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大和さんの異世界漫遊譚【完結】  作者: 桒田レオ
《第八章・超越者VS超越者》
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第三証人「赤修羅・龍咲秋2」

 インフィニット・アストラルの真の能力。

 それは破壊と創造。

 万物を創り出し破壊することができる。

 総ての星の記憶、宇宙観コスモロジーを共有しているため、再現できない能力は無く、概念だろうが意志一つで破壊可能。

 起点アルファ終点オメガを矛盾なく体現している。


 この能力を使うと大抵の敵は瞬殺してしまうので使わないのだが……

 大和は違う。

 コイツは、超越者であり、俺の好敵手だ。


万物破壊オール・ディストラクション


 インフィニット・マテリアルに本来の力の一つ、破壊属性が加わる。

 この状態は維持しているだけで三千世界が滅びていく。

 あまり長時間使うと、三千世界が滅びるが……


 そんなことはどうでもいい。


 俺は今、この至福の刹那を味わえるなら、どんなものもいらない。

 三千世界なんぞ、知ったことか。


 破壊属性のインフィニット・マテリアルを大和に向かって放つ。

 大和はそれを苦渋の顔で受け止め、左右へ受け流した。


 ……成程、気を刀身に込めて、破壊属性を緩めた。

 刀身が破壊される前に、合気で左右に衝撃を流したというわけか。


 流石だな。

 しかし、そんなギリギリの回避を何時まで続けられるかな?

 俺はインフィニット・マテリアルを無数の球体に変化させ、放つ。

 追尾性能付きだ。


「チィ!」


 大和は逃げる。

 逃がさねぇよ。

 追尾させる。

 大和はさっきと同じように球体を逸らす。

 しかし、数個逸らしただけだ。

 球体は小さいが、一つ一つが大千世界を大量に破壊できる威力を内包している。

 気を武器に纏わなければ、今頃跡形もなく消滅している筈だ。


 いいや、本来、気を纏っていても無理やり消し飛ばせるはずなんだが。

 大和の気の錬度が高すぎるんだ。

 恐らく、三千世界で一番の気の使い手。

 全く、本当に最高だよ、テメェは。


 でもな? 逸らすだけでも大変だろう?

