第二証人「赤修羅・龍咲秋」
俺はインフィニット・アストラルの力で斬られた腕をくっつける。
「まだだ!! もっとだ! もっと愉しもうぜぇ!! 殺し合いをよォ!!」
大和の目がギラギラと危険な輝きを灯す。
ここからだ。
大和が本当の意味で本気になる。
スイッチが入った。
大和は尖った性能を持つ俺と違って、近接戦闘全般に優れている。
特に剣技は超越者の中でも随一。
しかし、大和の恐ろしい点は他にある。
一つ。
邪神を封印し、今でも強者と殺し合いを続けている、その経験値。
百戦錬磨の手練、究極のベテラン。
故に基本的に隙はなく、不意打ちも効かない。
自分から隙を作り楽しむ場合があるが、二刀流になった時、それは完全に無くなる。
先ほどの攻撃も、自分の腕を犠牲にしてようやく当てられた。
それも一発のみ。
腕一本犠牲にしないと、二刀流になった大和に攻撃を当てるのは難しい。
だが、真に恐ろしい点は、別なのだ。
大和は強者との戦いを楽しみたいが故に、無意識に力をセーブしている。
今、そのリミッターが外れた。
大和は瀕死だが、そんなことは関係ない。
この男は立ち上がってくる。
「ハハ!!」
大和の気が爆発的に跳ね上がる。
血は止まり、骨や内臓が音を立てて修復していく。
「ハハハハ!!!」
大和が消える。
前方に現れたのでインフィニット・アストラルを放つが、避けられる。
そのまま右に回り込まれるが、追撃を放つ。
しかしそれも避けられる。
追いつけない。
大和の緩急の極まった特殊な歩法。
視覚情報だけでは対処しきれないのだ。
単純なスピードなら同格だ。
だが大和は、この歩法によって俺を混乱させている。
「!」
一瞬斬られると思ってガードするが、何もない。
見てみると、大和が遠くで笑っていた。
……殺気。
それも本当に攻撃されるという幻覚を見せるほどの。
戦闘中のフェイントに用いられる殺気運用術。
「ハハハハハハハハ!!!!」
滅多斬り。
四方八方から殺気を当てられ、緩急の入ったステップでヒット&ウェイ。
反撃しても、全て回避される。
今まで互角の戦いを演じていたのに、一気に形勢が傾いた。
そう、本来の意味で本気になった大和は、超越者でも手を付けられない。
究極の技術を持って、全てを殺し尽くしてしまう。
俺は全身からインフィニット・アストラルを最大出力で開放する。
大千世界が崩壊していくが、大和は……
「……!」
俺の喉元に、二刀がクロスしていた。
すぐにしゃがんで避けると、頭の上の空間が丸ごと切断される。
大和はそのまま、俺に蹴りを放つ。
ガードしたが、なんだ、この重さは。
腕が痺れる。
……俺も、もうそろそろ本気を出すか。
インフィニット・アストラルの本当の力を開放する。
本来、インフィニット・アストラルはただの「力」ではないのだ。
「く、ククク、ハハハハハ! 大和! テメェはやっぱり最高の好敵手だ! 俺が、全力で、本当の全力で戦わなければいけねぇんだからな!!」
俺は高笑いを上げながら、インフィニット・アストラルの真の力を開放した。
瞬間、大千世界が、いいや、三千世界が、崩壊を始めた。
過去未来現在に存在する全ての星々の力の結晶。
インフィニット・アストラルの真の力、使うにテメェほど相応しい存在はいない!