全部解いてしまったんじゃな」


 そうかそうか~。

 むふふー♪


「大和様、約束、覚えておるよな?」

「……」


 大和様はそっぽを向く。

 妾は顔を抑え、無理やりこちらに向かせた。


「魔獣界にはしばらく滞在してくだされ。たっぷりと愛してもらうぞ?」

「……はぁ」


 妾は大和様の胸板に頬ずりする。

 ふふふふ、龍咲よ、少しだけ感謝する。

 貴様のおかげで、大和様にいっぱい愛していただけるのだからな。

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