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大和さんの異世界漫遊譚【完結】  作者: 桒田レオ
《第七章・超能力編2》
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プロローグ

 さぁて、例の世界へ到着した。

 さんさんと降り注ぐ陽光、目の前に聳える高層ビル群。

 ん~。


「やっぱ地上の空気はうめぇな」


 深呼吸する。

 冥界はジメジメしてたからなぁ。


「な、なぁ、兄貴……」

「ん?」


 横を見ると、爪牙が頬を赤らめて、袖を引っ張っていた。


「あのさ、俺、地上って久々だからさ。……ちょっと遊びたいっていうか」

「……フフ、そうか」


 俺は爪牙の頭にポンと手を置く。


「お前は俺と違って、冥界暮らしに慣れてなかったもんな。冥界にゃ娯楽もなかったし。つらかっただろ。……いいぜ。三日くらい遊ぼう」

「!!」


 爪牙は俺に抱きつく。


「さっすが兄貴!! 話がわかる~!! 大好きだぜ!!」

「ハハハ」


 さぁて、そうとなりゃ、


「何がしたい。お前にあわせよう」

「ビール! 煙草! ピザ! セックス!!」

「ククク」

「まずはコンビニ行こう! コンビニ!」

「はいはい」


 爪牙に引っ張られながらコンビニを目指す。

 コンビニの前で。

 煙管を吹かしながら待っていると、自動ドアを開いて爪牙が出てきた。


「たーばこ♪ たーばこ♪ たっぷり、たーばこ♪」


 両手に溢れんばかりの煙草を抱えている。

 顔には満面の笑みが咲いていた。


「ビールも沢山買ったぜ! あとつまみも!!」

「もう買うもんはないか?」

「おう!」

「ならラブホ行くぞ。ピザは出前で頼めばいい」

「にひひ~♪」


 爪牙は嬉しそうに笑いながら付いてくる。

 俺達はラブホに入った。


 それからというもの、だらけにだらけまくった。

 酒を飲んで、出前で頼んだピザや寿司、焼き鳥を頬ばって。

 腹一杯になれば二人でくたびれるまでセックスして、寝る。

 その繰り返しだ。

 最初は三日と言っていたんだが、気付いたら一週間くらいこの生活を続けていた。

 どうやら俺も、色々溜まっていたらしい。


「部屋、酷いことになってんな」

「いいさ。どーせ俺達の部屋じゃねぇんだしよ」

「そうだな」


 俺達は裸でベッドの上に寝転がっていた。

 隣には吸殻の山。

 ビールの空き缶、酒の瓶。

 ピザや寿司の入っていた容器。

 あと数日置いていたら、蠅でも沸いてきそうだ。


「最初は三日って言ってたのに、一週間くらい経っちまったな」

「しゃあねぇ。俺も色々溜まってた」

「へへへ♪」


 爪牙は俺の胸に頬ずりする。

 俺はその頭をくしゃくしゃと撫でてやった。


「なぁ、兄貴」

「ん?」

「……冥界にいた時は言えなかったんだけど、俺さ……」


 爪牙は瞳を潤ませながら言う。


「はじめてなんだ。他人とこんなに親しくなったの」

「そうか」

「俺、生まれた時から殺し合いが大好きだから、狂犬なんて呼ばれて。敵からも味方からも恐れられてた」

「ふぅん」

「でも、兄貴は違う。兄貴はこんな俺を可愛がってくれる。……こんな温かい感情、はじめてなんだ。心がぽわぽわして、凄く、気持ちいい」


「……俺も、お前と一緒にいると楽しいぜ」

「本当か!?」

「本当だとも」

「……あにきぃ」


 ポロポロと涙を流す爪牙。


「泣くな」

「だってぇ……」

「ったく」


 俺は抱き寄せて、その背中をさすってやった。



 ◆◆



「さぁて」


 翌日。

 俺達はゴミ部屋となった部屋で、準備を整えていた。

 服を着替え、刀を帯びる。

 爪牙も武装の点検をしていた。


「よし、準備万端! いつでもいけるぜ! 兄貴!」

「なら、そうさな。敵の本拠地を襲撃するのが一番手っ取り早いんだが、それじゃつまらねぇ。二人で潜入するぞ。強いのだけを仕留めに行く」

「了解。潜入は得意だぜ♪」

「じゃ、行くか」


 俺達は拳を交わした後、部屋から出た。

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