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大和さんの異世界漫遊譚【完結】  作者: 桒田レオ
《第八章・超越者VS超越者》
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第一証人「黒鬼・大和」

 この世界は4つの空間でできている。

『宇宙空間』『多次元宇宙空間』『外宇宙空間』、そして『三千世界』だ。


 星、銀河、銀河団、超銀河団からなる『宇宙空間』。

 多次元宇宙、超多次元宇宙からなる『多次元宇宙空間』。

 外宇宙、多次元外宇宙、超多次元外宇宙からなる『外宇宙空間』。

 そして、小千世界、中千世界、大千世界からなる『三千世界』。


 多次元宇宙以降は、下位の空間を無限数内包している。

 宇宙を無限数内包する多次元宇宙、多次元宇宙を無限に内包する超多次元宇宙、超多次元宇宙を無限に内包する外宇宙、といった具合にだ。


 そして、最後の大千世界を無限数内包した空間、三千世界は、全世界そのものだ。


 で、だ。

 力を殆どを封印している状態、つまり十の封印を施している状態の俺は、精々星や銀河に影響を及ぼせる程度だ。

 先ほど二つの封印を解いたことにより、宇宙空間に影響を及ぼせるまでになった。


 そして、全ての封印を解いた今。


 多次元宇宙空間、外宇宙空間をすっ飛ばして、三千世界に影響を及ぼすレベルに至っている。


 そこに存在しているだけで、滲み出る気だけで、小千世界が滅びていっている。

 広がっていく絶無の空間。

 先ほどアキが出したブラックホールも、封印を解除したと同時に消し飛んだ。


 今は地球に影響を及ばさないよう、三千世界に佇んでいる。


「……やっと全部の封印を解除しやがったか」


 アキは嬉しそうに笑う。

 そんな無邪気な笑顔すんじゃねぇよ。


「はぁ……お前とやると何時もペースを狂わされるんだよなぁ」

「最初に言っただろう? 本気でやれって」

「段階ってのがあってだな。料理でいうと、ほら……あー、もういいや。面倒くせぇ」


 俺は肩を竦め、アキを睨む。

 今の俺はそこにいるだけで小千世界を滅ぼしていっている。

 なら、殺気を出せばどうなるか?


 俺の背後に、黒い鬼が現れる。

 アキの背後に、赤い修羅が現れる。


 互いの闘気、殺気が具現化し、威嚇しあう。

 それだけで、中千世界が滅びていっていた。


「すげぇことになってるぜ。今頃、三千世界中が恐慌状態だ」

「俺達が戦うってなった時点で恐慌状態だっただろうよ。ま、んなことはどうでもいい。心底どうでもいい。テメェ以外のことなんて知るか。今俺は、テメェしか見えてねぇ」

「確かに、他のことなんでどうでもいい。強者との、お前との闘争を味わえるのなら、他のことなんぞ知ったことか」

「ハハ」

「ククク」



 互いに笑い合う。

 そして、消えた。


「オラァァァァァァァ!!!!」

「フン!!!!」


 剣と拳がぶつかり合う。

 渾身の力を込めて叩きつけ合った結果、衝撃波で中千世界どころか、大千世界にヒビが入る。


 一分の躊躇いもない。

 連撃に連撃が重なる。


 アキの暴力的なパンチの連打を、俺は全て合気で流す。

 基本的なことは先ほどと変わっていない。

 規模が違うだけだ。


 封印を解いたといっても、アキと俺の力関係が変わることはなかった。

 アキの力、インフィニット・アストラルは圧倒的「力」の塊だ。

 三千世界全ての星々の力の結晶であるこれを正面から突破することは、超越者であろうと不可能だ。

 純粋な力、この一点で言えば、アキは超越者最強だ。


 しかしだ。

 俺の土俵は力比べではない。

 合気と気を用いた技術特化。

 ようは「柔こそ至高」ってやつだ。


 対してアキは「剛こそ至高」を地で行っている。

 技術もへったくれもない。

 インフィニット・アストラルを纏って殴る蹴るだけ。

 

 それだけだが、馬鹿みたいに強いんだ。


 アキには武術の才能がない。

 魔術の才能も平均以下だと、本人が言っていた。

 アキはインフィニット・アストラルを持っている以外は、普通の青年と大して変わらないスペックだ。


 しかし、それだけだったら、俺もここまで苦戦はしない。

 纏っているだけであれば斬撃を一か所に万でも億でも重ねて破ればいいだけなのだが……


 アキは一つだけ、とんでもない才能を持っている。

 力の精密操作だ。

 アキはインフィニット・アストラルの扱いに関して、天賦の才を持っている。

 力の集約、分散、縮小、拡大。

 本来強大過ぎて扱いきれない筈のインフィニット・アストラルを100パーセント使いこなしている。

 これが極めて厄介なのだ。


 俺が斬撃を重ねると、その部位だけ装甲を厚くする。

 俺に攻撃する際、拳に一気に集約してくる。


 ただでさえ強力なインフィニット・アストラルを、こうも上手く扱われては、対処に困る。


 アキはインフィニット・アストラルの扱いを極めた結果、どんな相手とも戦える万能戦士となった。

 武術の才能がなくても、魔術の才能がなくても、尖った才能を極めたことによって万能になった。

 俺とは、ある意味で対照的な強さだ。


 だから俺達の戦いは異質だ。

 俺は先ほどから何百回、何千回とアキを殺している筈なのだ。

 アキの攻撃は実践慣れしているものの素人同然であり、隙が非常に大きい。

 しかし、インフィニット・アストラルの性能と精密操作のせいで、全て塞がれている。

 

 もう少し攻められたら戦況は変わってくるんだろうが、如何せん、アキがそれをさせない。

 とにかく攻めてくる。

 アキの攻撃は全てが一撃必殺。

 掠りでもしたら今の状態でも致命傷クラスだ。

 精神をすり減らしながら防御をしている。

 素人同然だからといって、油断は決してできない。


「オラァ!」


 無防備な蹴りを放ってきた。

 痺れを切らしたか? 

 いいや、違う、これは……

 刀で受け流した瞬間にわかるが、既に遅い。

 アキは足からインフィニット・アストラルを鎌状に変換させて、足を畳む。

 俺は瞬時にしゃがみ、スレスレで避ける。

 だが、一瞬隙を作ってしまった。


「食らえ」


 アキの手の平に途方もない質量のインフィニット・アストラルが集約されていた。

 ヤベェ。

 俺はアキの右腕を斬り裂き止めようとする。

 が、アキは左手で飛んだ右腕をキャッチし、そのまま叩きつけてきた。

 流石にそれは予想できなかった。

 俺は直撃を貰ってしまう。


 直後、大千世界が大量に消し飛んだ。

 俺は滅茶苦茶に吹き飛ばされる。

 そのまま、倒れた。


「あ~……やべぇ、全身の骨、内臓がイかれた。筋肉繊維もごっそり持ってかれたな。気での自然治癒じゃ間に合わねぇ」


 瀕死ってやつだ。

 しかし……


「ククク」


 笑みが漏れる。

 口の中は血で溢れかえっているのに、それでも笑わずにはいられなかった。


「クハハハハハ!! 楽しい! ああ楽しいなぁ! やっぱり本気で勝負したほうが気持ちいい! それでこんなに苦戦できるんだ! やっぱりお前は最高だよ! アキ!」


 俺は血反吐を撒き散らしながらも立ち上がる。


「まだだ!! もっとだ! もっと愉しもうぜぇ!! 殺し合いをよォ!!」


 俺は哄笑を上げ、好敵手へ突撃した。

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