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大和さんの異世界漫遊譚【完結】  作者: 桒田レオ
《第七章・超能力編2》
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第一証人「七騎士序列五位、ジーナ」

 あたしはスマホである組織とメールのやり取りをしていた。



ジーナ  どう? いけそう?


組織の重鎮  いや、まだ危険だ。序列二位が残っている。


ジーナ  その序列二位が序列一位、アイツを呼び戻しに異世界へ渡っている。今がチャンスでしょ?


組織の重鎮  ううむ。


ジーナ  恐らく一ヶ月近くはかかるって言ってた。だからさっさと準備して、本部襲撃しちゃいなさい。こっちはもう準備整ってるんだから。


組織の重鎮  序列四位。いいや、今は三位だったか。奴はどうするつもりだ?


ジーナ  ああ、ミスターさん? 彼ならもう催眠にかけてるわよ。


組織の重鎮  本当か!?


ジーナ  彼、物理特化なだけで、催眠耐性がないから。でも序列二位と一位は無理。二位はやろうと思えばいけなくはないけど、五分五分。アイツ時間を止められるから。それに、信用されてないみたいだし。あたし、危険な橋は渡りたくないんだよね~。一位は論外。あのバケモノ、あたしの催眠弾き返すんだもん。


組織の重鎮  ……。


ジーナ  ともかく、幻術が効かなくて厄介だった元序列三位、はじめっちがいなくなったから、格段にやりやすくなった。他の七騎士、序列四位のカルロスちゃんもあたしで抑えてるから、さっさと武装集団整えちゃってよ。


組織の重鎮  本当に信用していいんだな?


ジーナ  ここまでさせておいてまだ信用されてないとか、心外なんですけどー。アンタ等には孤児院の子供たちが世話になってる。それに、願う夢も一緒。ジーニアスの支配する世界じゃない。全ての人間が平等な世界を作る。あたしはその夢にかけてるんだ。だから、あんた逹ももうちょっと本気になってよ。


組織の重鎮  わかった。二日以内に部隊を整える。頼んだぞ。


ジーナ  了解りょーかーい♪


 メールが終る。

 はぁ、全く、頭が固いお役人様方を説得するには骨が折れるにゃー。


 あたしは、今の世界が憎い。

 ジーニアスじゃないってだけで差別されて、蔑まれるなんて、そんなの間違ってる。

 だから、変えてやるんだ。

 革命を起こしてやるんだ。


 これは復讐でもある。

 強力な異能を持って生まれたことにより、幼少の頃から両親と引き離され、洗脳に近い教育を受けさせた、中央武力局への。


 そう、これは他のジーニアスのためでもあるのだ。

 全ての人間が平等になれば、異能とか関係なしに、対等な関係で手を取り合うことができれば。

 世界はもっと平和になるはずだ。

 異能犯罪も減少するはずだ。

 そう信じて、あたしは今、革命の最先端に立っている。


 今が絶好の好機なのだ。

 最も危険な序列二位と一位が外出している。

 厄介だった序列三位はこの前のサムライに殺された。

 あとはあたしの幻術でちょちょいのちょい。

 楽勝にゃー。

 でも、あたし自身に戦う力はないから、革命軍に任せるしかないんだよねー。

 ミスターさんとカルロスさん暴れさせればそれでしまいなんだけど、革命は革命軍がやってこそ意味があるから。

 あたしは影。

 いてはいけない存在。

 英雄譚に記されてはいけない存在。

 だから、表立って活躍できないんだねぇ。


 めんどっちーけど、世界が平和になると思えば、なんのなんの。

 頑張っちゃうにゃー。


「ふぅん」


 さてさて、パソコンを閉じて、甘いものでも摂取するかねー。

 甘いもの甘いもの~。

 ……って。


「のわぁ!!?」


 隣に誰かいた。

 あたしは急いで飛び退く。

 その誰かは、信じられない奴だった。


「よぉ、久々だな。お嬢ちゃん」

「アンタ……この前のサムライっ。どうして!? 死んだ筈じゃあ!」

「冥界から戻ってきたぜ。テメェ等に復讐するためにな」

「ッ」


 そんな、ありえない。

 死者が蘇るなんて、そんなこと。

 ……!? まさかミスターさんが殺したとみせかけて、わざと逃がしていた?

