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大和さんの異世界漫遊譚【完結】  作者: 桒田レオ
《第七章・超能力編2》
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第六証人「黒鬼、大和」

 俺達が行く頃には、既に街は崩壊していた。

 高層ビルは殆ど薙ぎ倒され、民家もほぼ倒壊。

 周囲の人間は殆ど重症で、うめき声が所々から聞こえてくる。

 子供の泣き声と血の臭い。

 ん~。


「嫌いじゃないな。この感じ」

「俺は大好きだぜ。最高じゃねぇか」


 爪牙はこの現世地獄の中を鼻歌交じりにスキップしている。

 ったく、コイツに普通の女の子の感性を求めるほうが間違っているか。


「あ、兄貴。あそこ、中央武力局があった場所に、誰かいるぜ?」

「んん」


 歩みを進めると、瓦礫の上に、確かにいた。

 近付いてみると、つい最近会った少女、ジーナだったか? がいた。

 ジーナは血まみれの青年を膝枕し、泣いていた。

 その青年は……


「ふむ」


 ついさっき俺達に交渉しに来た、赤髪の青年だった。

 既に息絶えている。

 ジーナは彼の頬を撫でながら、涙を流し続けていた。


「よぅ、お嬢ちゃん」

「アンタ、は……」

「運が悪かったな。アイツが、アキの奴が襲撃してきたんだろう?」

「……ッッ!!」


 ジーナは憤怒の形相で俺に喚き散らす。





「アンタのせいだッ!!!! アンタなんか!! アンタなんかが、この世界に来なければ!!!!」





「おいおい、とばっちりはやめてくれよ。この惨状を作ったのは俺じゃねぇだろう。それに、俺はそこの坊主と約束していた。ちゃんとしたステージで殺し合おうってな」

「龍咲秋って奴はアンタを殺しに来たんだろう!? 大体、アンタが七騎士のメンバーを殺さなかったら平和だったんだ!! あたしが革命を起こす前に蔵人が来てくれて、全て解決してたんだ!! 平和な世界が訪れるはずだったんだ!! なのに、なのにぃ……っ」

「……」


 俺はやれやれと頭をかく。


「そう言われてもねぇ。正直どうでもいいっていうか」

「!!?」

「俺は強者と戦えればそれでいい。お前らのことなんて知ったこっちゃねぇんだよ。お前らが悲しんでも、俺はなんとも思わねぇ」

「……アンタ、それでも人間なの!? この人でなし!! ロクデナシッ!!」

「クックック、言われ慣れてるさ」


 喉を鳴らしながら、お嬢ちゃんに近づく。


「ところでよ。アキの奴はどこだ? 見当たらないんだが」

「……」

「無視、か。いいさ、自分で探すから。爪牙、行こうぜ」


 さぁて、アキの奴は何処にいるのかねぇ。


「よぅ、大和」


 目の前の次元が裂ける。

 そして、青年が出てきた。


「久々だな、アキ」

「ようやく自分の力量に満足が行ったから、会いに来たぜ」


 青年、アキは抱えていたものを投げ飛ばす。

 それは、金髪の男だった。

 見知らぬ顔だな。

 既に死んでいる。


「クリス……っ」


 後ろのお嬢ちゃんの声が掠れる。

 なんだ、知り合いか。


「序列二位、次元操作の能力を持ってるってんで期待したんだが、正直クソつまんかなったぜ。五分も遊べねぇの」

「クックック、一位はどうだった?」

「八分くらいか? 大してかわんねぇよ」

「そうか……」


 あーあ。


「アキ、おめぇ、そいつらとは俺が楽しむ予定だったのに、横取りしやがって」

「うっせ、こんな雑魚共と遊ぶくらい、テメェは暇を持て余してんのかよ」

「雑魚って言ってやんなよ。一応この世界じゃ最強なんだから。手加減した状態ならいい勝負ができたかもしれねぇだろ?」


 アキは鼻で笑う。


「相変わらずだな。勝つことよりも楽しむことが優先か」

「勿論。戦いは楽しんでこそなんぼだ。強者と互いの血肉を削り合う。たまらねぇじゃねぇか」

「俺にはわからねぇ、戦いは勝ってなんぼだろう。勝たなきゃ意味がねぇ。それが戦いってもんだ」

「そんな考えだと中々楽しめねぇだろ、戦いを」

「それでいい。負けるより数百倍マシだ。俺は、負けてもヘラヘラしているクソ野郎とは違う」

「それぁ、俺のことかい?」

「ああ」

「……」

「……」


 俺は片目を閉じる。


「お前も相変わらずで安心したぜ」

「でよぉ、大和。お前、連れが一人増えてるじゃねぇか」

「ああ、コイツは俺の弟子でよ。爪牙ってんだ」

「ふぅん……」


 アキは瞳を細めて、肩を竦める。


「興味ねぇ。雑魚じゃねぇか」

「ああ? なんだテメェ、やるか?」

「やめろ爪牙」


 俺は爪牙の頭に手を置く。

 アキは獰猛に笑った。


「なんだ、やんのかテメェ。いいぜ、殺してやるよ」

「ああ?」

「はぁ?」

「やめろテメェ等」

「おい大和……俺に指図すんじゃねぇよ」

「ピリピリすんじゃねぇよ。今から相手してやっから」

「……おい、そこの犬っころ。大和に感謝するんだな」

「こんのクソ……ッッ、ぜってぇ殺してやるッ!!」

「やめろってんだ馬鹿。死ぬのはテメェだぞ」

「あぅ!」


 頭にチョップして無理やり止める。


「だって、兄貴ぃ、あいつがぁ……」

「あいつは昔からああいう奴なんだよ」


 爪牙の頭を撫でてやって、俺は前に出る。


「よく見ておけ、爪牙。今から始まる超越者同士の戦いってのを」

「っ……」


 俺は二刀を抜く。

 アキはここに来て、初めて嬉しそうに笑った。


「待ってた。ずっと待ってた。この時を……今日こそテメェに勝つ。テメェに勝って、俺が最強になるんだ」

「最強の称号には興味ねぇが、テメェは手加減すると怒るだろう?」

「当たり前だ。少しでも手加減してみろ。マジで殺す」

「ハハ、いいぜぇ。こっちは何時でもオーケーだ♪」


 俺は嗤う。

 さぁ、楽しい楽しい殺し合いのはじまりだ。



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