表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大和さんの異世界漫遊譚【完結】  作者: 桒田レオ
《第八章・超越者VS超越者》
35/48

第四証人「大和の弟子・爪牙」

 俺はただ唖然として、兄貴の戦いを見守っていた。

 兄貴は強い。

 それは知っていた。

 だが、ここまで強いなんて……



 次元が違う。



 見れたのは宇宙空間で戦っているところまで。

 その時でも、兄貴は封印を二つしか開放していなかった。

 兄貴は残り八つ、封印を残していた。


 今も兄貴は戦っている。

 衝撃が星を揺らしているんだ。


「……兄貴」


 俺は信じてるぜ。

 兄貴が勝つって。

 ……負けないでくれ。


「……!」


 人影が地面に映った。

 俺は顔を上げる。

 すると、そこには……


「あに……き?」


 兄貴は血まみれで、傷だらけだった。

 ここから見てもはっきりわかる。

 瀕死の重傷だ。

 幾ら兄貴でも、あんな傷負ってたら……ッ


 兄貴はゆっくりと降りてきた。

 地面に降りた時、俺はすぐに兄貴の元に駆け寄る。


「兄貴!?」


 兄貴はそのまま倒れた。

 俺はそれを抱き止め、寝かせてやる。


「心配かけたな。爪牙……」

「ううん、いいんだ。それよりも傷、早く手当てしねぇと……っ」


 俺は自分の衣服を引きちぎって血を止めようとする。

 しかし、血は一向に止まらない。

 何で……何でだよ!


「無理だ。アキのインフィニット・アストラルの破壊属性の傷だ。普通の手当てじゃ治らねぇ」

「な、なら、どうすりゃぁ」

「動けるうちに行くぞ」

「どこへ?」

「魔獣界だ。そこにいる万葉ってやつが、この傷を治せる」


 兄貴はふらふらと立ち上がり、魔導カスタムハーレーを呼び出す。


『マスター、自動運転に切り替えます』

「頼む。……爪牙、乗れ」

「お、おう!」


 俺は兄貴の後ろに乗る。

 兄貴の身体は、冷たかった。


「スカアハ、急いでくれ。かなりヤベェ」

『Yes』


 魔導カスタムハーレーはエンジンを吹かしながら爆走する。

 俺は、今にも倒れてしまいそうな兄貴の背中を支えていた。



 ◆◆



 魔獣界という世界に赴くと、すぐに道を開けられた。

 住民は皆、大和を心配そうに見つめている。

 街を通り過ぎて、大きな屋敷まで向かう。

 すると、門前に一際美しい女が立っていた。

 稲穂のような金髪と瞳、頭には同じ色の狐耳が。

 お尻には九本の尻尾が生えていた。


「大和様!」


 女は兄貴に近づく。

 兄貴は魔導カスタムハーレーから降りると同時に、女に寄りかかった。


「悪い、もう歩けねぇ」

「大丈夫じゃ、ここで治療する。絶対に死なせはせんぞ……!」


 女が治療に入った。

 俺は何もできずに、その光景を見つめていた。



 ◆◆



 数時間後。

 俺は屋敷で、先ほどの女と対峙していた。


「兄貴の容態は……」

「一命はとりとめた。しかし、数ヵ月は安静にしなければならぬ。何せ、ただでさえ瀕死だったのに、戦い続けたのじゃ。身体にガタが来ている。大和様でなければ、とっくに死んでおるわ」

「……」


 女は瞳を鋭く細めた。


「お主、大和様のなんじゃ?」

「……弟子だ」

「ハッ」


 女は鼻で笑う。


「弟子? 弟子じゃと? 貴様のような非力な娘が? 冗談もここまで来ると笑えんわ」

「……」


 俺が何も言い返さないと、女は首を傾げた。


「何じゃ、悔しくないのか? まさか、そのような気概さえ無くしてしまったのか?」

「……確かに、テメェの言う通りだ。俺は弱い。今のままじゃ、兄貴の足手まといだ」


 俺は立ち上がり、女に背を向ける。


「この世界で修行できる場所はあるか?」

「……勝手にせぃ。しかし、一つだけ忠告しておこう。ここ魔獣界は弱肉強食の世界。魔獣達は皆百戦錬磨じゃ。貴様ほど弱い魔獣は、この世界におらん」

「丁度いい、俺より強い魔獣と戦って、経験値を溜めて、強くなる。兄貴と旅を再開する前に」

「……勝手にしろ。妾は止めん。貴様が大和様の弟子であろうと、どうでもいい」

「ああ、勝手にするさ」


 俺は屋敷を出ていく。

 兄貴……待っていてくれ。

 俺、絶対強くなって戻ってくるから。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