 いいや、あの人の脳内は隅々まで調べた。

 そんな形跡は一切無かった。

 だとしたら。

 本当に……


「さっきからずっと隣にいるのに、お嬢ちゃん気付かずにずっとメールしてんだもんよぉ。おもわず欠伸が出ちまったぜ」


 欠伸をする素振りを見せながら口角を吊り上げるサムライ。

 し、しかたない。

 催眠をかけて……


「下手な真似したら殺す」


 背後から冷たいものを首筋に当てられた。

 見ると、鋼の爪だった。


「動いても殺す。ただ喋れ。喋る以外のことをしたら首元かっさばく。わかったら返事しろ」

「……わ、わかったわ」


 女の子の声だった。

 しかし振り返れない。

 あたしは冷や汗を身体中にかきながら、返事をする。

 サムライは適当な椅子に腰掛けて、あたしに問うてきた。


「メール、見てたぜ。どうやらお嬢ちゃんは、中央武力局に所属しているようで、別の目的があるらしい」

「……」

「本当はお嬢ちゃんを殺そうと思ったんだが、なんだ、メールに能力の詳細まで書いていたからな。催眠とは中々えげつねぇが、しらけちまった。催眠さえ攻略しちまえばただの女の子。それじゃ話にならねぇ。クソつまらねぇ」

「……何が目的?」

「余計なこと喋るんじゃねぇ」

「ッ」


 首筋に鋼爪を突き付けられる。

 血が滲んできた。

 不味い、後ろの女の子? あたしが下手な真似すれば本気で殺すつもりだわ。

 ここは、大人しくしておこう。


「そうかぁ。俺、催眠にかけられてから殺されたのか。成程ねぇ。ふぅん」


 サムライは一人頷いた後、あたしの瞳を覗く。


「見逃してやるよ。お嬢ちゃん」

「……?」

「テメェには興味がねぇ。復讐しようかと思ったが、ヤル気なくなったわ」


 サムライは立ち上がり、あたしの顎を指先でつまむ。


「そのかわり、俺達の邪魔はするな。黙って見てろ。それと、他の七騎士に催眠をかけてるなら解け」

「……」

「俺達は七騎士と、それに近い強者を全員殺す。目的はそれだけだ。お嬢ちゃんは黙ってこの部屋で待っておけばいい。二日もすりゃあ中央武力局の戦力激減。革命がしやすくなる。最高だろう?」

「……ッ」

「残念ながら、お嬢ちゃんに拒否権はねぇ。拒否したら、しゃあねぇわな。殺して他の七騎士にかけられてる催眠を解くしかない。なぁどうする? はいかいいえで答えな」


 三白眼を細めるサムライ。

 あたしは……まよわず「はい」と答えた。

 サムライを信用したわけではない。

 期待もしていない。

 しかし、はいと答えなければ、あたしは死ぬ。

 それだけで、はいと答えるには十分すぎる理由となった。


「よし、爪牙。解いてやれ」

「おう」


 拘束が解かれる。

 振り返ると、あたしと同じくらいの少女がいた。

 忍装束?に身を包んでいる、くすんだ灰色の髪をポニーテイルにした美少女。


「あ? なんだよ?」

「な、なんでもないわ」


 背筋に寒気が走った。

 一瞬漏れた殺気もそうだが、何よりも、目が怖ろしかった。

 一体何人殺せばこんな目ができるんだろう。

 濁っていて、生気を感じさせない。

 死者のような瞳。

 サムライも同じような瞳をしているが、女の子でこんな瞳をしているということが、あたしにとっては衝撃的だった。


「行こうぜ」

「おう」


 二人は部屋を出て行く。

 出て行ったのを確認できたあと、あたしは膝から崩れ落ちた。

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