 ほら。

 大和は逸らしきれずにまた逃げ出す。

 しかし、大和のスピードより球体のほうが早い。

 緩急を用いたステップにも騙されずに、一直線に大和に向かっていく。


 よし、当たった。


 そう確信したと同時に、俺は自分の目を疑った。

 大和がこっちに向かってくるのだ。


 球体を足場にして。


 ……ッ、気を足に集中し、合気で力のベクトルを調整しつつ、足場にしてるのか。

 少しでもミスったら致命傷どこではないというのに。


 いや、今は考えている暇はない。

 俺は迫りくる大和の刃を受け止める。


「この出鱈目野郎が。普通球体を足場にするとか考えるかよ」

「ククク!」


 しかしだ。

 大和はバックステップを踏む。

 これ以上俺に近づいていたら、刀どころか身体も破壊されるからな。

 いい判断だ。


「……今のお前には、気と合気ではどうにもならねぇな」


 大和は瞳を細め、全身から力を抜く。

 そして一度深呼吸をした後、異変は起こった。


 大和の身に纏うオーラが変貌していく。

 気ではない。

 もっと純粋で、恐ろしいモノに変わっていく。

 あれは……


 そうか、大和。


 ようやくテメェも、全力全開で来るってわけか。


「必殺・色即是空」


 突如として大和の総身から溢れ出したオーラを、俺はインフィニット・マテリアルで防ぐ。

 オーラがぶつかり合い、刹那、三千世界に切創と破壊が刻まれた。


「アキ、ありがとう。お前という存在に心から感謝する。この状態で、よもや戦うことができるなんてな……」


 色即是空。

 大和が強敵を斬り続けた末に行きついた境地。

 森羅万象、三千世界あらゆるものを切断する、絶対法則。


「……やっとだ。やっとテメェにそれを出させることができた。前まではそれを出す前に終わっていたからな」

「お前がまだ未熟だったり、時には邪魔が入ったり、散々だったもんな」

「ああ。……やっとだ。やっと待ち焦がれたこの時がやってきた」


 俺と大和は互いに微笑み合う。



「「全力でお前を殺してやれる」」



 俺達は全力で踏み込み、対峙する。

 その衝撃で三千世界の滅びが加速する。


 視線、呼吸、殺気だけで、今の俺達は絶対破壊と絶対切断を発動できる。

 存在そのものが、破壊と切断という概念なのだ。



「「ハハハハハハハハ!!!!!」」



 全力で打ち合う。

 俺が大和の身体を破壊し、大和が俺の身体を切断する。

 互いに技術もへったくれもない。

 攻撃しか頭にない。

 全力で、相手を殺そうと魂を唸らせる。



「「ハーッハッハッハッハッハ!!!」」



 互いに血まみれになっても手を止めない。

 ああ、最高だ。

 最高の気分だぜ!! 大和ォォォォォォ!!!!


「アキィィィィィィィ!!!」

「大和ォォォォォォ!!!」


 俺達は全力の一撃を浴び合う。


「ガ、ハァ……ッ」

「グゥ、ア……ッ」


 俺も大和もフラフラだった。

 致命傷をとっくに通り過ぎている。

 何時死んでもおかしくない。

 それでも俺達は、精一杯の力を振り絞って、殺し合いを続ける。


 絶対、絶対に殺す。

 俺が勝つんだ。

 勝つんだ。

 勝つんだ。


「俺が勝つんだァァァァァァ!!!!!!!」

「楽しもうぜェ!! この刹那を!!!!」


 楽しいという気持ちは一緒だが、互いに戦う目的が違う。

 それを再認識したと同時に、最後の力を振り絞って、一撃を繰り出した。


「「死ねぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」」


 つき抜ける。

 今放てる、最強の一撃だった。


「ぅお……っ」


 大和が全身から血を噴き出す。

 そのままフラフラとよろけながら、倒れた。


 ふ、フフフ、ハハハハ!!!!


「ハーッハッハッハッハッハッハ!!!!! 俺の勝ちだァ!!!!」


 そう高笑いした瞬間。

 俺の胸に袈裟懸けと逆袈裟の傷が浮かび上がる。


 激しい音と共に舞う血飛沫。

 俺は何も言えず、倒れ伏した。


「が、ハァ……ッ!?」


 そんな、そんな馬鹿な……!!


「効いたぜぇ。でも、今回も、俺の勝ちだ」


 大和はよろよろと立ち上がる。


「最後の最後で技術の差が出たな」

「……クソッ」


 クソ、クソ……ッ。


「糞がァァァァァァァァ!!!!!!!」


 俺は三千世界を揺るがす怒号を放った。

 

「また俺が負けたのか!? またか!!? 何時になったらテメェに勝てる!!」

「さぁな、次は勝てるんじゃねぇの?」

「アアアアアアアアアア!!!!!! アアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!!!!!!」


 チクショウチクショウチクショウ!!

 あんなに修行したのに!! あんなに!!


「次に会う時が楽しみだ。じゃあな」

「……次こそは!! 絶対に俺が勝つ!! 絶対だッ!! テメェは俺が倒す!! 大和ォォォォォォ!!!!」


 俺は光の粒子となって消えていった。



◆◆



 アキのやつは強制的に冥界送りにされたか。

 まぁ、アイツのことだ。

 ほんの数日とせずに現実世界に戻って来る。

 

 そして、修行するのだろう。

 血反吐を撒き散らして。

 俺を、倒すために。


「ククククク」


 ハハハハ!!


「ハーッハッハッハッハッハ!!!! アーッハッハッハッハッハッハ!! 面白かったぜぇ!! 最高だった!! アキ、また何時か殺し合おう!! 絶対だ!! ハーッハッハッハッハ!!!」


歓喜に打ち震えるままに、俺は哄笑を上げた。






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